12月1日(日)
ヘンデル/歌劇「リナルド」
~北とぴあ国際音楽祭2019~
北とぴあ・さくらホール
【配役】
リナルド:クリント・ファン・デア・リンデ/アルミレーナ:フランチェスカ・ロンバルディ・マッズーリ/アルミーダ:湯川亜也子/ゴッフレード:布施奈緒子/エウスターツィオ:中嶋俊晴/アルガンテ:フルヴィオ・ベッティーニ/魔法使い:ヨナタン・ド・クースター/シレーネ1:澤江衣里/シレーネ2:望月万里亜
【ダンス】打越麗子、加藤典子、敷地理
【管弦楽】
寺神戸 亮 指揮レ・ボレアード
【照明】岩村原太【衣装】臼井梨恵【演出】佐藤美晴
北とぴあ国際音楽祭恒例のレ・ボレアードによるオペラ公演、今年はヘンデルの「リナルド」。ヘンデル26歳のときのロンドンデビュー作で、作曲者の生前に最も多く上演された作品(55回)だそうだ。その後は忘れ去られたが、近年の古楽ブームに乗ってヘンデルのオペラの代表作の一つに数えられているというが、日本での上演は滅多にない。僕にとっては初めて接するヘンデルのオペラだ。
今回も、オーケストラの素晴らしさはもちろん、歌手陣、演出など総じて優れ、充実した上演だった。十字軍にまつわる歴史もののストーリーで、所謂お堅い内容のオペラ・セリア。けれど中身は笑いあり、ハプニングありのオペラ・ブッファ的なドタバタ場面も散りばめられ、休憩を挟んで3時間半に及ぶ長丁場でオケツは痛くなったが、退屈することなく楽しむことができた。それはヘンデルの音楽の魅力と、オーケストラと歌手陣の素晴らしさ、セミステージながら動きが多く、要所ではダンサーも加わった巧みな演出のおかげだろう。
寺神戸はヴァイオリンソロを聴かせるとき以外はコンマス席に座ってのフィーチャー。冒頭の序曲の優美で生き生きした表情付けから聴き手を魅了。安定感があり、柔軟な語りかけは常に耳を引いた。多彩な楽器編成の楽曲が散りばめられ、音楽的なバラエティーの豊富さと多種多様な響きも楽しかった。難しいバロックトランペットも難なくこなし、艶やかな響きで場を盛り上げた。
この時代のオペラ・セリアの慣習で、男役の殆どが女声の声域で歌われるのはやっぱり慣れないが、歌手陣は皆優れた歌を披露した。なかでも注目度抜群だったのはアルミーダを歌い演じたメゾの湯川亜也子。艶のあるしなやかな美声で喜怒哀楽をくっきりと表現し、オケのプレイヤーにまでにじり寄ってお色気をアピールする演技も堂に入り、鮮烈なインパクトを与えた。頼りなさそうな敵将がこの誘惑に落ちなかったのが不思議なくらい。
湯川と並んで魅了したのは、唯一の男声域をカバーしたアルガンテ役、バリトンのベッティーニ。湯川のアルミーダと対をなすようにキリッと明瞭な歌唱が対象をしっかり捉え、強い存在感を示した。品と力強さの具わった美声にもシビれた。もう一人印象に残ったのはエウスタツィオ役のカウンターテナー、中嶋俊晴。主役リナルド役のファン・デア・リンデにひけを取らない声と表現力を聴かせた。
登場人物は正義の十字軍と、悪役のサラセンに分かれるが、最もインパクトのあった歌手2人はどちらも悪役。モーツァルトもそうだが、作曲家はまっとうなキャラクターよりも一癖あるキャラクターにより魅力を感じ、いい音楽を書くのかも知れない。いい歌をもらえた方が演奏でも人をより引きつける。正義側のアルミレーナには名アリア「泣かせてください」があるが、これは既存の曲からの転用なのでカウントには入らないだろう。リナルドが第1幕で歌う「愛しい妻よ」なんか、寄り添う優美な弦の調べと共に聴き惚れたし、正義側にも名曲はあるが。
その正義と悪を、衣装の白と黒ではっきり色分けしたり、様々な場面で額縁が「捉われ」の象徴として使われたり、佐藤美晴の演出は状況を無理なく分かりやすく示し、コミカルな動きも面白かった。舞台装置としてずっと据えられていた巨大な額縁は、結局正義も悪も根は同じみたいな意味づけがあったのだろうか。限られたスペースながら、3人のダンサーによるパフォーマンスも登場人物の状況や感情をうまく伝え、上演をアーティスティックに彩った。
ヘンデルのこのオペラが魅力的な音楽に溢れた楽しい作品だということを、レ・ボレアードは強く印象付けた。このオペラのタイトルになっているリナルドは、ストーリーのなかであまりパッとしない。いっそのことタイトルを「アルミーダの誘惑」とかにした方がしっくりきそうだ。
モンテヴェルディ「ウリッセの帰還」~北とぴあ国際音楽祭2018より~(2018.11.23 北とぴあ・さくらホール)
♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「積もった雪」
MS:小泉詠子/Pf:田中梢
金子みすゞ作詞「私と小鳥と鈴と」
S:薗田真木子/Pf:梅田朋子
「子守歌」~チェロとピアノのための~
Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
合唱曲「野ばら」
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」
金子みすゞ作詞「鯨法会」
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
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ヘンデル/歌劇「リナルド」
~北とぴあ国際音楽祭2019~
北とぴあ・さくらホール
【配役】
リナルド:クリント・ファン・デア・リンデ/アルミレーナ:フランチェスカ・ロンバルディ・マッズーリ/アルミーダ:湯川亜也子/ゴッフレード:布施奈緒子/エウスターツィオ:中嶋俊晴/アルガンテ:フルヴィオ・ベッティーニ/魔法使い:ヨナタン・ド・クースター/シレーネ1:澤江衣里/シレーネ2:望月万里亜
【ダンス】打越麗子、加藤典子、敷地理
【管弦楽】
寺神戸 亮 指揮レ・ボレアード
【照明】岩村原太【衣装】臼井梨恵【演出】佐藤美晴
北とぴあ国際音楽祭恒例のレ・ボレアードによるオペラ公演、今年はヘンデルの「リナルド」。ヘンデル26歳のときのロンドンデビュー作で、作曲者の生前に最も多く上演された作品(55回)だそうだ。その後は忘れ去られたが、近年の古楽ブームに乗ってヘンデルのオペラの代表作の一つに数えられているというが、日本での上演は滅多にない。僕にとっては初めて接するヘンデルのオペラだ。
今回も、オーケストラの素晴らしさはもちろん、歌手陣、演出など総じて優れ、充実した上演だった。十字軍にまつわる歴史もののストーリーで、所謂お堅い内容のオペラ・セリア。けれど中身は笑いあり、ハプニングありのオペラ・ブッファ的なドタバタ場面も散りばめられ、休憩を挟んで3時間半に及ぶ長丁場でオケツは痛くなったが、退屈することなく楽しむことができた。それはヘンデルの音楽の魅力と、オーケストラと歌手陣の素晴らしさ、セミステージながら動きが多く、要所ではダンサーも加わった巧みな演出のおかげだろう。
寺神戸はヴァイオリンソロを聴かせるとき以外はコンマス席に座ってのフィーチャー。冒頭の序曲の優美で生き生きした表情付けから聴き手を魅了。安定感があり、柔軟な語りかけは常に耳を引いた。多彩な楽器編成の楽曲が散りばめられ、音楽的なバラエティーの豊富さと多種多様な響きも楽しかった。難しいバロックトランペットも難なくこなし、艶やかな響きで場を盛り上げた。
この時代のオペラ・セリアの慣習で、男役の殆どが女声の声域で歌われるのはやっぱり慣れないが、歌手陣は皆優れた歌を披露した。なかでも注目度抜群だったのはアルミーダを歌い演じたメゾの湯川亜也子。艶のあるしなやかな美声で喜怒哀楽をくっきりと表現し、オケのプレイヤーにまでにじり寄ってお色気をアピールする演技も堂に入り、鮮烈なインパクトを与えた。頼りなさそうな敵将がこの誘惑に落ちなかったのが不思議なくらい。
湯川と並んで魅了したのは、唯一の男声域をカバーしたアルガンテ役、バリトンのベッティーニ。湯川のアルミーダと対をなすようにキリッと明瞭な歌唱が対象をしっかり捉え、強い存在感を示した。品と力強さの具わった美声にもシビれた。もう一人印象に残ったのはエウスタツィオ役のカウンターテナー、中嶋俊晴。主役リナルド役のファン・デア・リンデにひけを取らない声と表現力を聴かせた。
登場人物は正義の十字軍と、悪役のサラセンに分かれるが、最もインパクトのあった歌手2人はどちらも悪役。モーツァルトもそうだが、作曲家はまっとうなキャラクターよりも一癖あるキャラクターにより魅力を感じ、いい音楽を書くのかも知れない。いい歌をもらえた方が演奏でも人をより引きつける。正義側のアルミレーナには名アリア「泣かせてください」があるが、これは既存の曲からの転用なのでカウントには入らないだろう。リナルドが第1幕で歌う「愛しい妻よ」なんか、寄り添う優美な弦の調べと共に聴き惚れたし、正義側にも名曲はあるが。
その正義と悪を、衣装の白と黒ではっきり色分けしたり、様々な場面で額縁が「捉われ」の象徴として使われたり、佐藤美晴の演出は状況を無理なく分かりやすく示し、コミカルな動きも面白かった。舞台装置としてずっと据えられていた巨大な額縁は、結局正義も悪も根は同じみたいな意味づけがあったのだろうか。限られたスペースながら、3人のダンサーによるパフォーマンスも登場人物の状況や感情をうまく伝え、上演をアーティスティックに彩った。
ヘンデルのこのオペラが魅力的な音楽に溢れた楽しい作品だということを、レ・ボレアードは強く印象付けた。このオペラのタイトルになっているリナルドは、ストーリーのなかであまりパッとしない。いっそのことタイトルを「アルミーダの誘惑」とかにした方がしっくりきそうだ。
モンテヴェルディ「ウリッセの帰還」~北とぴあ国際音楽祭2018より~(2018.11.23 北とぴあ・さくらホール)
♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「積もった雪」
MS:小泉詠子/Pf:田中梢
金子みすゞ作詞「私と小鳥と鈴と」
S:薗田真木子/Pf:梅田朋子
「子守歌」~チェロとピアノのための~
Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
合唱曲「野ばら」
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」
金子みすゞ作詞「鯨法会」
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
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