facciamo la musica! & Studium in Deutschland

足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

霊峰白山から花の中宮道を歩く

2018年09月16日 | 山&ハイキング
 2015年8月1日(土)~8月5日(水)

八ヶ岳や北アルプスの山に登り、晴天の中でもとりわけの好天に恵まれると、北西方面の遥か彼方に白っぽく、左右に大きく広がるなだらかな山が見える。頂上に居合わせた人から、その山は白山だと教えてもらってから、僕のなかで気になる山となり、いつか登りたいと思っていた。白山は、普段よく登る山から見えることは見えるのだが、石川県や福井県にもまたがっている山で、東京からはとても遠いので、なかなか足が向かなかったが、ようやく長年の思いを実現させるべく白山登山を決行した。

登りルートは、白山登山の最も一般的な別当出合から観光新道を辿り、下りルートは、逆に白山登山ルートのなかでも長くて登山者が少ないという中宮道を歩くことにした。登山口の別当出合へは、渋谷から夜行バスを使って金沢駅まで行き、そこから「白山登山バス」で更に2時間10分という遠さ。
渋谷から乗った金沢行きの北陸鉄道夜行バスは、横に座席が3席しかなく、席はリクライニングで平らになるうえにカーテンで四方を囲めて個室状態で快適だった。

8月2日(日)


別当出合~白山室堂
登山口の別当出合から、観光新道は急坂が続くが、展望の良さに励まされながら登る。




途中の昼食休憩等を含めて、登り始めてから約3時間半、殿ヶ池避難小屋に到着。池の周りは花がキレイ。






殿ヶ池から先は、登山道沿いに花、花、花… さすが「花の山」白山だー!




池から約1時間、展望の良い黒ボコ岩を過ぎ、1分も進むと、目の前に雄大な景色が広がり、思わず歓声!弥陀ヶ原だ。


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大草原の奥に聳える大きな山は、白山の主峰である御前峰。


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弥陀ヶ原の標高は2337m。遮るものがなにもない大草原には、ハクサンフウロ、シナノキンバイ、コバイケイソウ、イブキトラノオなど、色とりどりの花々が咲き乱れる。


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こんな別天地のビュースポットでは長く過ごしたい。今日の目的地、白山室堂はもうすぐ先なので、ここでスケッチなどをして1時間半以上楽しんだ。


白山室堂の小屋には、そこから約20分で到着した。室堂に建つ白山室堂山荘は、ロッジのような立派な建物が並び、周囲はたくさんの人達で賑わっていた。


夕食の前後、室堂一帯を散策した。白山室堂には、この山域で初めて知られたことでその名が冠されたというハクサンコザクラが、あちこちに群生を成していた。ピンクの小さな花びらは、赤ちゃんが手指を広げたようでカワイイ!


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白山室堂は大きな雪渓が沢山残っている。雪が消えたところからハクサンコザクラが開花するようだ。


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雪渓とハクサンコザクラ、白山山頂を眺めながらコーヒーを沸かしてくつろいでいたら、間もなく虫の集団の攻撃に遭って早々に退散した。。


夕日が雲を染め、花々に当たっていた陽光も弱まってきた。




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日が暮れてからも、グループの登山者たちの楽しそうな笑い声があちこちから聞こえる。暗くなってから、遠くで不気味な稲光が夜空に度々浮かび上がった。明日の天気がちょっと心配。

8月3日(月)キリ→

白山の峰々に遊ぶ
4時前に起きて白山の最高峰、御前峰を目差す。一応晴れていたが、頂上に着いて太陽が昇って来たと思ったらガスがかかってきた。その後、辺りはすっかりガスに覆われてしまった。こういうパターンは珍しくない。残念。。


ガスで視界は良くないが、取りあえず山頂周辺の池を巡る「お池めぐり」をすることにした。ガイドさんと歩いているグループに何となく付いて、ガイドさんの説明を聞いていたら、遠くから「ピーピーピー」とヒナの鳴き声がした。「イワヒバリのヒナですねー」とガイドさん。

登山道のすぐ脇の岩陰に巣があって、エサを運んでくれる親鳥を待つヒナが、そこで赤いくちばしをしきりに広げてピーピーと鳴いていた。カワイイ。だけど、この後とても心配になる光景を見ることになる。


ガスっていて遠望は効かなくても、花は目を楽しませてくれる。


チングルマ

千蛇ヶ池は、池の半分が雪渓に覆われている。「悪さをする大蛇たちが雪で閉じ込られている」という伝説があるらしい。




お池めぐりコースをひととおり歩き終わる頃から、ガスが晴れて来た。これは頂上からの展望が望めるかも知れない、と再び御前峰に上がったら、ちょうど大汝峰と剣ヶ峰の頂が霧の中から現れた。




ガスはみるみる晴れて、大汝峰と剣ヶ峰もすっかり全容を現した。


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こうじゃなくちゃね!ガスの中、山頂に立ったときは撮らなかった登頂記念写真を撮ってもらった。


こうなるとスケッチもしたくなり、白山の雄大な双峰をモデルに絵筆を走らせた。


それから向かったのは、白山の峰々のうち最高峰の大汝峰(2884m)。御前峰から見えた雰囲気のままのなだらかで広い山頂には、沢山の種類の花が咲き乱れていた。


イワギキョウ


シナノオトギリ

ミヤマダイモンジソウ


コバイケイソウ(バックは七倉山)


コイワカガミ


高山植物の女王と呼ばれるコマクサも

大汝峰の山頂に、地図にもガイドにも出ていない小屋があった。人はいないし、扉は外れ、かなり荒れた感じだけれど、雨風は凌げそう。小屋の中に、ここは「緊急避難時用」との説明書きがあった。

今日は、ここからコースタイムでまだ4時間20分もあるゴマ平避難小屋まで行く予定だったのだが、このまま樹林帯の中の避難小屋に行くのはもったいない!天気は最高だし、もっと展望も楽しみたいし、朝方はガスの中で巡ったお池めぐりもやり直したい!しかも、もうお昼過ぎになってしまっていたので時間的にも不安だし、安全も期して(こじつけ?)、緊急ではないが今日はここに泊まって、スケッチをしたり、もう一度お池めぐりをしたりしながら、白山を満喫しよう!と決めた。

大汝峰からの展望はもちろん最高だ。さっきいた御前峰と、そこから目の前に見えた剣ヶ峰が、翠ヶ池などの池を抱え込むように並んでいる。これをスケッチ。


好天の下でのお池めぐりは、早朝のガスのなかで見たのとは全然違う表情を見せてくれた。空や山が水面に映り、池の周りに咲く花も元気に見える。霧にも趣きがあるなんて言ったところで所詮負け惜しみ、やっぱり天気は良いほうがいいに決まっている。


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五色池の斜面にはチングルマの群落。


近くにはハクサンコザクラも咲き誇る。

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コースで最も大きな翠ヶ池は、名前のとおり深いエメラルド色をしている。

千蛇ヶ池のバックの山々もすっきり見えていた。

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ヒナはどこ。。!?
早朝にお池めぐりをしたときに、イワヒバリのかわいいヒナがいたところを通ったら、巣がもぬけの空だった。まだ巣立ちには程遠いヒナが、いったいどうしたんだろうか?何か嫌な予感。。



巣の近くで、大人のイワヒバリがエサをくわえてピーピー鳴きながらあちこち飛び回っていた。ヒナをさがしている様子。本当にどうしたのだろうか。動物にやられてしまったんだろうか。。


クリックでイワヒバリをアップに

近くの「血の池」に、ヒナを呼ぶ親ヒバリの声が響いていた・・・


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白山の山上散歩をたっぷりと楽しみ、日暮れ近くに大汝峰へ戻ってきた。スケッチをした御前峰と剣ヶ峰に、今立っている大汝峰のシルエットが伸びて行く。


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七倉山方面に太陽が沈み始めた。


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今夜お世話になる緊急避難小屋。


白山の最高峰の頂上で夕日を見られるなんて、予定外の体験ができたのはこの小屋のおかげ。本当はこういう使い方はしてはいけないんだけど… 小屋にあった雑記帳には、緊急避難でここに泊った人達のリアルなレポートが綴られていた。




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8月4日(火)
4時起床。それにしても小屋は寒かった。扉は外れていて立てかけて風を防ぐぐらいしか役立たないうえ、壁からも隙間風が入って来て、小屋の中なのに気温は10度にも達しない。着れるものは雨具も含めて上下全部着込んで、靴下も履いて、シュラフに潜り込んでも寒くてブルブル震えが止まらない。。 コンロでお湯を沸かして暖を取ったが、殆ど役に立たなかった。ここが本当に緊急時用の小屋だということを思い知った。

日の出の頃は、外気は7度まで下がってとにかく寒かったが、日差しが届くようになるとだんだんポカポカしてきた。お日様の有難さが身に沁みる。


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周囲の峰々も朝日に包まれて行く。


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昨日はゴマ平避難小屋まで行く予定を、大汝峰に泊ったため、今日は中宮温泉までのロングコースとなる。コースタイムは9時間45分で、距離は20キロにも及ぶので、6時前に出発した。

花咲く楽園が続く中宮道前半
中宮道を下り始めて間もなく、大きな「ヒルバオ雪渓」が現れた。ここは軽アイゼンを付けて慎重に下る。


雪渓下から見上げた白山の峰々が、コバルトブルーの空に映える。


その下には、ハクサンコザクラの大群落が広がっていた。サクラソウ科の可憐な花は白山の代表的な花ということで、こんなに見られて幸せ気分。


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更に下ったところにある「お花松原」と呼ばれる場所にもハクサンコザクラの群落が続く。


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お花松原はまさに百花繚乱の花の楽園だ。


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クロユリの群落があることでも有名だそうで、あちこちでクロユリが咲いていた。


そこから先も山上の楽園が続く。遥か遠方には北アルプスを望み、振り返れば白山の峰々がダイナミックな姿で迫る。道は木道が敷設されていて歩きやすく、さながら庭園散歩という感じ。


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広大な山上庭園の真ん中を1本道が伸びていく。


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北アルプスの峰々が南部から北部まで全部見える。


北弥陀ヶ原はお花畑に岩や池塘が点在している。こうした眺めはここだけではなく、しばらく低木林の中を歩いていたと思ったら、また自然が造り上げた花咲く庭園が目の前に開ける、という繰り返し。幸せ気分で天上散歩を楽しんだ。この後、大変な難行が待っているとも知らずに…


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崩落の激しい地獄尾根を覗くことができる「地獄覗」から望む白山。この雄姿を眺められるのもあと少しだ。


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間もなく樹林帯に入り、絶景の展望ともおさらば。道は細くなり草が多く、歩きにくくなってきた。アブが何匹もしつこくつ付きまとってくるのもうざったい。そしてようやく着いたゴマ平避難小屋は、昨夜泊ろうと思っていたところ。樹林帯の中にひっそりと建っていた。



アブがしつこいので、小屋の中で昼食にした。この小屋は、昨夜泊った大汝峰の緊急避難小屋とは比べものにならないほど立派だ。マットレスもあって、これなら寒い思いもしないで済んだろうな。だけど、展望はないし花もないし、やっぱり昨夜はあそこに泊って正解だった。寒かったけど…


悪路とアブに悩まされた中宮道後半
小屋から先はずっと樹林帯の中の下山だ。下山とは言っても、道はアップダウンの連続で、おまけに細くて斜めっていて歩きづらい。アブは相変わらずしつこく付いて来る。そんななかでも原生林のブナの木が癒しを与えてくれる。




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ゴマ平避難小屋から2時間以上かけて、シナノキ平避難小屋に来た。ここはこのまま通過。


アップダウンと悪路でかなりくたびれ気味のところ、登山道の真ん中に動物のフンを発見。かなり新鮮だ。ガイド本に、「中宮道は登山者も少なく、クマに遭遇する可能性もある」と書いてあったのを思い出し、恐ろしくなった。体力はかなり消耗しているが、クマ鈴を手にもって必死に振りながら、クマを驚かせるために奇声を発し、草で滑りやすく、歩きにくいアップダウンの道を行く。おまけにアブの数が増えて来た。

道は路肩がないほど狭く、急な個所が多く、ロープに捕まりながらの歩行も多い。歩けど歩けど下界の気配はなく、いったいどの辺りまで来たのか見当もつかないまま、写真も撮らずにひたすら歩いた。体力の消耗が激しく、下り道でももうスタスタ歩くことができない。シナノキ平避難小屋を過ぎて3時間以上歩き、ようやく下界の石段に達した。この石段を下りるのがきつかったこと。。。

おまけに、ずーっとしつこく付いて来たハエに似たアブが益々数を増やし、腕をチクっと刺してきた。これは痛い!怒って反撃したらアブは益々集団を大きくして俺の周りを飛び回り、刺そうとしてきた。タオルで振り払いつつ、車道に出てからは、もうボロボロに疲れた体で走って逃げなければならないほどになった。

更に何度か刺され、もう力尽きそうになったところで、ようやく今夜の宿「くろゆり荘」に到着した。時刻は17時25分。大汝峰を出てから、お昼休憩で長く休んだ以外はほぼ11時間半歩き通しだった。宿の人は、下山が遅いので心配して何度も様子を見に出ていたそうだ。無事にここまでやって来れたのが不思議なくらいだ。

クタクタだしちょっと気持ち悪いし、ご飯なんて食べられないとも思ったが、3日間の汗を流して秘湯に浸かったら食欲も戻り、夕食はどれもとても美味しくて完食。これぞ生き返った気分。宿の人や、他のお客さんと話していて、中宮道が相当なハードな道だということを改めて知った。そしてあのアブ、この辺では「オロ」と呼ばれ、特に朝夕は多くなり、二酸化炭素を嗅ぎつけると集団で襲ってくるそうだ。まんまとオロの餌食になったわけだ。翌朝、足湯に浸かっていたときもオロが寄って来たし、金沢行きのバス(予約制のコミュニティバス)に乗り込むときも、排気ガスを嗅ぎつけたオロが沢山集まってきて、車内まで侵入してきた。これは実にやっかいなアブだ!


古くから霊泉としても名高い中宮温泉には無料の足湯もある

オロにはほとほと参ったが、白山の魅力をたっぷり味わい、温泉と山の幸も楽しみ、最終日は一日金沢観光をして、長野-金沢間が開通して間もない北陸新幹線に乗って帰宅した。

《金沢の街並みと21世紀美術館》





《歩行タイムデータ(休憩を除く)》
1日目
別当出合→(1:04)別当坂分岐→(1:21)殿ヶ池避難小屋→(1:00)弥陀ヶ原→(0:19)白山室堂
2日目
白山室堂→(0:40)御前峰(終日白山山頂付近の散策)
3日目
大汝峰→(0:12)お池めぐり分岐→(0:49)お花松原→(0:38)北弥陀ヶ原→(0:54)地獄覗→(0:50)三俣峠→(0:47)ゴマ平避難小屋→(1:29)滝ヶ岳→(0:41)シナノキ平避難小屋→(1:11)温泉山→(2:00)中宮温泉

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