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夏山2017 上高地~涸沢~奥穂 テント2泊3日の山歩き

2017年12月31日 | 山&ハイキング
 2017年8月3日(木)~8月5日(土)

北アルプスの主峰と言えばやっぱり槍・穂高。穂高へ登るには上高地から涸沢へ上がり、そこから奥穂や北穂を目指すのが一般的なルートだ。これまで奥穂と北穂は2回ずつ登っているが、全て涸沢を経由した。だけど涸沢はいつも通過点で、お昼休憩ぐらいしか過ごしたことがない。涸沢にテントを張って1泊し、広大なカールでゆっくり散策でもして、モルゲンロートに映える穂高連峰を眺めたい。せっかくだから涸沢に連泊して、ここをベースに奥穂や北穂まで足を延ばそうと計画した。けれど、奥穂へ短時間で登れる稜線上にある穂高岳山荘にテント場もあることに気づいた。3000メートルからの夕景や日の出も捨てがたいので、やっぱり2泊目は穂高岳山荘のテン場泊とした。

梅雨明け後、7月末から8月初めにかけて天気が良さそうな日程を狙って出かける準備を整えた。しかしぐずついた天気が続き、出発を1日、また1日と遅らせ、天気予報ははっきりしなかったが、少しずつ天気は快方に向かっているようなのでそれに期待をかけて、スケジュール的にこれ以上先に延ばせない8月3日から2泊3日の日程で出かけた。

この日程で正解!初日は雨に降られたもののその後は晴天に恵まれ、涸沢と穂高を満喫した2泊3泊の山歩き。以下はそのレポートです。

8月3日(木)
時々一時

上高地~涸沢
家を5時40分に出発。中央道を通って松本経由でさわんど大橋バス停の駐車場に車を停め、シャトルバスで上高地へ入った。シャトルバスを待つ列に並び、最初に来たバスには乗れなかったが、その約10分後に来たバスに乗れた。

上高地バスターミナルの広場で、山から下りて来たお兄さんと会話。ひどい雨にも遭ったけど昨日から今日はいい天気で、ジャンダルムにも登頂したとのこと。その好天がまだ続いてくれることを願って出発した。晴れ間はあるが、河童橋から穂高連峰は望めなかった。

上高地から横尾までは距離は相当あるが、アップダウンの殆どない平坦な道で、森も中の遊歩道という感じ。散策を楽しむ家族連れもよく見かけるが、17キロのザックを背負い、昼どきから涸沢を目指す身としてはあんまり気楽には歩けない。休憩は明神と徳沢園で合わせて10分程度で、足早に横尾まで歩いた。

それでも梓川沿いの明るい森の中の道は気分がいい。秋に発表する「森の詩」をテーマにした曲の断片が思いつき、休憩時にボイスレコーダーにメロディーを歌って入れたりしながら歩いた。


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遊歩道沿いにサルを見かけることは多いが、今回出遭ったのはこの一匹だけだった。


横尾からは、それまでの平坦な遊歩道とは違って本格的な登山道となるが、本谷橋までは緩やかな傾斜の登りが多い。本谷橋を過ぎると急な上り坂が続く。途中、雨が降ってきて雨具を装着。このところ何年も雨具を使ったことはなく、実に久しぶりだった。本降りになるかとも思ったが、幸い雨は短時間で止んだ。

横尾から3時間弱で涸沢到着。雨が止んで青空が広がり、穂高の峰々も見えてきた。涸沢カールには大きな雪渓が残っていた。雪が多いために屏風岩を経由して徳沢へ下りるパノラマコースは通行止めとのこと。今年の夏は特に残雪が多いらしい。


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テントの受付を済ませ、夕食の予約のために涸沢小屋へ。テン場から涸沢小屋は雪渓経由で結構遠かった。

涸沢でのテン泊は初めて。完全に平らなところはなさそうだし、どこも石がゴロゴロある。取りあえず寝れるぐらいに整地してテントを張った。それでも石がけっこうゴツゴツする。張り終えてからテント受付の小屋の外にコンパネ板が重ねて置いたあるのを発見。「なんだ、これ使えばよかったー。。」と思ったが、有料で受付小屋はもう閉まっていて、勝手に持ち出してはマズいので今夜は石ころのゴツゴツは我慢することにした。

涸沢では、テント泊でもどちらの山小屋でも夕食を頼むことができるのがありがたい。テン場からちょっと歩くが、涸沢小屋なら予約の時間制限なしのうえに、200円安く夕食を用意してもらえるのでこちらにした。メニューはポークソテーがメインでおかずのバランスも良く、ビールを付けて満足のディナー。同じテーブルで一緒になった人達との山談義も楽しかった。

夕食を終え、小屋のテラスからは前穂連峰の上に月が出ていた。


テントに明かりが点り、涸沢はカラフルな光景となった。20時半の気温は外が10度、テントの中は11度… 殆ど変わらないじゃないか。1枚余分に着込んで寝た。



8月4日(金)のち時々

翌朝、楽しみにしていた穂高の峰々がモルゲンロートに染まる光景、このガスは結局ずっと居座り続けていたが、早朝の涸沢ならではの景色を眺めることができた。気温は7度、寒いのでまたシュラフに潜り込んだ。


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テントは快適な寝心地ってわけではないけれど、日が上がってきて暖かくなってきたらまた眠くなってしばらくウトウト… 今日は急がないしと思いつつも、外を覗いたら上空のガスがやっと取れて来て涸沢槍のてっぺんも見える。そろそろ出発するか。


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テントを撤収して穂高岳山荘へ出発。道は涸沢小屋の裏からザイデングラードへ入るコースと、パノラマコース経由でザイテングラートへ合流するコースがある。テン場から近い後者を選んだ。パノラマコースの下山路の方は積雪のため通行止めになっているが、獅子岩まで上がるコースの方は雪渓はかなり残っているものの通行可。溶けた雪の間から咲き始めた花を眺めながらゆっくり歩き始めた。




チングルマ

テン場を出発して40分ほど歩いたところで、「見晴岩」という名がついた一休みできる平らな大きな岩があった。ここからの前穂の眺めが良く、急ぐ行程でもないので、この景色をこんな風にスケッチしてみた。



見晴岩から歩を進めると、ルートは大きな雪渓に入って行った。しばらくアイゼン無しで歩いていたら、斜面が少しきつくなってきたので、安全にスタスタ歩くためにアイゼンを装着。それにしても長い雪渓歩きで、トレースもなくなってしまったので、もしかしてルートを誤ったかも知れない。

雪渓が終わるあたりで涸沢小屋からのコースを来たと思われる人たちが歩いているルートに合流して一安心。


ザイテングラート周辺には花が多く、お花畑を形成しているところもあった。夏山はこうして高山植物を見られるのも大きな楽しみ。

ハクサンフウロ


ハクサンイチゲ


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ヨツバシオガマ


ザイテングラートの後半の岩場は結構急な斜面が続いてキツイが、あちこちに咲く花に癒され、斜面が急な分一気に高度を稼ぐので、一歩一歩登るごとに南側を振り向いたときの大天井岳、常念岳方面の展望がどんどん開けてくるのにも元気づけられる。


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岩場の連続で、最後のキツイ斜面を登り切り、穂高岳山荘の建つ稜線へ辿り着いた。小屋の前のテラスは大勢の登山客でとても賑やか。韓国人の大きなパーティーがいて、韓国語も飛び交っていた。

小屋でテントの手続きを済ませテント場へ。テント場は涸沢岳方面へ向かう斜面に棚田状に作られている。その一番小屋から近いところにテントを設営した。

一見狭くて寝心地もあまり良くなさそうだが、人が通れるくらいの幅は取れるし、涸沢のテント場よりも平らで寝心地は悪くない。常念岳、大天井岳、前穂方面のパノラマは申し分なし! 奥穂方面や笠ヶ岳方面は残念ながらガスっていた。


小屋の前のテラスでお昼を食べていたら、目の前の雪渓にイワヒバリがやってきた。



展望がききそうなら涸沢岳まで行って来ようと思っていたが、生憎ガスっていて眺望は期待できないので、このテラスでスケッチなどをして過ごした。



夕食は今夜も小屋で。こんな3000メートルの稜線に建つ穂高岳山荘でもテン泊のお客にまで夕食を用意してもらえるのはとても助かる。しかもこの豪華メニュー! 同じテーブルの人達と山の話題に花を咲かせつつ、美味しく頂いた。


夕暮れ時、夕日を見ることは出来なかったが、西の空は夕映えで染まった。その後、月が夜空を照らし、テントの前からは奥穂方面に立ちはだかる岩稜が見え、小屋の裏のヘリポートまで上ればジャンダルムも望むことができた。それらは間もなくガスに隠れてしまったが、きっと明日はいい天気になるぞ。


明朝に備え、早く寝ておこうとシュラフに潜り込んだが、テラスの方から賑やかな声が聞こえてきてなかなか眠れない。ようやく眠りかけた頃、テントのすぐ近くで大騒ぎする声が聞こえてきた。小屋の中からか?小屋の消灯時刻はとっくに過ぎて、10時を回っているのに。あまりのうるささに我慢できず、テントから顔を出して「ちょっと静かにしてよ!」と叫んだ。それっきり大きな声は聞こえなくなった。あの騒ぎは何だったんだろうか!?

8月5日(土)

4時起床。天気は良さそう。東の空が染まり始めた。テントから出て景色を眺めていたら、韓国人らしきお隣のテントの住人が姿を現したので、「アンニョンハセヨ!」と挨拶したら、嬉しそうに「アンニョンハセヨ!」と返し、韓国語で話してきたが、わからず「ゴメンナサイ。。」

まずは涸沢岳からご来光を拝もう。20分足らずで涸沢岳山頂に着いて間もなく日の出を迎えた。東の地平線に雲の分厚い層が堆積していて気になるが、今のところ天気は良好。


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前穂の後方には南アルプスと富士山がきれいに見えている。


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穂高岳山荘の背後には奥穂が聳える。


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前穂連峰が朝日に照らされてきた。今が日の出の後に迎える一番美しい瞬間!


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これから登る奥穂。その奥にはジャンダルムの岩峰。


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北へ目をやれば、北穂と、大キレットの向こうに槍が鎮座する迫力のパノラマ。


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頂上に居合わせた人に、槍をバックにシャッターを押してもらったら
「これいいですね、僕も撮ってください!」と言われた。


西には名峰、笠ヶ岳。新田次郎の小説「槍ヶ岳開山」での笠ヶ岳の描写に惹かれてこの山に幼なじみと登ったときの感動が、北アルプス登山のきっかけとなり、その後何度となく登っている大切な山。


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涸沢岳山頂で40分経った頃、ジャンダルムの先端にも日が当たってきた。そろそろ奥穂へ向かおう。


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高所の稜線上の岩場で健気に咲くイワツメクサは、夏山歩きの癒しの花。


穂高岳山荘からすぐの最初の岩場の登りが、奥穂高岳山頂までのルートで鎖場と梯子が連続する最大の難所で、ここは結構渋滞した。

久々に穂高へ来て気づいたのは、殆どと言ってもいいくらい多くの人がヘルメットを着用していること。山小屋のホームページには確かにヘルメット着用を推奨する記載があったが、穂高の一般登山道でヘルメットを着けている一般登山者はあまり見かけた覚えはないし、テント泊で荷物が重い身としては少しでも荷物は少なくしたかったので、ヘルメットなんて全く考えずにやってきた。

でもこれほどみんなヘルメット着けていると、普通の帽子しか被っていない自分は「山をなめてる」なんて思われそうだし、やっぱり自分の身を守るためには今やヘルメット着用は必須なのかも知れない。次に穂高に来ることがあったら用意した方が良さそうだ。



笠ヶ岳と自分の影

テント場から約40分で、日本第3の高峰、奥穂高岳山頂(3190m)に到着。槍ヶ岳方面の眺めは、涸沢岳からの眺めに比べて高度感が増してよりダイナミックだ。これを「山渓」の写真で初めて見たとき「絶対に来たい!」と思った。ここまで良いコンディションで見られるのは2度目だ。


黒部五郎岳、薬師岳、水晶岳、剣、立山、後立山の峰々… 全部見える!


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そしてこの絶景をスケッチ。山々は実際より険しくなった。


木曾御嶽山、乗鞍岳、焼岳と火山が三山連なる。御嶽山からは噴煙が上っている。


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目の前に聳えるジャンダルムと、その後方には白山も見える。「ジャンダルム」とは護衛警察官というフランス語から転じて、主峰を守るように立ちはだかる岩稜のことを言う。僕は以前作曲した吹奏楽のためのマーチ「第1行進曲」(1995年全日本吹奏楽コンクール課題曲Ⅲ)に、この奥穂のジャンダルムを重ねて「ジャンダルム」と命名したので、一度は是非登ってみたいと思っているのだが、「奥穂~北穂や大キレットの比じゃない」なんて人から話を聞いたり、Youtubeのコワい動画を見たりするとかなり手ごわそうだし、遭難とは無縁のはずの作曲をしたことが遭難につながるなんてイヤだから、やっぱり今回も行くのは止めた。


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その代わり、ジャンダルムをバックに写真を撮ってもらった。


それからスケッチもした… ジャンダルム、やっぱり行ってみたい!


奥穂の山頂には1時間半ほど滞在して、スケッチを2枚仕上げ、コーヒーを淹れてお菓子を食べ、3000メートルの絶景と空気を満喫した。次々と登山者がやって来て、余り広くはない山頂はなかなかの賑わい。天気が良いときは誰の声も弾んでいる。韓国人パーティーも楽しそうにしていた。写真を撮るときの「いちにのさん!」という声かけを韓国語では「ハナトゥルセッ!」と言うのを知った。なんかかわいらしい。

この後は来た道を上高地に戻るだけ。穂高岳山荘へ下る急な岩場から、まだ撤収していない僕のオレンジ色のテントが小屋の一番近いところに見えている。槍ヶ岳もこれで見納めだ。


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ザイデングラートの岩場を下り終えて、来た道を振り返る。青空に穂高の峰々が突き刺さるよう。


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行きでは雪渓に迷い込んでしまったので、帰りは雪のない涸沢小屋経由の道を選ぶ。ひたすら下り続けてくたびれてきたが、休憩しようと思っていたら、涸沢小屋がすぐ先に見えたので、「あと数分、頑張っちゃおう!」と、休憩を入れずに進んだ。「小屋に着いたらかき氷食べたいな!」なんてはやる気持ちで足を速めて歩いていたとき、身体がザックに振られて頭から転倒。。。歯が「ガキン」とイヤな音がした。この瞬間、6年前に至仏山で転んで顔面血だらけになったこと)が蘇った。。。何が起こったかよくわからない。ザックは2本のベルトでキチンと留めていたのに、なんでこんなことに。

歯ぐきや鼻から血が出るかと思ったが、幸い出血はない。腕を擦ってヒリヒリと痛いが、軽傷で済んだようだ。危険な場所がたくさんある穂高、転んだ場所によっては大事になってしまったかも。何かにつまづいたわけでもないし、滑ったわけでもない。ずっと「転ばないよう慎重に!」と心がけて歩いていたのにどうして転んでしまったんだろう、と思うと気が滅入る。身体が疲れているところに、小屋が見えてついはしゃいでしまい、気持ちがその時の身体のコンディションとちぐはぐになってしまったせい、ぐらいしか言えない。どんなに「慎重に!」と思っても、100%常に慎重で居続けることはまず不可能。山は危ない!と肝に銘じるしかなのだろう。

涸沢小屋にかき氷はなかった。それから後は思いっきりペースを落として横尾まで下ったら、上高地から沢渡駐車場へ行く最終のシャトルバスの時刻まで余裕がなくなってしまった。身体はかなりヘトヘトなのに、そこから上高地までの10キロの遊歩道歩きがとても忙しくなった。本当は徳沢園でゆっくりお昼にしようと思っていたのだが、上高地まで途中5分程度休んだだけで、河童橋までやってきた。バスの発車まであと10分、何とか間に合いそうなので、賑やかな河童橋から焼岳方面の写真を1枚だけ撮った。


下山では転倒というハプニングもあり、時間も押してしまい、タイヘンだった。。いつものことだが、上でゆっくりし過ぎてしまうのが原因。わかっちゃいるけど、天気が良いとつい上で長居してしまう。こんなんじゃあ山に登る資格ない、なんて言われそうだ。だけど、天気に恵まれて絶景を満喫した今回の穂高岳、良い山歩きができた、という思い出の方が大きい。

沢渡でゆっくり温泉に浸かり、おいしいお蕎麦を食べて帰路に就いた。


《歩行タイムデータ(休憩を除く)》
1日目
上高地→(0:41)明神→(0:43)徳沢→(0:50)横尾→(0:57)本谷橋→(1:42)涸沢
2日目
涸沢テント場→(0:28)→見晴岩→(2:09)→穂高岳山荘テント場
3日目
穂高岳山荘テント場→(0:17)涸沢岳→(0:15)穂高岳山荘→(0:39)穂高岳→(0:57)穂高岳山荘テント場→(1:29)涸沢小屋→(2:15)本谷橋→(0:51)横尾→(0:52)徳沢→(0:53)明神→(0:45)上高地バスターミナル

【過去の夏山登山】
2013 北八ヶ岳~南八ヶ岳縦走の3泊4日


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