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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

N響 2019年11月B定期(ブロムシュテット 指揮)

2019年11月09日 | pocknのコンサート感想録2019
11月7日(木)ヘルベルト・ブロムシュテット 指揮 NHK交響楽団
《2019年11月Bプロ》 サントリーホール


【曲目】
1.ベートーヴェン/交響曲第3番変ホ長調Op.55「英雄」
2.R.シュトラウス/交響詩「死と変容」Op.24
3.ワーグナー/歌劇「タンホイザー」序曲

約1年ぶりでN響定期に登場したブロムシュテット翁が、相変わらず元気いっぱいの指揮で聴衆を魅了した。プログラムはドイツものが3つ。最初にエロイカ、最後がタンホイザー序曲という通常とは真逆の並び。これでエロイカは盛り上がるか、いくらワーグナーだって序曲が締めは軽いのでは、と「?」が頭に浮かんだが、演奏を聴いてこの並びに納得した。

まずはエロイカ。まろさんの隣には青木尚佳さんが!冒頭の2つのパンチも鮮やかに、ブロムシュテットらしいキビキビと引き締まった、颯爽とした演奏が始まった。カッチリしていながら硬さはなく、演奏全体が微笑みを浮かべているよう。随所に登場するソロ楽器や各弦のパートソロの印象的なモチーフが「聴かせてくれるじゃん」という感じで語りかけ、それらが有機的に語り継がれて行く妙に心がウキウキ。

第2楽章の葬送行進曲だって重くなりすぎずくっきりとした足跡を刻んで鮮やかな濃淡で印象付け、第3楽章の軽快で楽しげな気分がフィナーレのクライマックスへと繋がった。音をどんな風に聴かせ、どう繋げて行けば「エロイカが一番喜ぶか」を熟知したブロムシュテットの職人技が冴え渡り、鮮やかに力強く曲を閉じた。黒のペン一本で白い紙に描かれた、緻密で力強いムーブマン溢れる素描の印象。白と黒の2色しかないのに、そこから豊かな色彩が感じられる、そんな演奏だった。

後半ではエロイカとは明らかに異なる音世界が出現した。エロイカでは拍子木のように乾いた木の清々しい響きが鳴り渡っていたのが、こちらは湿潤で油が乗った響き。オーケストレーションや編成の違いも勿論あるだろうが、それ以上にブロムシュテットによる「描き分け」の技を感じた。また絵に例えれば、多彩な色が並んだパレットから、たっぷりと絵の具を筆に乗せてカンバスに色を重ねて行く鮮やかな油絵。

シュトラウスでは、病床の主人公の鼓動を模したような印象的なティンパニの静かな連打が始まったときからそれを感じ、命溢れる回想シーンは長いブレスで壮大にして壮麗、これぞドイツ音楽!と云いたい音圧で圧倒。そして死を前に、静かに曲を閉じる場面で音楽にどっぷり浸かった。

そのどっぷり気分は次のタンホイザー序曲で更に強まった。官能的で退廃的な要素も含まれているはずの序曲だが、全てが神々しい光を放って聴こえた。ホルン、クラ、ファゴットによる静かな開始のテーマは神聖なオーラに包まれ、それが徐々に天に昇って行くシーンの神々しさ。そのテーマを弦が16分音符の3連符のかけらを刻みつつ装飾して行く様子は、名匠が彫刻刀に魂を込めて刻む一刀一刀のよう。まろさんと尚佳さんのデュオも魅力たっぷり。プレイヤー一人一人の集中力が一丸となって崇高な目標へ邁進して行くテンションと熱量は圧倒的で、法悦の高みを築き上げた。神々しい大伽藍を前に言葉を失った時のような感覚に打ちのめされた。

ここまで最高潮に達してしまったらもう後には何も聴きたくないと思える感動。ステージと客席が一体となって熱気に包まれた。ブロムシュテットが神に思えた。

出待ちしてマエストロにサインを頂いた愛読書。これは音楽とは、音楽家とはいかにあるべきかを教えてくれる名著。

ブロムシュテット指揮N響:「田園」&ステンハンマル(2018.10.25 サントリーホール)
♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「積もった雪」
MS:小泉詠子/Pf:田中梢
金子みすゞ作詞「私と小鳥と鈴と」
S:薗田真木子/Pf:梅田朋子
「子守歌」~チェロとピアノのための~
Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
合唱曲「野ばら」
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」
金子みすゞ作詞「鯨法会」
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美

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