10月24日(土)竹澤恭子(Vn)/江口 玲(Pf)
~ベートーヴェン生誕250周年記念~
第一生命ホール
【曲目】
1.ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ヘ長調 Op.24 「春」
2.ヴァイオリン・ソナタ 第7番 ハ短調 Op.30-2
3.ヴァイオリン・ソナタ 第9番 イ長調 Op.47 「クロイツェル」
【アンコール】
1.クライスラー/ベートーヴェンの主題によるロンディーノ
2.シューベルト/ヴィルヘルミ編/アヴェ・マリア
ベートーヴェン・イヤーに相応しいヴァイオリンの演奏会として、カヴァコスと五嶋みどりのリサイタルのチケットを買っていたが、カヴァコスが来日できなくなったので、五嶋みどりのもう一つのリサイタルを追加した。しかしMIDORIご一行の来日も叶わなくなった。困った、、ベートーヴェンのソナタを聴ける良い演奏会はないかと思って見つけたのがこれ。竹澤は僕のなかで注目度が高いし、江口は長く辛かったコンサートロスの闇が明けた初のコンサートで聴いた救世主、ということで行くことにしたが、これが大正解だった。
2人はこれまでもデュオを組んでいるそうで、ベートーヴェンの音楽の感じかた、表現方法がとてもしっくりと寄り添っていると感じた。それはレガートを主体に丁寧な陰影をつけて作品を立体的に描いてゆくところ。そこにはほのかなロマンチックな香りも漂う。
スプリングソナタの出だしの香り立つような表情のやり取りから聴き手を惹き付けた。まさに曲のタイトルに相応しい春を思わせるデュオ。お花畑を上空から俯瞰し、種類ごとに花々が群生している様子を悠然と眺め、様々な色と香りの変化を楽しんでいるよう。第2楽章は、江口の野に遊ぶ伸びやかで優美に動き回るピアノが印象的。戯れあう第3楽章から、第4楽章ではお花畑の中を楽しげに駆け回っている情景が浮かんだ。スプリングソナタとは趣ががらりと変わるハ短調のソナタでも、2人の作品に対する丁寧なアプローチは変わらない。陰影には深刻さが加わり、深い思索を感じさせた。
そして「クロイツェル」。ここで2人のパフォーマンスは更に濃密になって一体感を強めた。フィギュアスケートやアイスダンスのペアのように、2人の間の力のバランスがピッタリと連動する。相手をふわりとリフトしたり、遠くへ投げたり、お互いが手を取り合って遠心力で大きく回転したり。そのやり取りの最中の緊張と弛緩の入れ替わりで世界が変わる。熱量、緊迫度、濃度が一気に高まったかと思えば、次の瞬間には静謐な世界が支配する。そこでの竹澤のヴァイオリンのどこまでも澄み切った美しい音色は心が浄化されるようだ。
第2楽章で変奏ごとに主役が入れ替わり、或いは両者が一体となって繰り広げられる様々な変奏はデュオの真骨頂。主導するパートのアグレッシブなほどの雄弁さが、それまで抱いていたこの楽章の淡々としたイメージを打ち破った。そして第3楽章冒頭のピアノの決然とした一撃に続き、2人の「ダンス」は益々熱を帯び、クライマックスへと突き進み、最高潮のエンディングを迎えた。「ブラボー!」と叫びたかった。先週NHK-BSで観たコロナ禍のルツェルン音楽祭での演奏会(ブロムシュテットとアルゲリッチ)では、マスクを着けた聴衆から盛んなブラボーが飛んでいたなぁ。
アンコールは一転して、味わいと香りを湛えた歌で心をくすぐるクライスラー。さらに鳴り止まない拍手に応えて、竹澤さんが「コロナが一日も早く収束することを願って」と挨拶して演奏された「アヴェ・マリア」。コロナが収束するなんてとうに諦めている僕だが、収束したらどんなにいいだろう、と思いつつ、深い祈りがこもったワンコーラス目、希望にあふれたツーコーラス目を聴いて胸が熱くなった。
この演奏会の模様は12月22日にNHK-FM「ベスト・オブ・クラシック」で放送されるとのこと。
江口 玲&川口成彦 ピアノリサイタル 2020.6.19 紀尾井ホール
バルトーク/ヴァイオリン協奏曲第1番 (Vn:竹澤恭子) 2007.4.19 東京文化会館
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2.ヴァイオリン・ソナタ 第7番 ハ短調 Op.30-2
3.ヴァイオリン・ソナタ 第9番 イ長調 Op.47 「クロイツェル」
【アンコール】
1.クライスラー/ベートーヴェンの主題によるロンディーノ
2.シューベルト/ヴィルヘルミ編/アヴェ・マリア
ベートーヴェン・イヤーに相応しいヴァイオリンの演奏会として、カヴァコスと五嶋みどりのリサイタルのチケットを買っていたが、カヴァコスが来日できなくなったので、五嶋みどりのもう一つのリサイタルを追加した。しかしMIDORIご一行の来日も叶わなくなった。困った、、ベートーヴェンのソナタを聴ける良い演奏会はないかと思って見つけたのがこれ。竹澤は僕のなかで注目度が高いし、江口は長く辛かったコンサートロスの闇が明けた初のコンサートで聴いた救世主、ということで行くことにしたが、これが大正解だった。
2人はこれまでもデュオを組んでいるそうで、ベートーヴェンの音楽の感じかた、表現方法がとてもしっくりと寄り添っていると感じた。それはレガートを主体に丁寧な陰影をつけて作品を立体的に描いてゆくところ。そこにはほのかなロマンチックな香りも漂う。
スプリングソナタの出だしの香り立つような表情のやり取りから聴き手を惹き付けた。まさに曲のタイトルに相応しい春を思わせるデュオ。お花畑を上空から俯瞰し、種類ごとに花々が群生している様子を悠然と眺め、様々な色と香りの変化を楽しんでいるよう。第2楽章は、江口の野に遊ぶ伸びやかで優美に動き回るピアノが印象的。戯れあう第3楽章から、第4楽章ではお花畑の中を楽しげに駆け回っている情景が浮かんだ。スプリングソナタとは趣ががらりと変わるハ短調のソナタでも、2人の作品に対する丁寧なアプローチは変わらない。陰影には深刻さが加わり、深い思索を感じさせた。
そして「クロイツェル」。ここで2人のパフォーマンスは更に濃密になって一体感を強めた。フィギュアスケートやアイスダンスのペアのように、2人の間の力のバランスがピッタリと連動する。相手をふわりとリフトしたり、遠くへ投げたり、お互いが手を取り合って遠心力で大きく回転したり。そのやり取りの最中の緊張と弛緩の入れ替わりで世界が変わる。熱量、緊迫度、濃度が一気に高まったかと思えば、次の瞬間には静謐な世界が支配する。そこでの竹澤のヴァイオリンのどこまでも澄み切った美しい音色は心が浄化されるようだ。
第2楽章で変奏ごとに主役が入れ替わり、或いは両者が一体となって繰り広げられる様々な変奏はデュオの真骨頂。主導するパートのアグレッシブなほどの雄弁さが、それまで抱いていたこの楽章の淡々としたイメージを打ち破った。そして第3楽章冒頭のピアノの決然とした一撃に続き、2人の「ダンス」は益々熱を帯び、クライマックスへと突き進み、最高潮のエンディングを迎えた。「ブラボー!」と叫びたかった。先週NHK-BSで観たコロナ禍のルツェルン音楽祭での演奏会(ブロムシュテットとアルゲリッチ)では、マスクを着けた聴衆から盛んなブラボーが飛んでいたなぁ。
アンコールは一転して、味わいと香りを湛えた歌で心をくすぐるクライスラー。さらに鳴り止まない拍手に応えて、竹澤さんが「コロナが一日も早く収束することを願って」と挨拶して演奏された「アヴェ・マリア」。コロナが収束するなんてとうに諦めている僕だが、収束したらどんなにいいだろう、と思いつつ、深い祈りがこもったワンコーラス目、希望にあふれたツーコーラス目を聴いて胸が熱くなった。
この演奏会の模様は12月22日にNHK-FM「ベスト・オブ・クラシック」で放送されるとのこと。
江口 玲&川口成彦 ピアノリサイタル 2020.6.19 紀尾井ホール
バルトーク/ヴァイオリン協奏曲第1番 (Vn:竹澤恭子) 2007.4.19 東京文化会館
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