10月26日(月)MAROワールド Vol.38 “ベートーヴェン Part Ⅴ” by 篠崎“まろ”史紀
~弦楽三重奏の夕べ~
王子ホール
【曲目】
1.弦楽三重奏曲第2番 ト長調 Op.9-1
2.弦楽三重奏曲第3番 ニ長調 Op.9-2
3.弦楽三重奏曲第4番 ハ短調 Op.9-3
【アンコール】
♪ 弦楽三重奏曲第1番 変ホ長調 Op.3~第2楽章
【演奏】Vn:篠崎“まろ”史紀/Vla:佐々木亮/Vc:伊東 裕
聴く機会が少ないベートーヴェンの弦楽三重奏曲をMAROワールドでやってくれるというベートーヴェン・イヤーならではの嬉しい企画に引かれて夫婦で行く予定だった4月の公演が、半年延期になりながらも無事に開催された。王子ホールは最前列を外してほぼ満席。
プログラムはベートーヴェンが20代後半に書いた作品9の3つの弦楽三重奏曲。弦楽四重奏の第2ヴァイオリンが抜けたこの編成は、バランス的にも演奏が難しいとマロさんがMCで話していた。でもどんな難しい曲でも聴き手を楽しませてしまうのがMAROワールドだ。3人はこの「難曲」にしかめっ面で立ち向かうのではなく、時にニヤリと不敵の笑みを浮かべつつ、怯むことなく挑んだ。
前半の長調で書かれた2曲は、次々に新しい風景が現れ、ときに物陰から何かが襲いかかって来そうなスリルがある。3人はそんなサプライズにも「いつでも来い!」と勇んで歩み、困難が立ちはだかっても必殺技で軽くねじ伏せ、またある時は巧みにかわし、楽し気に進んでいった。ただ整然と進むのではなく、ちょっと脇道にそれたり、誰かが急にチョロっと走り出したり、冒険好きの仲間がワクワクドキドキしながら進んで行くスリルと清々しさを感じる快演だった。
後半のハ短調は更に物言う音楽で、作品としての完成度や深みもハンパでない。対等に書かれた3つのパートがそれぞれに意思を持ち、何かを求めている。それぞれ別の意思があっても求めているものは究極的な「真理」だ。3人はこちらでは遊び心は脇に置いて、新たな境地を開拓してゆく。そこでは、単に美しい音を奏でるより、ホンモノの音で核心に迫ろうという気概が伝わってきた。これこそベートーヴェン魂と云えるものではないか。第4楽章では真理の境地に近づくウキウキした気分が表現され、最後は3人で顔を見合わせて、「ん、これでいいのだ」と納得して静かに旅を終えた。
ベートーヴェンの音楽って若書きの曲もすごいんだな、と改めて思った。これもMAROワールドの面々の真摯な演奏があればこそ。休憩のあと、まろさんに「ベートーヴェン論を!」とマイクを向けられた伊東さんと佐々木さんのコメントは…
(伊東さん)
ベートーヴェンはチェロをアンサンブルのなかでベースラインから解放し、変革をもたらし、音楽で人間の深い感情を表現した。これから演奏するOp.9-3は、ベートーヴェンの運命の調性であるハ短調で書かれ、そうした深い世界を描き出している。
(佐々木さん)
コロナで半年もの間、全ての活動が止まり、気が狂いそうになっていたとき、ベートーヴェン最後のピアノソナタ第32番を聴いたら、それまでの辛い気持ちがすっと消えた。ベートーヴェンの音楽には、人を危機から救う力がある。
ベートーヴェンの本質を突いたコメントはとても説得力があるし、こうした思いが演奏に表れるんだなと納得。こんな話が聴けるのもMAROワールドならでは。
そんなMAROワールドのお楽しみに、いつもなら休憩時間に作曲家ゆかりのワイン(有料)やウィーンのお菓子の提供があるのだが、それができない代わりに、まろさん愛蔵の蓄音機が持ち込まれ、「まろのSP日記」さながらSPレコードの演奏が披露された。電気を使わず、振動による共鳴だけで出ているとは思えないリアルな音。SPレコードは家に所蔵があり、いつか蓄音機を購入してこれらを聴いてみたい。
休憩時間のお菓子に代えて、帰りに一人ずつ箱入りのシガールが配られた。至れり尽くせりのMAROワールド、楽しかった!
ベートーヴェンのロマンスとバッハの2つのヴァイオリンのための協奏曲が流れた
MAROワールド Vol.25 "ベートーヴェン Part.Ⅳ" ~2015.3.20 王子ホール~
MAROワールドVol.37 by 篠崎“まろ”史紀 & MAROカンパニー ~2020.1.11 王子ホール~
~弦楽三重奏の夕べ~
王子ホール
【曲目】
1.弦楽三重奏曲第2番 ト長調 Op.9-1
2.弦楽三重奏曲第3番 ニ長調 Op.9-2
3.弦楽三重奏曲第4番 ハ短調 Op.9-3
【アンコール】
♪ 弦楽三重奏曲第1番 変ホ長調 Op.3~第2楽章
【演奏】Vn:篠崎“まろ”史紀/Vla:佐々木亮/Vc:伊東 裕
聴く機会が少ないベートーヴェンの弦楽三重奏曲をMAROワールドでやってくれるというベートーヴェン・イヤーならではの嬉しい企画に引かれて夫婦で行く予定だった4月の公演が、半年延期になりながらも無事に開催された。王子ホールは最前列を外してほぼ満席。
プログラムはベートーヴェンが20代後半に書いた作品9の3つの弦楽三重奏曲。弦楽四重奏の第2ヴァイオリンが抜けたこの編成は、バランス的にも演奏が難しいとマロさんがMCで話していた。でもどんな難しい曲でも聴き手を楽しませてしまうのがMAROワールドだ。3人はこの「難曲」にしかめっ面で立ち向かうのではなく、時にニヤリと不敵の笑みを浮かべつつ、怯むことなく挑んだ。
前半の長調で書かれた2曲は、次々に新しい風景が現れ、ときに物陰から何かが襲いかかって来そうなスリルがある。3人はそんなサプライズにも「いつでも来い!」と勇んで歩み、困難が立ちはだかっても必殺技で軽くねじ伏せ、またある時は巧みにかわし、楽し気に進んでいった。ただ整然と進むのではなく、ちょっと脇道にそれたり、誰かが急にチョロっと走り出したり、冒険好きの仲間がワクワクドキドキしながら進んで行くスリルと清々しさを感じる快演だった。
後半のハ短調は更に物言う音楽で、作品としての完成度や深みもハンパでない。対等に書かれた3つのパートがそれぞれに意思を持ち、何かを求めている。それぞれ別の意思があっても求めているものは究極的な「真理」だ。3人はこちらでは遊び心は脇に置いて、新たな境地を開拓してゆく。そこでは、単に美しい音を奏でるより、ホンモノの音で核心に迫ろうという気概が伝わってきた。これこそベートーヴェン魂と云えるものではないか。第4楽章では真理の境地に近づくウキウキした気分が表現され、最後は3人で顔を見合わせて、「ん、これでいいのだ」と納得して静かに旅を終えた。
ベートーヴェンの音楽って若書きの曲もすごいんだな、と改めて思った。これもMAROワールドの面々の真摯な演奏があればこそ。休憩のあと、まろさんに「ベートーヴェン論を!」とマイクを向けられた伊東さんと佐々木さんのコメントは…
(伊東さん)
ベートーヴェンはチェロをアンサンブルのなかでベースラインから解放し、変革をもたらし、音楽で人間の深い感情を表現した。これから演奏するOp.9-3は、ベートーヴェンの運命の調性であるハ短調で書かれ、そうした深い世界を描き出している。
(佐々木さん)
コロナで半年もの間、全ての活動が止まり、気が狂いそうになっていたとき、ベートーヴェン最後のピアノソナタ第32番を聴いたら、それまでの辛い気持ちがすっと消えた。ベートーヴェンの音楽には、人を危機から救う力がある。
ベートーヴェンの本質を突いたコメントはとても説得力があるし、こうした思いが演奏に表れるんだなと納得。こんな話が聴けるのもMAROワールドならでは。
そんなMAROワールドのお楽しみに、いつもなら休憩時間に作曲家ゆかりのワイン(有料)やウィーンのお菓子の提供があるのだが、それができない代わりに、まろさん愛蔵の蓄音機が持ち込まれ、「まろのSP日記」さながらSPレコードの演奏が披露された。電気を使わず、振動による共鳴だけで出ているとは思えないリアルな音。SPレコードは家に所蔵があり、いつか蓄音機を購入してこれらを聴いてみたい。
休憩時間のお菓子に代えて、帰りに一人ずつ箱入りのシガールが配られた。至れり尽くせりのMAROワールド、楽しかった!
ベートーヴェンのロマンスとバッハの2つのヴァイオリンのための協奏曲が流れた
MAROワールド Vol.25 "ベートーヴェン Part.Ⅳ" ~2015.3.20 王子ホール~
MAROワールドVol.37 by 篠崎“まろ”史紀 & MAROカンパニー ~2020.1.11 王子ホール~