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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

東京音楽大学大学院 伴奏科2年生によるアンサンブルコンサート

2017年09月20日 | pocknのコンサート感想録2017
9月16日(土)東京音楽大学土曜コンサートシリーズ Vol.13
~大学院器楽専攻鍵盤楽器研究領域(伴奏)2年による~
東京音楽大学J館スタジオ

1. 宮阪優奈
♪プロコフィエフ/チェロ・ソナタ ハ長調Op.119
 Vc:門脇大樹
2.藤島さつき
♪デュパルク/前世、戦いの起こった国へ
♪ドビュッシー/忘れられし小唄 L.60
 S:森 朱美(デュパルク)、北村さおり(ドビュッシー)
3. 佐藤 響
♪プーランク/陽気な歌 FP42
 Bar:澤地 豪
♪プーランク/フルート・ソナタ FP164
 Fl:鈴木 愛
4. 石川夏子
♪ラヴェル/ヴァイオリン・ソナタ(遺作)
 Vn:林 優樹
5. 兵藤彩子
♪ショパン/チェロ・ソナタ ト短調 Op.65
 Vc:新井 昴

昨年12月に学内でコンサートを行った伴奏専攻の大学院1年目の学生が、2年目を迎えてのコンサート。今回も様々な楽器(声)の共演者を迎え、多彩な曲目が並んだ。伴奏専攻のコンサートということで、普段よりもより伴奏者に注目して演奏を聴くことでの発見も多いコンサートだ。

トップバッターの宮阪優奈さんが選んだのはプロコフィエフのチェロ・ソナタ。宮阪さんは、柔らかなタッチでチェロに寄り添い、プロコフィエフの音楽のデリケートな部分に丁寧に色付けを施していった。プロコフィエフならではの特徴的なリズムも自然な息遣いでチェロと渡り合っていた。門脇さんのチェロはダイナミックで音も大きいので、ピアノがもっと赤裸々に存在感をアピールすると、更にスリリングなデュオの醍醐味を出せると思った。

藤島さつきさんが選んだデュパルクとドビュッシーの歌曲は、絵画を想わせる抒情的な作品。藤島さんは、これを柔らかな筆先で、繊細で淡い色調のまさに絵画を描くタッチで音を紡いでいった。印象派の画家が影にも色彩を与えたように、ピアノが色を伴った影を「主題」である歌に施し、森さんと北村さんの詩情溢れる香りやかな歌が、場面に応じて浮かび上がり、詩が伝える情景が見えてくるようだった。曲もどれも素敵だ。細かい話は抜きにして、藤島さんのピアノは聴いていてとても気持ちがいい。歌手もきっと演奏し易いだろう。

後半の最初は佐藤響さんの伴奏で、プーランクの歌曲集と有名なフルート・ソナタ。佐藤さんのピアノは音がギュッと詰まっていて硬質な輝きがあり、それがストレートに響く。プーランクの音楽のリアリティーが白日の下に照らされるといった感じ。歌曲集では、澤地さんの「攻め」のアプローチと響き合い、フルート・ソナタでは、鈴木さんの明るく鮮やかな音を一層輝かせていた。どちらも佐藤さんの主張してくるピアノのテンションに合った能動的なデュオとなった。

石川夏子さんは、ヴァイオリンとのデュオでラヴェルのソナタを演奏した。2曲あるソナタのうち、ラヴェルの死後40年も経って発見されたという学生時代に書かれた遺作の方で、穏やかでたゆたうような歌が綴られて行く。この音楽に石川さんのピアノはよく合っている。穏やかな表情のなかに淡い色と艶を滲ませ、細やかに、しかし全体を大きく捉えた呼吸で、林さんが弾くヴァイオリンの柔らかな歌を優しく包み込むようだった。

最後に登場した兵藤彩子さんは、ショパンを選んだ。ピアニストを魅了するショパンだが、殆どがソロの曲なので伴奏専攻にとっては歯がゆいかもしれない。しかし今日のデュオ演奏は、ショパンに素晴らしいアンサンブル作品があることを改めて示してくれた。兵藤さんは、軽やかで流麗なタッチで、ショパンらしい華やかなピアニズムを聴かせた。チェロとのバランス感覚にも長け、深いところから熱く語りかける味わいがある新井さんのチェロと共に、全体を大きく見据え、充実した完成度の高い演奏を聴かせた。

昨年末のコンサートは聴衆が少ないのが残念だったが、今日はそこそこ席が埋まり、演奏者に大きな拍手が送られていた。こんなハイレベルで充実した演奏の数々を無料で聴けるのは嬉しい。今後もチェックしていきたい。
余談だが、前に座っていたお姐さんが演奏中もずっとスマホをいじっていて気が散った。休憩時間に注意しようと思ったが、それより前の席が空いたのでそっちに移動した。スマホは照明が明るいのでとても気になる。何しに来てるんだろうか?演奏中は切ろうよ!

東京音楽大学大学院 伴奏科1年生によるアンサンブルコンサート(2016.12.7 東京音楽大学J館スタジオ)
CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~

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