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スウェーデン放送合唱団

2017年09月17日 | pocknのコンサート感想録2017
9月14日(木)ペーター・ダイクストラ指揮 スウェーデン放送合唱団
東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル


【曲目】
1.ペルト/勝利の後
2.サンドストレム/新しい天と新しい地
3.ペンデレツキ/ベネディクトゥス
4.ペンデレツキ/アニュス・デイ
5.ヴィカンデル/すずらんの王様
6.シュニトケ/無伴奏合唱のための協奏曲

【アンコール】
1. 武満徹編曲/さくらさくら
2.スウェーデン民謡/アルヴェーン編/そして乙女は輪になって踊る
3.モーツァルト/アヴェ・ヴェルム・コルプス

都響定期の「天地創造」に続き、スウェーデン放送合唱団を今夜は単独ステージで聴いた。「完全無欠」、「完璧」とう言葉がこれほど相応しい合唱団はこの合唱団をおいて他にはあるまい、という認識をますます強くした。

プログラムの殆どは現代の宗教作品で、この合唱団特有の眩く輝く響きを浴びていたら、大聖堂のなか、夕日を浴びて一層鮮やかに堂内を照らすステンドグラスの極彩色の光や、オルガンの大音響のなかに身を置いているような気分になった。

この合唱団の響きの特徴は、自らが光を放つ光源を思わせる生々しいほどの眩さだ。これは、今夜のような非和声音が多用される現代曲で一際強烈に発揮される。ペンデレツキの「アニュス・デイ」では、「罪」を表す”peccata”という言葉で20声部にも分れるというが、ここではまさに生々しい「痛み」が迫ってきた。

合唱では、全体の響きを積極的に聴きながら自分の声を合わせるが、不協和音になると、別の音を歌う声に惑わされないように、なるべくそれを聴かないように歌ってしまい勝ちだ。しかしスウェーデン放送合唱団では、積極的に他の音を聴き、その瞬間・瞬間に現れる固有の不協和音を完全な姿で作り出す。メンバーは、協和音であれ不協和音であれ、ありとあらゆるハーモニーが醸し出す色や光度を知っているに違いない。

後半の大曲、シュニトケの「合唱のためのコンチェルト」では、多数のパートによる幾多もの組み合わせから、万華鏡の世界のような多彩な光と色を生み出す。この作品を、ここまで完璧な姿で演奏できる合唱団は他にはないだろう。圧巻の演奏を、聴衆は驚きと感動を以て大喝采とブラボーと、一部スタンディングで称えた。

ただ、ここまでの演奏を思い返してみると、スゴイことは間違いないが、この手の凄さにだんだん慣れてきた気もした。殆どが宗教作品であること、テンポがどれもゆっくりなこと、ハーモニーやテクスチャーは複雑で多彩だけれど、全部をひっくるめて観れば、なんだかみんな似ていること。その中で一番印象に残ったのは、実は唯一の宗教作品ではない「すずらんの王様」だった。他の曲目とは毛色が異なり、民話の一コマのような抒情と郷愁が入り混じった人間臭さが胸に沁みたのだろう。

同様の意味で、3曲のアンコールもとても楽しめた。難曲もいいけれど、リラックス気分で「合唱っていいなぁ」と思えるのは、やっぱりこの手の曲なのかも知れない。ポピュラーな合唱曲を集めたコンサートをやれば、この合唱団のまた別の魅力にも圧倒されるに違いない。

大野和士/都響&スウェーデン放送合唱団:「天地創造」(2017.9.11 サントリーホール)
スウェーデン放送合唱団演奏会(2015.10.20 東京オペラシティタケミツメモリアル)

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