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東京二期会オペラ劇場+NISSAY OPERA 「ナクソス島のアリアドネ」

2016年11月28日 | pocknのコンサート感想録2016
11月23日(金)東京二期会オペラ劇場 NISSAY OPERA 2016提携
【演目】
R.シュトラウス「ナクソス島のアリアドネ」
台本:フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
日生劇場

【配役】
執事長:多田羅迪夫/音楽教師:小森輝彦/作曲家:白𡈽理香/テノール歌手(バッカス):片寄純也/士官:渡邉公威/舞踏教師:升島唯博/かつら師:野村光洋/召使:佐藤 望/ツェルビネッタ:髙橋 維/プリマドンナ(アリアドネ):林 正子/ハルレキン:加耒 徹/スカラムッチョ:安冨泰一郎/トゥルファルディン:倉本晋児/ブリゲッラ:伊藤達人/ナヤーデ:冨平安希子/ドゥリヤーデ:小泉詠子/エコー:上田純子
【演出】カロリーネ・グルーバー 【装置】ロイ・スパーン 【衣装】ミヒャエラ・バールト
【演奏】
シモーネ・ヤング指揮 東京交響楽団

8年ぶりにシュトラウスのオペラ「ナクソス島のアリアドネ」を観た。会場となった日生劇場は歴史もあるし、定期的にオペラ公演も行われているが、ここでオペラを観るのは初めて。ロビーやホワイエは重厚で贅沢な雰囲気が漂い、劇場内も格調高くて非日常感を味わえる。

その日生劇場での東京二期会による「アリアドネ」は、舞台、歌手陣、オーケストラ共に、日本のオペラ上演の高いレベルを十分に示していたが、感動に結びつくまでには達しなかった。指揮のシモーネ・ヤングは、オーケストラを滑らかに歌わせ、語らせ、またシュトラウスらしい艶やかで磨かれた響きをオケから引き出していた。ただ、劇的な盛り上がりや起伏、感情の爆発や溢れ出る情緒という点では物足りない。このオペラではオケの役割が室内楽的であるため、大編成のオケがトゥッティで出す迫力とは種類は違うかも知れないが、特に後半の「オペラ」ではもっと熱いドラマを感じたかった。

カロリーネ・グルーバーの演出は、「プロローグ」では登場人物の感情や人間関係が生き生きと描かれていて楽しめたが、「オペラ」では、このオペラに精通していない身にとっては複雑過ぎて、音楽への集中力が削がれてしまった。幕切れで全員が次々にバタバタと倒れる意味は全くわからないし、ステージ上のあちこちで同時に繰り広げられる意味深なやり取りで何を表したいのかも不明。そうしたやり取りをちゃんと見よう、意味を考えよう、とすることで、気持ちが肝心の歌から逸れてしまう。オペラの演出で「謎かけ」を多用するのは勘弁してもらいたい。

一方で、歌手陣は総じて素晴らしかった。このオペラは、実に多くのキャストを要するが、若手を中心にキャスティングされた本公演の歌手たちは、誰もが自分の役を十分に歌って演じた。なかでも出色の歌を聴かせてくれたのが、アリアドネ(プリマ・ドンナ)役の林正子。出番が多い大変な役だと思うが、終始潤いのある艶やかな声で、香り高く魅惑的な歌を聴かせた。バッカスを歌った片寄純也の張りのある声と堂々とした振る舞いは、アリアドネの相手役として相応しい。

ツェルビネッタ役の髙橋維は、キャピキャピした瑞々しく活きのいい歌と演技でお客の目と耳を楽しませた。一番の聴かせ歌、「偉大なる王女様」の超高音で超絶技巧のアリアも軽々と楽々歌い、胸がすく。これにもう少しムンムンとしたお色気が加わると、更に大きな喝采を浴びることだろう。「プロローグ」でのツェルビネッタとプリマ・ドンナの駆け引きの歌と演技も堂に入っていた。ツェルビネッタに求愛するハルレキン(加耒徹)の自信に溢れ、色気もある歌も良かったし、日本人離れしたリアルな演技は見ていて気持ちよかった。

「オペラ」でアリアドネの運命を嘆き、慰める3人のニンフの歌もキレイだった。なかでもドゥリアーデ役の小泉詠子の、心の奥まで届いて来るようなクリアで彫りの深い歌が光っていた。セリフだけの執事長役を担った多田羅迪夫の貫禄と味わいも流石。流暢なドイツ語で語られる表情豊かなセリフが、くっきりと心に刻まれた。どの出演者も、ヨーロッパの主要オペラハウスに出ても遜色ないばかりか、もっと大きな拍手をもらえるのではないだろうか。

オペラ上演としては、自分の不勉強のせいもあってもう一つ楽しむまで行かなかったが、レベルの高い歌手がこんな沢山いる日本のオペラ界の今後が益々楽しみになった。

東京二期会オペラ劇場公演「ナクソス島のアリアドネ」(2008.6.26 東京文化会館)
CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~(小泉詠子が歌う)金子みすゞの詩による歌曲集~

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