5月12日(土)旭潔 バリトンリサイタル
~還暦記念~
川口総合文化センター リリア音楽ホール
【曲目】
♪ 武内俊子 詩/河村光陽 曲/船頭さん
♪ 武島羽衣 詩/滝 廉太郎 曲/花
♪ 石川啄木 詩/越谷達之助 曲/初恋
♪ 金子みすゞ 詩/高島 豊 曲/鯨法会
♪ 金子みすゞ 詩/高島 豊 曲/かりゅうど
♪ 野上 彰 詩/小林秀雄 曲/落葉松
♪ レンディーネ/望郷
♪ ラマ/静かなる歌い手
♪ フォルヴォ/彼女に告げてよ
【演奏】
Bar:旭 潔/Pf:大賀美子
♪♪♪
♪ プッチーニ/歌劇「トスカ」~第2幕
【出演】
スカルピア:旭 潔/トスカ:中前美和子/カヴァランドッシ:小林 浩/スポレッタ:鳥羽洋彰/シャルローネ:小林和洋/Pf:大賀美子
オペラに歌曲に活躍を続けるバリトン歌手の旭潔さんが、還暦を迎えた記念に開催されたリサイタルを聴いた。前半は旭さんの単独ステージで日本とイタリアの歌曲、後半は3人の歌の共演者を迎えて歌劇「トスカ」の第2幕という魅力的な2部構成。通してピアノを担当するのは大賀美子さん。
歌曲のステージでは、ひょうきんなMCを交えて、いつものようにお客を笑わせ楽しませつつ歌の世界に誘なって行く。「還暦」にちなんだちょっぴりコミカルな「船頭さん」はオープニングにふさわしく、一気に会場の空気を和ませた。大きな体の旭さんが1曲ごとに「ちょっと失礼します。。。」とステージの袖に引っ込む様子はなんとも微笑ましいが、そんな微笑ましさとはかけ離れた歌のパワーやテンションの高さには恐れ入る。今夜はどの曲でも一段と声に輝きがあり、歌には安定感があった。
旭さんは、このところ拙作のみすゞの歌曲を度々演奏してくださっているが、記念すべきこのリサイタルでも、みすゞの歌曲を2曲取り上げてくださった。「鯨法会」のこみ上げて溢れ、受け止めきれないほどのさびしさの表現に胸が熱くなり、「かりゅうど」では得意満面で意気揚々とした主人公の姿がはっきりと浮かんだ。繊細さとドラマチックなもの両面に長けた大賀さんのピアノも素晴らしかった。
イタリア歌曲では、若者の初々しく熱い心の表現が実に見事で、還暦を迎えても声も心も若々しく、健在ぶりを見せつけたが、後半のオペラのステージでは、前半のパワーとテンションを更に高め、また歌曲で聴衆に植え付けた好青年ぶりの印象から一転して、腹黒く貪欲な悪役ぶりで聴衆を震撼させた。
殆んど出ずっぱりの「トスカ」第2幕のスカリビア役だが、歌い進めば進むほど声にますます凄みが出るほどの持続力を発揮。一曲ごとに中座していた前半では、短い一曲に全力投入していたのが、長丁場のひとつの幕ではこれを「一曲」としてテンションを保ち続けることも最初から計算済みだったことがわかった。
他の登場人物も皆健闘していていたが、なかでも去年のホールオペラ「蝶々夫人」でも素晴らしい歌が記憶に残る中前さんが、トスカ役でも芯と張りのある美しい声で、気高く熱のこもった歌を聴かせてくれ、とりわけ印象に残った。アリア「歌に生き、恋に生き」は大変な熱唱で、聴衆の心を熱く掴んだ。
登場人物は舞台衣装を身につけ、小道具も備えたステージではオベラの臨場感も高め、本格的なステージ上演を観ているような気分になった。そこには、歌い手たちの健闘と共に、歌にぴったりと合わせつつ、ドラマチックで緊迫したリアルな音像を届けてくれたピアニスト、大賀さんの力も大きい。これまのホールオペラでの実績も含め、このシリーズに欠かせない存在となっている。
~還暦記念~
川口総合文化センター リリア音楽ホール
【曲目】
♪ 武内俊子 詩/河村光陽 曲/船頭さん
♪ 武島羽衣 詩/滝 廉太郎 曲/花
♪ 石川啄木 詩/越谷達之助 曲/初恋
♪ 金子みすゞ 詩/高島 豊 曲/鯨法会
♪ 金子みすゞ 詩/高島 豊 曲/かりゅうど
♪ 野上 彰 詩/小林秀雄 曲/落葉松
♪ レンディーネ/望郷
♪ ラマ/静かなる歌い手
♪ フォルヴォ/彼女に告げてよ
【演奏】
Bar:旭 潔/Pf:大賀美子
♪ プッチーニ/歌劇「トスカ」~第2幕
【出演】
スカルピア:旭 潔/トスカ:中前美和子/カヴァランドッシ:小林 浩/スポレッタ:鳥羽洋彰/シャルローネ:小林和洋/Pf:大賀美子
オペラに歌曲に活躍を続けるバリトン歌手の旭潔さんが、還暦を迎えた記念に開催されたリサイタルを聴いた。前半は旭さんの単独ステージで日本とイタリアの歌曲、後半は3人の歌の共演者を迎えて歌劇「トスカ」の第2幕という魅力的な2部構成。通してピアノを担当するのは大賀美子さん。
歌曲のステージでは、ひょうきんなMCを交えて、いつものようにお客を笑わせ楽しませつつ歌の世界に誘なって行く。「還暦」にちなんだちょっぴりコミカルな「船頭さん」はオープニングにふさわしく、一気に会場の空気を和ませた。大きな体の旭さんが1曲ごとに「ちょっと失礼します。。。」とステージの袖に引っ込む様子はなんとも微笑ましいが、そんな微笑ましさとはかけ離れた歌のパワーやテンションの高さには恐れ入る。今夜はどの曲でも一段と声に輝きがあり、歌には安定感があった。
旭さんは、このところ拙作のみすゞの歌曲を度々演奏してくださっているが、記念すべきこのリサイタルでも、みすゞの歌曲を2曲取り上げてくださった。「鯨法会」のこみ上げて溢れ、受け止めきれないほどのさびしさの表現に胸が熱くなり、「かりゅうど」では得意満面で意気揚々とした主人公の姿がはっきりと浮かんだ。繊細さとドラマチックなもの両面に長けた大賀さんのピアノも素晴らしかった。
イタリア歌曲では、若者の初々しく熱い心の表現が実に見事で、還暦を迎えても声も心も若々しく、健在ぶりを見せつけたが、後半のオペラのステージでは、前半のパワーとテンションを更に高め、また歌曲で聴衆に植え付けた好青年ぶりの印象から一転して、腹黒く貪欲な悪役ぶりで聴衆を震撼させた。
殆んど出ずっぱりの「トスカ」第2幕のスカリビア役だが、歌い進めば進むほど声にますます凄みが出るほどの持続力を発揮。一曲ごとに中座していた前半では、短い一曲に全力投入していたのが、長丁場のひとつの幕ではこれを「一曲」としてテンションを保ち続けることも最初から計算済みだったことがわかった。
他の登場人物も皆健闘していていたが、なかでも去年のホールオペラ「蝶々夫人」でも素晴らしい歌が記憶に残る中前さんが、トスカ役でも芯と張りのある美しい声で、気高く熱のこもった歌を聴かせてくれ、とりわけ印象に残った。アリア「歌に生き、恋に生き」は大変な熱唱で、聴衆の心を熱く掴んだ。
登場人物は舞台衣装を身につけ、小道具も備えたステージではオベラの臨場感も高め、本格的なステージ上演を観ているような気分になった。そこには、歌い手たちの健闘と共に、歌にぴったりと合わせつつ、ドラマチックで緊迫したリアルな音像を届けてくれたピアニスト、大賀さんの力も大きい。これまのホールオペラでの実績も含め、このシリーズに欠かせない存在となっている。