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新国立劇場「夜鳴きうぐいす」&「イオランタ」

2021年04月10日 |  pocknのコンサート感想録2021
4月8日(木)新国立劇場オペラ公演

新国立劇場


【演目1】
ストラヴィンスキー/「夜鳴きうぐいす」
【配役】
夜鳴きうぐいす:三宅理恵/料理人:針生美智子/漁師:伊藤達人/中国の皇帝:吉川健一/侍従:ヴィタリ・ユシュマノフ/僧侶:志村文彦/死神:山下牧子/三人の日本の使者たち:高橋正尚、濱松孝行、青地英幸

【演目2】
チャイコフスキー/「イオランタ」
【配役】
ルネ:妻屋秀和/ロベルト:井上大聞/ヴォデモン伯爵:内山信吾/エブン=ハキア:ヴィタリ・ユシュマノフ/アルメリック:村上公太/ベルトラン:大塚博章/イオランタ:大隅智佳子/マルタ:山下牧子/ブリギッタ:日比野幸/ラウラ:富岡明子

【演出・美術・衣裳】ヤニス・コッコス
【アーティスティック・コラボレーター】アンヌ・ブランカール
【照 明】ヴィニチオ・ケリ
【映 像】エリック・デュラント
【振 付】ナタリー・ヴァン・パリス
【演奏】
高関 健 指揮 東京フィルハーモニー交響楽団/新国立劇場合唱団

新国立劇場がレパートリー拡充を目指して一年おきに行っているという、新制作によるダブルビル上演の第2弾。当初は外国勢中心のキャストが組まれていたが、僕が公演を知ったときはこのメンバーでの上演が決まっていた。但し、演出をはじめスタッフ陣は当初通りの海外組がリモートでそれぞれの務めを果たした。
「レパートリー拡充」ということで、演目は上演される機会が少なく、僕にとっても未知の作品。特にチャイコフスキーは、音楽を聴くこと自体初めてだったが、とても楽しめ、感動へ導いてくれた。

「夜鳴きうぐいす」
京劇、歌舞伎、メルヘン… 様々な要素が合わさったような舞台で、カラフルで華やか、異国情緒もあり、視覚的に鮮やかなインパクトを受けた。森をイメージした木々の装置が、連動して動くことで空間の広がりも感じさせる。時間と共に変化する照明の妙、プロジェクションマッピングによる多彩なアニメーション、バレエやマイムも加わって、ポップアートのように美しくて刺激的な舞台が、観る者のファンタジーやイマジネーションを膨らませた。

ストラヴィンスキーの音楽は、クライマックスがなく淡々と進んで行く印象だったが、高関健指揮の東フィルは、透明で色彩感のある響きでメルヘンの世界を巧みに描いた。

歌手陣のレベルも高かった。最も印象に残ったのは漁師役の伊藤達人。明晰で良く通る声が、語り手として全体像をくっきりと印象付けた。主役のナイチンゲール役、三宅理恵は、声は美しいし安定感もある。滑らかな歌い回しで舞台に花を咲かせたが、更に妖しげな魅惑や強烈な光で、他の歌手を圧倒する存在感が欲しい。その片鱗を聴かせたのは、病に再び伏せた王の元に戻った時の歌声で、強い光を感じた。合唱は思ったより地味な扱いだったが、そのなかでしっかりと存在感を示していた。

「イオランタ」
ポップでカラフルな前作とは対照的に、ネイビー系の落ち着いた色調のステージで愛のドラマが繰り広げられた。台本は単純だが、愛に溢れ、人間の奥深い感情を巧みに音にしたチャイコフスキーの音楽の魅力を存分に味わった。盲目をネガティブに捉える台本は現代では差別的とも云えるが、それを越えた愛と寛容と思いやりが込められ、それぞれの登場人物に魅力的な歌を与え、美しい合唱も入り、起伏に富み甘美でドラマがある素晴らしい作品だ。

高関健/東フィルの演奏が素晴らしかった。要所を押さえ、雄弁で官能的な美しさを湛えていた。冒頭から豊饒の響きが甘やかで美しい。高関は作品をきっちりと纏める職人技に長けた指揮者というイメージだったが、今夜は熱く色気のある濃厚な音も聴かせた。フレーズの入りから結びまでを丁寧に、しなやかな線で美しい佇まいに仕上げて行く。滑らかで艶やかでパワフルな演奏を聴かせた東フィルも見事で、何度もトリハダが立った。高関の新たな魅力を発見し、高関の指揮でこの作品を聴けて良かったと思った。

歌手陣も概して高いレベル。なかでもずば抜けていたのが、タイトルロールのイオランタを歌った大隅智佳子。艶やかな声は伸びがあってよく通り、光への憧れ、ヴォデモンへの愛、父への愛情など溢れる思いを、大きな包容力で香しく歌い上げ、まさにタイトルロールに相応しいスポットライトが当たっているよう。大隈のイオランタを聴けてよかった。去年の「夏の夜の夢」のヘレナも素晴らしかったが、大隈は今や新国の看板プリマドンナだ。

名医としての信頼感を伝えたヴィタリ・ユシュマノフの落ち着いた含蓄に富んだ歌や、レネ王役の妻屋秀和の愛と寛容と貫禄を感じさせる懐の深い歌も好印象。イオランタの相手役として重要な役のヴォデモンを受け持った内山信吾の歌はかなり難ありと云わざるを得ないが、切迫感とかひたむきさは伝わってきた。

このオペラ、もっと上演されていい。終演は10時半に迫っていたが、熱くて大きな拍手が長く続いた。心の中で何度もブラボーと叫んだ。

「夏の夜の夢」 ~2020.10.12 新国立劇場~
東京二期会「フィデリオ」 ~2020.9.4 新国立劇場~
西村朗「紫苑物語」 ~2019.2.20 新国立劇場~

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