4月12日(月)川口成彦(フォルテピアノ)/古楽オーケストラ 《ラ・ムジカ・コッラーナ》
~ピリオド楽器で聴くモーツァルト&ベートーヴェン~
~東京・春・音楽祭 2021~
東京文化会館小ホール
【曲目】
1.モーツァルト/J.C.バッハのソナタによる協奏曲 第2番 ト⻑調 K.107-2
2.モーツァルト/ピアノ協奏曲 第12番 イ⻑調 K.414
3.C.P.E.バッハ/幻想曲 へ⻑調 Wq.59-5(フォルテピアノ・ソロ)
4.ベートーヴェン/V.ラハナー編/ピアノ協奏曲 第2番 変ロ⻑調 Op.19
【アンコール】
♪ ハイドン/ピアノ協奏曲第4番から 第2楽章
ラ・ムジカ・コッラーナ(Vn:丸山 韶、廣海史帆/Vla:佐々木梨花/Vc:島根朋史/ヴィオローネ:諸岡典経)
川口成彦は、去年の長くて辛いコンサートロス後、最初に行ったコンサートで出会ったピアニスト。コンサートロス状態でなければなかったであろうこの出会い以来、川口は僕にとって注目のピアニストとなった。
「協奏曲の夕べ」と題された今夜の演奏会では、オケパートを最大5人による弦楽アンサンブルが担当。物足りないかもとも思ったが、フォルテピアノ(1795年ワルター製のコピー楽器)と弦によるアンサンブルは、それまで抱いていたピアノコンチェルトのイメージに新たな認識と感銘が加わる貴重な機会を与えてくれた。それは、ピアノ協奏曲と言えば、ピアノとオケがホール全体を豊かな音響で満たすパワフルで華麗なシーンが魅力のひとつと認識していたが(モーツァルトのコンチェルトでさえ)、「大きな音を出す」ことと全く無縁の、全く別の世界があることを教えてくれた。
川口と弦楽アンサンブルによる合奏は、全体が天女の羽衣が風にたなびいて揺れているようにデリケートで優美。川口は微笑みを浮かべつつ、花から花へと移ろう蝶のように自由に羽ばたき、軽妙洒脱でエレガントなピアノを奏でる。優しいそよ風や囁きのようで、両手で温めた音をふわりとオケへ投げかけ、それをオケがふわっと受け止めるやり取りが、テレパシーのような心と心の対話となる。時に毅然と凛々しく立ち上がるフレーズも力むことなく、くっきりと心に刻まれる。
少年モーツァルトが敬愛したクリスチャン・バッハのソナタを編曲したコンチェルトは、ピアノがアンサンブルの1パートとして室内楽的なやり取りを繰り広げた。モーツァルト的なチャーミングさや優美さを具え、とりわけ第2楽章のバリエーションでは、淡い色彩がデリケートで多彩に変化する美しさが忘れがたい。
モーツァルトの比較的初期のコンチェルトでの楽しげで愉悦に満ちた演奏も、ソロで披露したエマヌエル・バッハの幻想曲の、曲名に相応しいファンタジー溢れる即興的な演奏も良かった。この時代に生まれた音楽にはあまり知られていない名品がたくさんあることも伝えてくれた。
最後のベートーヴェンは、囁きやほほ笑みに、生き生きとした雄弁なアプローチもくっきりと加わり、充実の極み。本来は管楽器も活躍するオケパートだが、弦楽アンサンブルだけで何の違和感も不足感もなく、各プレイヤーの能動的なアプローチがより身近に語りかけ、普段は気づかない魅力も伝えてくれた。第2楽章、最弱音で奏でた静謐な世界は、神々しいほど美しかった。この弱音の美しいシーンはこの曲だけでなく、演奏会の随所で聴かれた。
川口さんは、フォルテピアノという楽器の真価を、説明など介さず、理屈抜きに感覚でストレートに伝え、聴く者を幸せな気持ちへ誘(いざな)ってくれた。
ベートーヴェン、交響曲前夜。~2020.11.14 北とぴあつつじホール~
超久々のコンサート(江口 玲&川口成彦 ピアノリサイタル)~2020.6.19 紀尾井ホール~
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3.C.P.E.バッハ/幻想曲 へ⻑調 Wq.59-5(フォルテピアノ・ソロ)
4.ベートーヴェン/V.ラハナー編/ピアノ協奏曲 第2番 変ロ⻑調 Op.19
【アンコール】
♪ ハイドン/ピアノ協奏曲第4番から 第2楽章
ラ・ムジカ・コッラーナ(Vn:丸山 韶、廣海史帆/Vla:佐々木梨花/Vc:島根朋史/ヴィオローネ:諸岡典経)
川口成彦は、去年の長くて辛いコンサートロス後、最初に行ったコンサートで出会ったピアニスト。コンサートロス状態でなければなかったであろうこの出会い以来、川口は僕にとって注目のピアニストとなった。
「協奏曲の夕べ」と題された今夜の演奏会では、オケパートを最大5人による弦楽アンサンブルが担当。物足りないかもとも思ったが、フォルテピアノ(1795年ワルター製のコピー楽器)と弦によるアンサンブルは、それまで抱いていたピアノコンチェルトのイメージに新たな認識と感銘が加わる貴重な機会を与えてくれた。それは、ピアノ協奏曲と言えば、ピアノとオケがホール全体を豊かな音響で満たすパワフルで華麗なシーンが魅力のひとつと認識していたが(モーツァルトのコンチェルトでさえ)、「大きな音を出す」ことと全く無縁の、全く別の世界があることを教えてくれた。
川口と弦楽アンサンブルによる合奏は、全体が天女の羽衣が風にたなびいて揺れているようにデリケートで優美。川口は微笑みを浮かべつつ、花から花へと移ろう蝶のように自由に羽ばたき、軽妙洒脱でエレガントなピアノを奏でる。優しいそよ風や囁きのようで、両手で温めた音をふわりとオケへ投げかけ、それをオケがふわっと受け止めるやり取りが、テレパシーのような心と心の対話となる。時に毅然と凛々しく立ち上がるフレーズも力むことなく、くっきりと心に刻まれる。
少年モーツァルトが敬愛したクリスチャン・バッハのソナタを編曲したコンチェルトは、ピアノがアンサンブルの1パートとして室内楽的なやり取りを繰り広げた。モーツァルト的なチャーミングさや優美さを具え、とりわけ第2楽章のバリエーションでは、淡い色彩がデリケートで多彩に変化する美しさが忘れがたい。
モーツァルトの比較的初期のコンチェルトでの楽しげで愉悦に満ちた演奏も、ソロで披露したエマヌエル・バッハの幻想曲の、曲名に相応しいファンタジー溢れる即興的な演奏も良かった。この時代に生まれた音楽にはあまり知られていない名品がたくさんあることも伝えてくれた。
最後のベートーヴェンは、囁きやほほ笑みに、生き生きとした雄弁なアプローチもくっきりと加わり、充実の極み。本来は管楽器も活躍するオケパートだが、弦楽アンサンブルだけで何の違和感も不足感もなく、各プレイヤーの能動的なアプローチがより身近に語りかけ、普段は気づかない魅力も伝えてくれた。第2楽章、最弱音で奏でた静謐な世界は、神々しいほど美しかった。この弱音の美しいシーンはこの曲だけでなく、演奏会の随所で聴かれた。
川口さんは、フォルテピアノという楽器の真価を、説明など介さず、理屈抜きに感覚でストレートに伝え、聴く者を幸せな気持ちへ誘(いざな)ってくれた。
ベートーヴェン、交響曲前夜。~2020.11.14 北とぴあつつじホール~
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