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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

クァルテット・エクセルシオ

2016年10月28日 | pocknのコンサート感想録2016
10月25日(火)クァルテット・エクセルシオ
(Vn:西野ゆか、山田百子/Vla:吉田有紀子/Vc:大友肇)
 
弦楽四重奏の旅 #4 ~浪漫の風に帆をまかせ~
サントリーホールブルーローズ(小ホール)
【曲目】
1. ヴォルフ/イタリアン・セレナーデ
2.ヴェルディ/弦楽四重奏曲ホ短調
3. プッチーニ/弦楽四重奏曲「菊」嬰ハ短調
4.シューマン/弦楽四重奏曲第3番イ長調 Op.41-3
【アンコール】
シューマン/トロイメライ

弦楽四重奏のコンサートにはよく出かけるので、カルテット・エクセルシオの名前は知っていたし、一度聴きたいと思っていた。2013年と今年、草津国際音楽アカデミー&フェスティバルでこのカルテットのメンバーが入った演奏は聴いているが、単独の演奏はまだ聴いたことがなかった。最近、インタビュー記事や演奏評などを読んでこのカルテットへの興味が更に膨らみ、今夜、初めてエクセルシオの演奏会を聴くことになった。イタリアものとドイツの作品を組み合わせたプログラムにも引かれた。外来カルテットはなかなかやってくれないこうしたプログラムを持って来れるのも、常設で日本を拠点に活動しているカルテットの強み。楽しみに出かけ、その期待を更に大きく上回るコンサートになった。

女性3人はリラの色のエレガントな衣装で揃えて登場。(男性の大友さんも、せめて胸ポケットのハンカチぐらい合わせればいいのにと思っていたら、後半ではリラ色のハンカチに差し替えていた。今度は是非中のシャツもこの色で!)

最初はヴォルフ。演奏が始まってすぐに、響きの美しさに耳を引かれた。柔らかいけれどクリア、上品な香りを漂わせていながら、ヴォルフの歌曲でよく聴かれるアイロニカルなクセも覗かせる。ファーストヴァイオリンの西野さんの端正で瑞々しい演奏が、アンサンブル全体に潤いをもたらし、他のパートとのやり取りも軽妙に進む。生き生きとして、機転が効いて、常に聴き手に能動的な働きかけを行い、1曲目にしてもうこのカルテットの魅力に掴まれた。

続くヴェルディのカルテットは初めて聴くかも。緻密な作りの音楽で、ドラマチックなオペラの名作の数々を残したヴェルディの堅実な一面を見る思いがした。とは言え、そこからは情熱も伝わるし、オペラの場面転換のようにいろいろなシーンを、多彩なテンションや表情で楽しませてくれた。ここでもエクセルシオの響きの美しさが際立つ。そしてアンサンブルのしっくり感。この音を聴いていたら「美味しい音」という言葉が浮かんだ。4種類の食材の味が最も引き立つように名シェフが仕上げた逸品。それを味わえる幸せ。上3声とは異なる動きをすることが多いチェロを弾く大友さんの、詩情溢れる安定感のある演奏が、アンサンブルに深みと奥行きを与えていた。

後半の1曲目、切なく物悲しく、抒情味溢れるプッチーニの「菊」に続いて演奏されたシューマンの弦楽四重奏曲第3番では、エクセルシオの更に驚くべき底力を堪能した。緻密で綿密、柔らかなアンサンブルは、高級なシルクを紡いで行くよう。様々な役割を担っているそれぞれのパートの、その役割の受け渡し、交替するタイミングが、実に自然な呼吸のなかで行われ、身のこなしが空気のように軽やかで匂やかなのだ。そのためにアンサンブルにはわずかな穴も空かず、優美で滑らかに舞う。

第1楽章に漂う詩情と哀愁、エコーの効果が心を揺さぶってきた。第2楽章終盤の変奏では、力強くしなやかにパトスを迸らせ、曲が進むほどにグイグイと引きずり込まれて行く。集中力から生まれるパワーを感じた。そして第3楽章は、シューマンのプライベートな感情を綴る限定された世界ではなく、もっと深遠で思索的。これを聴いたら、エクセルシオの演奏でベートーヴェンの晩年のカルテットを聴きたくなった。最終楽章は再び快活でしなやかに、次々にやってくる波を軽快に乗り超え、ポーズを決めながら、細部は緻密に噛み合い、高いテンションを持続させて演奏を締めた。

心暖まるアンコールで演奏会を聴き終えて、こんな素晴らしい常設カルテットが日本にあったことを遅れ馳せながら発見した喜びに浸った。クァルテット・エクセルシオ、素晴らしい!! 近いうちに絶対にまた聴きに来ようと思う。
CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~

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