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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

ヨハネス・モーザー チェロリサイタル

2008年10月14日 | pocknのコンサート感想録2008
10月14日(火)ヨハネス・モーザー(Vc)/若林 顕(Pf)
~エスポワールスペシャル8~
トッパンホール

【曲目】
1.ベートーヴェン/モーツァルトのオペラ《魔笛》の主題による7つの変奏曲 変ホ長調 WoO.46
2.ショスタコーヴィチ/チェロ・ソナタ ニ短調 Op.40
3.武満 徹/オリオン (1984)
4.ブラームス/チェロ・ソナタ第1番 ホ短調 Op.38
【アンコール】
サン=サーンス/白鳥

渋くてカッコいいチラシとプログラミングに誘われて出かけたヨハネス・モーザーというチェリストのリサイタル。よく聞く名前のような気がしていたが日本では初リサイタルとのこと。

ベートーヴェンの出だしの膨らみのある温かで包み込むような第一声で心を捕まれた。モーザーのチェロは太い線と軟らかなタッチで音楽を練り上げ、朗々と歌い上げる。長身の体で長い腕を大きく使って奏でる表現はとてもダイナミックではあるが大味になることはなく、むしろ朗々と響かせる演奏もありと思えるところを弱音で軟らかく丁寧に描いたりもするなど、音楽の流れを大切にし、そこに寄り添う誠実さがある。

リサイタルで最も感銘を受けたのは武満徹の「オリオン」。目に見える風景は静寂そのものという世界の中で、例えばちょっとした風のそよぎとか、ちょっとした人の表情の変化がそれを見た人の心を大きく動かすような、内面にのみ起こるドラマを、柔軟で深い演奏でピュアに熱く、くっきりと伝える。極限まで集中力を高めた能楽師のような孤高の世界が感じられた。日本人の心の奥底にあるものを浮かび上がらせる武満の世界を外国人のモーザーが、日本人以上と思えるほどに表出したこともすごいが、そもそも若い外国の演奏家が武満の作品をリサイタルに取り上げたことは嬉しい。

この曲ではチェロの背景となり、またチェロを照らす光となるピアノパートを受け持った若林顕の演奏も素晴らしかった。清澄な音色と響きで、エモーショナルなものを内面に秘めたチェロとは対照的な「静」なる世界を見事に描いていて、これを聴いたら武満のピアノ作品も若林の演奏で聴いてみたくなった。

締めのブラームスはこの武満の後に続けて演奏され、出だしは武満の世界やら微分音の余韻を引きずっているように感じたが、間もなくブラームスの世界へと切り替わった。両端楽章はモーザーらしいダイナミックな表現と柔らかく丁寧な表情を駆使して雄弁な演奏を展開したが、中間の第2楽章ではもっとさすらったり、道から外れたりといった意外性とか即興性が欲しかった。

感想を記さなかったショスタコーヴィチだが、この曲では不覚にもちょっと眠くなってしまった。気がつくと目が閉じていて、次に開いたときは「もう閉じるものか」と思っているうちにまた閉じて… という情けない状態だった。トッパンホールの座席はフワフワで体がズーンと椅子に沈んで心地いいせいかどうも眠くなることが多い。だが、モーザーの演奏は骨太でエネルギッシュでとても良いショスタコだったと思う。

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2008-10-17 17:07:27
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