6月28日(金)トリオ・ヴァンダラー
~Pf:ヴァンサン・コック/Vn:ジャン=マルク・フィリップ=ヴァルジャベディアン/Vc:ラファエル・ピドゥ~
ピアノ・トリオ・フェスティヴァル2024-I
紀尾井ホール
【曲目】
1.ブラームス/ピアノ三重奏曲第1番ロ長調 Op.8(1854年初版)
2.シューベルト/ピアノ三重奏曲第2番変ホ長調 Op.100, D929
【アンコール】
♪ ベートーヴェン/ピアノ三重奏曲第6番変ホ長調Op.70~第2楽章アレグレット
トリオ・ヴァンダラーの存在は最近になって気になって初めて演奏会を訪れたが、もう35年もこのメンバーで活躍を続けているトリオだと知った。「さすらい人」を意味するドイツ語の名を冠したピアノトリオということで、奔放な演奏が聴けるのではと想像していたら、実際は揺るぎのない安定感のある緊密なアンサンブルを聴かせるトリオという印象を強く持った。
3人のメンバーは、顔の表情や演奏の仕草はおろか、アイコンタクトも控えめで、チェロのピドゥなんかカラヤンみたいにずっと目を閉じて弾いているようにも見えた。ピドゥはピアノに完全に背を向けて客席に真っ直ぐ向いて座っているので、ピアノのコックとのアイコンタクトは皆無。コックはときおり2人の方へ視線を投げるが、ヴァイオリンのヴァルジャベディアンもそれへの反応は少ない。こんなポーカーフェイスでもアンサンブルはピタリと合ってビクともせず、常に確信を持ってあるべき音を出し、あるべき方向へ進む。3人の音は一点に集中して明確で力強い方向性を示し、能動的な演奏を繰り広げた。きっとかすかな呼吸や気配を敏感に感じ合って合わせる術を身につけているのだろう。
3人がそれぞれの個性を強調するタイプではないトリオだが、そのなかでピアノのコックの端正で磨かれた流麗な響きが浮き立ち、アンサンブルに色と光、香りを与え、ヴァイオリンとチェロは職人的な堅実さと、自信に溢れた柔軟でしなやかな演奏で骨太なアンサンブルの骨格を形作っていた。
前半のブラームスのトリオはブラームスが晩年に大きな改訂を施した版ではなく、演奏機会が稀な20歳のときに書いたオリジナルバージョンを採用。様々な作曲技法が施されたパーツが盛り沢山で馴染みのないフレーズも多く登場したが、トリオ・ヴァンダラーの緻密に楽曲を掘り下げる姿勢が功を奏し、どんなフレーズも意思を持ち、常に説得力のある迫真の演奏で心を捉えた。
シューベルトのトリオは、このトリオの名前のような「さすらい人」的な演奏というよりも、もっと地にしっかり根が張った安定した演奏だった。多彩なフレーズどれもが有機的に繋がって明確な方向性が示し、演奏が進むにつれて熱を帯び、終楽章では素晴らしいクライマックスへと上り詰め、聴き手の心を高揚させた。
この安定感、統一された方向性、一体感は、常設トリオとして長年共に活動を続けて来たことから生まれたものなのだろう。日本の葵トリオの演奏スタイルとも共通点を感じたトリオ・ヴァンダラー、アンコールのベートーヴェンを聴いて、まだまだ色々なピアノトリオの名曲をこのトリオで聴いてみたくなった。
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♪ ベートーヴェン/ピアノ三重奏曲第6番変ホ長調Op.70~第2楽章アレグレット
トリオ・ヴァンダラーの存在は最近になって気になって初めて演奏会を訪れたが、もう35年もこのメンバーで活躍を続けているトリオだと知った。「さすらい人」を意味するドイツ語の名を冠したピアノトリオということで、奔放な演奏が聴けるのではと想像していたら、実際は揺るぎのない安定感のある緊密なアンサンブルを聴かせるトリオという印象を強く持った。
3人のメンバーは、顔の表情や演奏の仕草はおろか、アイコンタクトも控えめで、チェロのピドゥなんかカラヤンみたいにずっと目を閉じて弾いているようにも見えた。ピドゥはピアノに完全に背を向けて客席に真っ直ぐ向いて座っているので、ピアノのコックとのアイコンタクトは皆無。コックはときおり2人の方へ視線を投げるが、ヴァイオリンのヴァルジャベディアンもそれへの反応は少ない。こんなポーカーフェイスでもアンサンブルはピタリと合ってビクともせず、常に確信を持ってあるべき音を出し、あるべき方向へ進む。3人の音は一点に集中して明確で力強い方向性を示し、能動的な演奏を繰り広げた。きっとかすかな呼吸や気配を敏感に感じ合って合わせる術を身につけているのだろう。
3人がそれぞれの個性を強調するタイプではないトリオだが、そのなかでピアノのコックの端正で磨かれた流麗な響きが浮き立ち、アンサンブルに色と光、香りを与え、ヴァイオリンとチェロは職人的な堅実さと、自信に溢れた柔軟でしなやかな演奏で骨太なアンサンブルの骨格を形作っていた。
前半のブラームスのトリオはブラームスが晩年に大きな改訂を施した版ではなく、演奏機会が稀な20歳のときに書いたオリジナルバージョンを採用。様々な作曲技法が施されたパーツが盛り沢山で馴染みのないフレーズも多く登場したが、トリオ・ヴァンダラーの緻密に楽曲を掘り下げる姿勢が功を奏し、どんなフレーズも意思を持ち、常に説得力のある迫真の演奏で心を捉えた。
シューベルトのトリオは、このトリオの名前のような「さすらい人」的な演奏というよりも、もっと地にしっかり根が張った安定した演奏だった。多彩なフレーズどれもが有機的に繋がって明確な方向性が示し、演奏が進むにつれて熱を帯び、終楽章では素晴らしいクライマックスへと上り詰め、聴き手の心を高揚させた。
この安定感、統一された方向性、一体感は、常設トリオとして長年共に活動を続けて来たことから生まれたものなのだろう。日本の葵トリオの演奏スタイルとも共通点を感じたトリオ・ヴァンダラー、アンコールのベートーヴェンを聴いて、まだまだ色々なピアノトリオの名曲をこのトリオで聴いてみたくなった。
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