12月10日(水)イザベル・ファウスト(Vn)
ジョヴァンニ・アントニーニ指揮 イル・ジャルディーノ・アルモニコ
東京オペラシティコンサートホール:タケミツメモリアル
【曲目】
1.モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第1番変ロ長調 K.207
2.モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調 K.216
3.モーツァルト/アイネ・クライネ・ナハトムジーク K.525
4.モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調 K.218
【アンコール】
♪ モーツァルト/ディヴェルティメントニ長調 K.136~第3楽章
♪ モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第1番変ロ長調 K.207~第3楽章
僕が度々聴いているヴァイオリニスト、イザベル・ファウストによるモーツァルトの協奏曲全曲演奏会の第1夜。オケはイル・ジャルディーノ・アルモニコ。いつ聴いても驚きと感動を与えてくれるファウストだが、今夜も次元が違うと云いたくなる世界へと導かれた。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲って、期待したほど残るものがあまりないことが殆ど、というか、感動した演奏に出逢った覚えがないのだが、ファウストなら新たなインパクトを与えてくれるのではと期待して出かけた。
ファウストは、そんな期待の更に上のモーツァルトを体験させてくれた。モーツァルトのコンチェルトのあるがままの魅力をこんなにも軽々と引き出せるヴァイオリニストは、ファウストを置いて他にいないと云っても言い過ぎではないだろう。演奏機会が少ない1番も含めて、どの曲も本当に名曲だと感じることが出来たのは、演奏に拠るところも大きいと思う。ファウストの依頼でアンドレアス・シュタイアーが作曲したというカデンツァもそれぞれが個性的で、かつそれぞれの楽曲にしっくりはまり、見事だった。
ファウストのヴァイオリンを聴いていると、音楽とはこんなにも生きているんだ、とつくづく実感させられる。全てのフレーズ、全ての音が陳腐とは真逆の、今この場で生まれたように新鮮な生気に満ち溢れる。表現方法はあくまで自然で、研ぎ澄まされた音色の凛とした美しさは格別ながら、ストイックと云えるほど自らの演奏を誇示するところが微塵も感じられない。それでいて聴き手の心にここまで刺さり、幸せにしてくれるところにファウストの凄さがある。ファウストは、フレーズを繰り返すときに装飾音を入れたり、音の並びに変化を与えたりといった目に見える細工を施すこともあり、ともすれば作為的に感じてしまうこうした細工が、ファウストの意図というよりも、ヴァイオリンの名手でもあったモーツァルト自らのインスピレーションによって湧き出た自然でさりげない音楽表現として伝わって来るのだ。こうしたごくさり気ない働きかけ、それも内面から自然発生的に湧いて来る働きかけ全てが連なって一つの線となり、音楽としてのパワーを高め、聴き手の心を動かさずにはおかないのだろう。
ファウストはオーケストラのトゥッティでのヴァイオリンパートも一緒に演奏する。いかにオケと一緒に音楽を作ろうとしているかの表れだろう。そしてアントニーニ指揮イル・ジャルディーノ・アルモニコの素晴らしいこと!こちらもファウストのヴァイオリン同様に自然な息遣いでさりげなく、しかし生き生きと要所を的確に捉えて嬉々として音楽を奏でる。イザベルとオケのメンバーが互いに同じ音楽を感じている幸福感が演奏から迸り出て、マイナスイオンを振りまき、聴き手もそれを浴びて快い愉悦に浸るのだ。
オケ単独で演奏された「アイネ・クライネ」は僕が幼い頃から大好きで聴きまくっていた曲だけに、滅多な演奏では共感しないが、今夜の演奏には惚れ込んでしまった。心の底から沸き上がる感情を捉えて刹那的な衝動も加わり、アグレッシブかつデリケートな喜び溢れる演奏に心酔。アンコールでファウストもトゥッティに加わったディヴェルティメントでも同様の感情が湧き上がった。このオケとイザベルは真に共感しあえる理想的な組み合わせではないだろうか。いつまでも聴いていたかった。これからもレパートリーを広げて共演を続け、また近いうちに来日してもらいたい。
鈴木優人指揮N響(Vn:イザベル・ファウスト)(2024.6.20 サントリーホール)
イザベル・ファウスト/クリスティン・フォン・デア・ゴルツ/クリスティアン・ベザイデンホウト(2023.10.10 王子ホール)
イザベル・ファウストによるバッハの無伴奏(2021.11.17 東京オペラシティ)
ファウスト&メルニコフ(2021.1.27 王子ホール)
ファウスト&メルニコフ(2019.10.29 王子ホール)
ファウスト&ケラス&メルニコフ(2017.2.23 王子ホール)
イザベル・ファウスト&クリスティアン・ベザイデンホウト(2016.10.11 王子ホール)
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2.モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調 K.216
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♪ モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第1番変ロ長調 K.207~第3楽章
僕が度々聴いているヴァイオリニスト、イザベル・ファウストによるモーツァルトの協奏曲全曲演奏会の第1夜。オケはイル・ジャルディーノ・アルモニコ。いつ聴いても驚きと感動を与えてくれるファウストだが、今夜も次元が違うと云いたくなる世界へと導かれた。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲って、期待したほど残るものがあまりないことが殆ど、というか、感動した演奏に出逢った覚えがないのだが、ファウストなら新たなインパクトを与えてくれるのではと期待して出かけた。
ファウストは、そんな期待の更に上のモーツァルトを体験させてくれた。モーツァルトのコンチェルトのあるがままの魅力をこんなにも軽々と引き出せるヴァイオリニストは、ファウストを置いて他にいないと云っても言い過ぎではないだろう。演奏機会が少ない1番も含めて、どの曲も本当に名曲だと感じることが出来たのは、演奏に拠るところも大きいと思う。ファウストの依頼でアンドレアス・シュタイアーが作曲したというカデンツァもそれぞれが個性的で、かつそれぞれの楽曲にしっくりはまり、見事だった。
ファウストのヴァイオリンを聴いていると、音楽とはこんなにも生きているんだ、とつくづく実感させられる。全てのフレーズ、全ての音が陳腐とは真逆の、今この場で生まれたように新鮮な生気に満ち溢れる。表現方法はあくまで自然で、研ぎ澄まされた音色の凛とした美しさは格別ながら、ストイックと云えるほど自らの演奏を誇示するところが微塵も感じられない。それでいて聴き手の心にここまで刺さり、幸せにしてくれるところにファウストの凄さがある。ファウストは、フレーズを繰り返すときに装飾音を入れたり、音の並びに変化を与えたりといった目に見える細工を施すこともあり、ともすれば作為的に感じてしまうこうした細工が、ファウストの意図というよりも、ヴァイオリンの名手でもあったモーツァルト自らのインスピレーションによって湧き出た自然でさりげない音楽表現として伝わって来るのだ。こうしたごくさり気ない働きかけ、それも内面から自然発生的に湧いて来る働きかけ全てが連なって一つの線となり、音楽としてのパワーを高め、聴き手の心を動かさずにはおかないのだろう。
ファウストはオーケストラのトゥッティでのヴァイオリンパートも一緒に演奏する。いかにオケと一緒に音楽を作ろうとしているかの表れだろう。そしてアントニーニ指揮イル・ジャルディーノ・アルモニコの素晴らしいこと!こちらもファウストのヴァイオリン同様に自然な息遣いでさりげなく、しかし生き生きと要所を的確に捉えて嬉々として音楽を奏でる。イザベルとオケのメンバーが互いに同じ音楽を感じている幸福感が演奏から迸り出て、マイナスイオンを振りまき、聴き手もそれを浴びて快い愉悦に浸るのだ。
オケ単独で演奏された「アイネ・クライネ」は僕が幼い頃から大好きで聴きまくっていた曲だけに、滅多な演奏では共感しないが、今夜の演奏には惚れ込んでしまった。心の底から沸き上がる感情を捉えて刹那的な衝動も加わり、アグレッシブかつデリケートな喜び溢れる演奏に心酔。アンコールでファウストもトゥッティに加わったディヴェルティメントでも同様の感情が湧き上がった。このオケとイザベルは真に共感しあえる理想的な組み合わせではないだろうか。いつまでも聴いていたかった。これからもレパートリーを広げて共演を続け、また近いうちに来日してもらいたい。
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