10月27日(日)仲道郁代(Pf)
The Road to 2027 シューベルトの心の花
東京文化会館小ホール
【曲目】
♪ シューベルト/4つの即興曲 D899 Op.90
♪ シューベルト/4つの即興曲 D935 Op.142
【アンコール】
♪ シューベルト/楽興の時第3番 D780/3 Op.94-3
仲道郁代の10年越しのリサイタルシリーズ“The Road to 2027“、今回はシューベルトが取り上げられた。仲道さんとシューベルトはとてもしっくり来るイメージだが、シューベルトを特集したリサイタルを聴いた記憶はなく、前回のリサイタルで演奏した「幻想ソナタ」が今回への付箋となった。
自身の言葉で綴ったプログラム解説や、ステージでのトークから伝えられた仲道さんのシューベルト像が、演奏からもひしひしと感じられた。それは、常に「こうあるべきだ」と理想に邁進するベートーヴェンとは対照的に、シューベルトの音楽は夢と現実を行き来して、さまよい、たゆたい、深い憂いや悲しみを抱えているということ。どうしようもない切なさや愛おしさに溢れているところが、僕にとってもシューベルトの一番の魅力だと感じているだけに、今日のリサイタルは心の琴線に触れ、更にもっと深いもの、時に衝撃的なものとの出会いともなった。
リサイタルを聴いて、仲道さんは今後も長くシューベルトに取り組むのではないか、いや、是非そうして欲しいと思った。即興曲集を前半と後半に並べたプログラムは軽めの印象を受けたが、とんでもない!これまで愛らしい小品だと感じていた曲も含めて作品のどれもが重く深いメッセージを持ち、晩年のソナタにも匹敵するシューベルトの魂の静かな独白が伝わってきた。
作品90の第1曲、冒頭のG音の衝撃と、畏怖を覚えるほどの静寂の世界が伝わって来た。第2曲は、優しい印象のスケールが、さまよう魂に聴こえた。第3曲からは、叶わぬ夢への永遠の憧れが悲しみと共に伝わってきた。第4曲は、ハラハラと花びらが舞い落ちたあとの一瞬の沈黙にハッとさせられた。
作品142の第1曲では、焦燥感を帯びて光を追い求める魂が感じられ、第2曲に出てくる華やかなイメージだったフレーズが、真っ青な空に放たれる無常な大砲の響きに塗り替わった。第3曲の穏やかで美しい曲想からも底知れぬ寂寥感が溢れ、第4曲では心の歯車が崩れたような不安が伝わり、トリルや下降音階が痛みや疼きとなってギリギリと胸に突き刺さり、最後はあえなく果ててしまう無常を感じた。
昨今の仲道さんの演奏はストイックで、哀しみの影を宿していることが多いが、今日はとりわけそうした影の部分が色濃く感じられ、シューベルトの孤独な魂の訴えが聴こえてくるようだった。通常の演奏会よりも照明が落とされた暗い客席にも緊迫した空気が感じられた。仲道さんは、あらゆる角度から作品と徹底的に向き合い、心の底から納得・共感して、それを自分の言葉で表現する。一つ一つのリサイタルを積み重ねたシリーズの最後に見える大きな世界に、また一歩近づいたようなリサイタルだった。
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仲道郁代 フォルテピアノ&ピアノ~ミーツ・ベートーヴェンシリーズ~ 2020.1.10 東京芸術劇場
仲道郁代 ピアノリサイタル~第29回 交詢社「音楽と食事の夕べ」 2019.12.21
仲道郁代 ショパンへの道 2019.1.26 ハクジュホール
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自身の言葉で綴ったプログラム解説や、ステージでのトークから伝えられた仲道さんのシューベルト像が、演奏からもひしひしと感じられた。それは、常に「こうあるべきだ」と理想に邁進するベートーヴェンとは対照的に、シューベルトの音楽は夢と現実を行き来して、さまよい、たゆたい、深い憂いや悲しみを抱えているということ。どうしようもない切なさや愛おしさに溢れているところが、僕にとってもシューベルトの一番の魅力だと感じているだけに、今日のリサイタルは心の琴線に触れ、更にもっと深いもの、時に衝撃的なものとの出会いともなった。
リサイタルを聴いて、仲道さんは今後も長くシューベルトに取り組むのではないか、いや、是非そうして欲しいと思った。即興曲集を前半と後半に並べたプログラムは軽めの印象を受けたが、とんでもない!これまで愛らしい小品だと感じていた曲も含めて作品のどれもが重く深いメッセージを持ち、晩年のソナタにも匹敵するシューベルトの魂の静かな独白が伝わってきた。
作品90の第1曲、冒頭のG音の衝撃と、畏怖を覚えるほどの静寂の世界が伝わって来た。第2曲は、優しい印象のスケールが、さまよう魂に聴こえた。第3曲からは、叶わぬ夢への永遠の憧れが悲しみと共に伝わってきた。第4曲は、ハラハラと花びらが舞い落ちたあとの一瞬の沈黙にハッとさせられた。
作品142の第1曲では、焦燥感を帯びて光を追い求める魂が感じられ、第2曲に出てくる華やかなイメージだったフレーズが、真っ青な空に放たれる無常な大砲の響きに塗り替わった。第3曲の穏やかで美しい曲想からも底知れぬ寂寥感が溢れ、第4曲では心の歯車が崩れたような不安が伝わり、トリルや下降音階が痛みや疼きとなってギリギリと胸に突き刺さり、最後はあえなく果ててしまう無常を感じた。
昨今の仲道さんの演奏はストイックで、哀しみの影を宿していることが多いが、今日はとりわけそうした影の部分が色濃く感じられ、シューベルトの孤独な魂の訴えが聴こえてくるようだった。通常の演奏会よりも照明が落とされた暗い客席にも緊迫した空気が感じられた。仲道さんは、あらゆる角度から作品と徹底的に向き合い、心の底から納得・共感して、それを自分の言葉で表現する。一つ一つのリサイタルを積み重ねたシリーズの最後に見える大きな世界に、また一歩近づいたようなリサイタルだった。
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僕的には少々重い…といおうか、30台半ばのウィーン小市民の作曲家が書いたものが、変に巨大でやたら厳粛かつ荘重に解釈したものと聴きましたが。
即興曲、ブレンデルやフェルツマンのような演奏が好みです。
僕にとってシューベルトの音楽は、31歳で世を去ったウィーン小市民の作曲家が、どうしてこれほどの深い闇を持っていたのだろうか、と感じることが多く(とりわけ「冬の旅」や「白鳥の歌」、弦楽五重奏曲など)、今回の仲道さんの演奏を聴いて、そのシューベルトへのイメージが更なる闇へと引き込まれた思いがして、これはひとつの明確なシューベルト像であると感じたのです。一方で、哀愁を帯びたもっと軽い演奏もありだとは思います。