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角田鋼亮 指揮 日本フィルハーモニー交響楽団

2021年11月09日 |  pocknのコンサート感想録2021
11月5日(金)角田鋼亮 指揮 日本フィルハーモニー交響楽団
第735回東京定期演奏会
サントリーホール


【曲目】
1.J. シュトラウスII/ワルツ「ウィーンの森の物語」Op.325
 ツィター:河野直人
2.コルンゴルト/ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.35
 【アンコール】
 ♪ ハイドン/クライスラー編/皇帝讃歌(弦楽四重奏曲第77番「皇帝」第2楽章より)
 Vn:郷古廉
3.フランツ・シュミット/交響曲第4番ハ長調


先月に続いて日フィルの東京定期を聴いた。指揮はこのところ注目度が急上昇している若手の気鋭・角田鋼亮で、ウィーンにゆかりの深い作品ばかりを集めたプログラムが組まれ、夢と歌に溢れた演奏会となった。角田の指揮は初体験。

最初はウィーンそのものという感じの「ウィーンの森の物語」。河野が奏でるツィターのくっきりした歌とハーモニーが何と云っても心に沁みた。夢見心地の哀愁や懐かしさ、古き良きウィーンの空気が伝わってきた。角田指揮の日フィルも瑞々しい歌を生き生きと奏でたが、ウィンナワルツ独特の含みのあるリズムとか、思わせぶりの色や香りを、ツィターに合わせて少しオーバーなぐらいやってもよかったかも。ツィターの出番が短かったのでアンコールも聴きたかったな。

続くコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲では、郷古のヴァイオリンが冒頭から魅了した。詩情と色香に溢れ、それに浸り切ることなく生気もみなぎっている。柔軟で繊細で機敏に動き回り、まるで天使があちこち飛び回ってバトンで虹色の光彩をそこここに振り撒いているよう。室内楽的でアットホームなオケもデリケートに郷古のヴァイオリンをエスコートし、音楽の表情を多彩に広げていた。ハリウッドの映画シーンを髣髴とさせながらも、単に甘くロマンチックなだけではない、それこそウィーンの街中でもとりわけ古い地区の路地裏とか、カフェの片隅に佇むような味わい深さがある演奏に魅了された。

後半はシュミットのシンフォニー。この作曲家の名前は最近よく耳にするが、作品を聴くのは初体験かも。第4交響曲は、滔々(とうとう)とした大河の永遠の流れに身を任せ、様々なドラマを見せてくれた。雄大で深いのだが、そこに孤独感や切なさが潜んでいることが伝わってくる。角田指揮の日フィルは、音楽全体を大きく捉えて穏やかで深い呼吸を繰り返し、静かな熱気を蓄え、時にそれを強烈に噴出させることも。そんなときはアンサンブルが、潤滑油が隅々まで行きわたったように滑らかに噛み合い、大きな塊となって天空をダイナミックに飛び回る龍の舞いを見るようだった。

日フィルはこうしたトゥッティでも実力を発揮したし、木管の潤いと暖か味のある心に沁みる演奏もいい。そして冒頭のソロで全体のイメージ作りを演じたオッタビアーノさんのトランペットや、懐の深い歌心を持つ菊地さんのチェロのソロなど、プレイヤー個々の妙技も映えたシュミット初体験となった。

ラザレフ指揮 日本フィル (2021.10.22 サントリーホール)

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