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草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァル2015(8/20)

2015年08月20日 | pocknのコンサート感想録2015
8月20日(木)1915年コダーイ 無伴奏チェロ・ソナタ/ヴァルガとヒンターフーバー
草津音楽の森国際コンサートホール

【曲目】
1. メンデルスゾーン/オルガン・ソナタ第5番ニ長調Op.65~第3楽章
2. コダーイ/無伴奏チェロ・ソナタ Op.8
3. ポッパー/組曲「「森にて」Op.50~第3曲「祈り」
4.シューベルト/アルペッジョーネ・ソナタ イ短調 D.821
5.シベリウス/13の小品 Op.76~第1,2,5,9曲
6.シベリウス/ピアノ三重奏曲ハ長調 JS208「ロヴィーサ」

【演 奏】
Vc:タマーシュ・ヴァルガ/Pf:クリストファー・ヒンターフーバー/Vn:マルクス・ヴォルフ/Org:クラウディオ・ブリツィ


2年ぶりに草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァルを訪れた。今回も恩師の関先生の別荘に泊まらせて頂いて、8/20~8/21にかけて2つの演奏会とマスタークラスのレッスンを聴いた。

20日の演奏会の主役はウィーン・フィルの首席チェリストも務めるタマーシュ・ヴァルガ。ヴァルガのチェロは柔らかくおおらかに音楽を捉え、いつでも「歌」がある。

それをつくづく感じたのはシューベルトの名作「アルペジョーネ・ソナタ」。ヒンターフーバーのやはり歌が染み出てくるような前奏に導かれて始まったヴァルガのチェロは、しみじみと歌い、柔らかく大きく長い弧を描く。どこか憂いを帯びた、或いははにかんだような歌の表情が、シューベルト晩年の作品に特徴的な深い詩情を自然に醸し出す。

アグレッシブな攻めのアプローチが出来るようなところでも、ヴァルガは気持ちの高ぶりを内面から味わうように淡々と進めて行く。第2楽章の歌は、短いながらも底から芳香がたちのぼって来るような美しさを湛え、もっとずっとこの香りのなかに身を委ねていたかった。

また活力を取り戻して意気揚々と歩んで行く第3楽章でも、ヴァルガの歩みに勇み足はない。あるがままを受け入れつつ、微笑みを湛えてゆったりとした歩み。幸せいっぱいというよりは、やはりどこかに寂し気な眼差しを漂わせている。穏やかに遠くを眺め、自分が歩いてきた道を静かに受け入れるような締めくくりが心に滲みた。

アルペジョーネ・ソナタという曲は、一般的な評価と比べて自分のなかではちょっと一本調子で、ピアノパートも単調で眠くなってしまうことが多いのだが、これほどシューベルトならではの魅力に溢れた音楽だったかと気づくことの出来た素晴らしい演奏だった。単調だと思っていたピアノがこんなにチェロに寄り添って語り合っていたと感じられたのは、ヒンターフーバーの心がこもったピアノあってこそだったと思う。

前半のコダーイの無伴奏は、まさしくヴァルガの独壇場でヴァルガの魅力を存分に味わえる曲目だったが、東京から草津まで、長時間車を運転してきてすぐのコンサート前半は眠くなってしまうことが多く、今回も素晴らしい演奏と思いつつウトウトしてしまったので詳しい感想を述べるのは控えるが、やはりここでもヴァルガの角ばったところがない滑らかで温かみのあるチェロが、一心に訴えかけてくる姿が印象的だった。

他に、生誕150年にちなみ、シベリウスの普段あまり聴く機会のない曲を聴けるのも楽しみだったが、ピアノの独奏曲は短くてあまり印象に残らず、「交響曲作家シベリウスを彷彿させる堂々たる風格」とプログラムノートに紹介されて期待したピアノ・トリオはやたらと元気のいい曲で、シベリウスならではの北欧伝説や深い森の情景がイメージできる要素は皆無。作曲者を伏せて聴かされて、「5人の中から作曲家を当ててみろ」と言われてもわかりそうにないほど「シベリウス」を感じなかった。ヴァイオリンのマルクス・ヴォルフの意気揚々とした弾きっぷりばかりが妙に印象に残った。

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