12月18日(木)シャルル・デュトワ指揮 NHK交響楽団
《2014年12月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1. ドビュッシー/ラヴェル編/「ピアノのために」から「サラバンド」
2.ドビュッシー/ラヴェル編/舞曲
3.ファリャ/交響的印象「スペインの庭の夜」
4.ラヴェル/ピアノ協奏曲 ト長調
Pf:ユジャ・ワン(3,4)
5.ストラヴィンスキー/バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)
12月のN響定期はデュトワ。プログラム前半は、ドビュッシーのピアノ曲にラヴェルがオーケストレーションを施した小品が2つに、ファリャの珍しい曲目が並んだ。
最初の2つの小品は、淡く柔らかな色彩や、鮮やかな光彩など、「光」の変幻の妙を味わわせてくれるラヴェルのオーケストレーションの筆致を、デュトワ/N響が明晰でかつ人肌の温もりを感じるデリケートなタッチで描き出した。
続くファリャの「スペインの庭の夜」では、エメラルドグリーンのエレガントなドレスを纏ったユジャ・ワンがステージ中央のピアノに着いたが、この曲でのピアノは、ほぼ完全にオーケストラの1パートとして書かれていて、ユジャはひたすらオケに色彩や光を施す役に徹した。目立つことは一切やらなかったが、それでもユジャはしっかり存在感を示し、明るい森の木洩れ日のような光を添えていた。オーケストラはファリャらしい民族的な血を感じさせるところもあったが、品良く描かれた穏やかな風景画のような佇まいを伝える演奏だった。
休憩を挟んで再びユジャ・ワンが、今度はサファイアブルーのセクシーなコスチュームで登場。指揮はデュトワだし、ここはアルゲリッチのような骨太で眩しい演奏を期待。ユジャのピアノは切れ味抜群で冴え渡り、デュトワ/N響と機敏でウィットに富んだやり取りを聴かせるが、いつものユジャから伝わる野性味はほぼ皆無。意識的にそういう要素を封印しているかのよう。
第2楽章はピアノの長いソロで始まるが、ユジャがステージ衣装姿のまま、ハーレムの路地を一人物憂げな眼差しでそぞろ歩いているような情景が伝わってきた。そこに加わるオーケストラが奏でる弱音は、弱音のなかにも実に細やかで多彩な表情を多層的に聴かせる。そんなオケに溶け込むようにユジャのピアノは淡く匂やかな詩情を醸し出す。中間部ではもっと熱く燃え上がると思ったが、ここでもピアノは物憂げな表情のまま。終盤、イングリッシュホルンとのたゆたうような絡みもセピアの色調を感じる色香を湛えていた。この楽章が今夜の白眉。
第3楽章は、颯爽としたスピード感はあるが、期待したユジャの野性味は最後まで姿を現すことはなかった。
最後はストラビンスキー。「火の鳥」は全曲版よりこの1919年版の組曲が濃密で簡潔で好き。デュトワ/N響はここでも細やかで匂やかに曲を進める。「カッチェイ王の魔の踊り」でのパンチ力や終曲の輝きも十分だが、ここはもっと大地を轟かせるような底力がほしい。デュトワの演奏は総じてスマートで、ライブ演奏の醍醐味があまり感じられなかった。
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1. ドビュッシー/ラヴェル編/「ピアノのために」から「サラバンド」
2.ドビュッシー/ラヴェル編/舞曲
3.ファリャ/交響的印象「スペインの庭の夜」
4.ラヴェル/ピアノ協奏曲 ト長調
Pf:ユジャ・ワン(3,4)
5.ストラヴィンスキー/バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)
12月のN響定期はデュトワ。プログラム前半は、ドビュッシーのピアノ曲にラヴェルがオーケストレーションを施した小品が2つに、ファリャの珍しい曲目が並んだ。
最初の2つの小品は、淡く柔らかな色彩や、鮮やかな光彩など、「光」の変幻の妙を味わわせてくれるラヴェルのオーケストレーションの筆致を、デュトワ/N響が明晰でかつ人肌の温もりを感じるデリケートなタッチで描き出した。
続くファリャの「スペインの庭の夜」では、エメラルドグリーンのエレガントなドレスを纏ったユジャ・ワンがステージ中央のピアノに着いたが、この曲でのピアノは、ほぼ完全にオーケストラの1パートとして書かれていて、ユジャはひたすらオケに色彩や光を施す役に徹した。目立つことは一切やらなかったが、それでもユジャはしっかり存在感を示し、明るい森の木洩れ日のような光を添えていた。オーケストラはファリャらしい民族的な血を感じさせるところもあったが、品良く描かれた穏やかな風景画のような佇まいを伝える演奏だった。
休憩を挟んで再びユジャ・ワンが、今度はサファイアブルーのセクシーなコスチュームで登場。指揮はデュトワだし、ここはアルゲリッチのような骨太で眩しい演奏を期待。ユジャのピアノは切れ味抜群で冴え渡り、デュトワ/N響と機敏でウィットに富んだやり取りを聴かせるが、いつものユジャから伝わる野性味はほぼ皆無。意識的にそういう要素を封印しているかのよう。
第2楽章はピアノの長いソロで始まるが、ユジャがステージ衣装姿のまま、ハーレムの路地を一人物憂げな眼差しでそぞろ歩いているような情景が伝わってきた。そこに加わるオーケストラが奏でる弱音は、弱音のなかにも実に細やかで多彩な表情を多層的に聴かせる。そんなオケに溶け込むようにユジャのピアノは淡く匂やかな詩情を醸し出す。中間部ではもっと熱く燃え上がると思ったが、ここでもピアノは物憂げな表情のまま。終盤、イングリッシュホルンとのたゆたうような絡みもセピアの色調を感じる色香を湛えていた。この楽章が今夜の白眉。
第3楽章は、颯爽としたスピード感はあるが、期待したユジャの野性味は最後まで姿を現すことはなかった。
最後はストラビンスキー。「火の鳥」は全曲版よりこの1919年版の組曲が濃密で簡潔で好き。デュトワ/N響はここでも細やかで匂やかに曲を進める。「カッチェイ王の魔の踊り」でのパンチ力や終曲の輝きも十分だが、ここはもっと大地を轟かせるような底力がほしい。デュトワの演奏は総じてスマートで、ライブ演奏の醍醐味があまり感じられなかった。
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