11月29日(火)マリア・ジョアン・ピリス(Pf)
サントリーホール
【曲目】
1.シューベルト/ピアノ・ソナタ第13番イ長調 Op.120 D664
2.ドビュッシー/ベルガマスク組曲
3. シューベルト/ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調 D960
【アンコール】
♪ ドビュッシー/アラベスク第1番
5年前の引退表明の後、2018年に聴いた「ラストコンサート」が余りに素晴らしく、もうピリスのピアノが聴けないことが本当に残念でならなかった。そのピリスが、サントリーホールに戻って来てくれた!4年以上オフィシャルな演奏活動をしていなかったはずのピリスだが、今夜のリサイタルではそんなブランクは微塵も感じさせることなく、またもや飛び切り極上の世界へ連れて行ってくれた。
シューベルトのイ長調のソナタは、磨き抜かれたピュアな美音が散りばめられ、天上で優美に舞っているよう。決して有頂天になるのではなく、この上なく清澄で静謐な空気を保ちながら。全てのフレーズ、全ての音が降って湧いてきたように自然の摂理に則って発せられ、こんなにも柔軟な演奏でありながら、そこには常にピリスの揺るぎない自信と信念が感じられた。
憧れにも似た表情を湛えた13番のソナタに対して、後半に演奏した21番のソナタからは近寄り難いほどの孤独を感じた。アプローチはあくまでも穏やかで全体が沈黙の静けさで支配される。多層的なフレーズがそれぞれ独自のテクスチャーで奏でられ、静かに共鳴しあう。フォルティッシモでも音量は抑制されつつ一つ一つの音は研ぎ澄まされ、それが底知れない孤独感を一層際立たせていった。優しくロマンチックな調べが現れても、それはまた深い闇に埋もれて行き、希望の光の儚さを感じずにはいられなくなる。何ひとつ穢れのない孤高の世界が静かに支配し、そこに畏怖の念さえ覚えた。
大勢がスタンディングオベーションでピリスを称えるなか演奏されたアラベスクは、その前の孤独の緊迫感を解きほぐすような柔らかで温かな演奏だった。「ベルガマスク組曲」では、起伏やアクセントを抑制したアプローチが何を意図するのかがよくわからなかったが、アンコールのドビュッシーは、このタイミングで演奏されるに相応しい必然が感じられた。ピリスは今後、ドビュッシーにも力を注いで行くのだろうか。正直なところ、やっぱりシューベルト、モーツァルト、ベートーヴェン、バッハが聴きたいな。
先週のN響定期では感染対策の呼びかけアナウンスがなくなって快適になったと書いたばかりだったサントリーホールでの今夜のリサイタルではマスクのこと、ブラボー禁止のことなどをうんざりするほど何度も聞かされた。そんななか、大喝采のなかでブラボーが何度か聞こえたのがせめてもの光だった。
マリア・ジョアン・ピリス ピアノリサイタル ~2018.4.17 サントリーホール~
マリア・ジョアン・ピリス ピアノリサイタル ~2014.3.7 サントリーホール~
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「マーチくん、ラストラン ~33年乗った日産マーチとのお別れシーン~」
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2.ドビュッシー/ベルガマスク組曲
3. シューベルト/ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調 D960
【アンコール】
♪ ドビュッシー/アラベスク第1番
5年前の引退表明の後、2018年に聴いた「ラストコンサート」が余りに素晴らしく、もうピリスのピアノが聴けないことが本当に残念でならなかった。そのピリスが、サントリーホールに戻って来てくれた!4年以上オフィシャルな演奏活動をしていなかったはずのピリスだが、今夜のリサイタルではそんなブランクは微塵も感じさせることなく、またもや飛び切り極上の世界へ連れて行ってくれた。
シューベルトのイ長調のソナタは、磨き抜かれたピュアな美音が散りばめられ、天上で優美に舞っているよう。決して有頂天になるのではなく、この上なく清澄で静謐な空気を保ちながら。全てのフレーズ、全ての音が降って湧いてきたように自然の摂理に則って発せられ、こんなにも柔軟な演奏でありながら、そこには常にピリスの揺るぎない自信と信念が感じられた。
憧れにも似た表情を湛えた13番のソナタに対して、後半に演奏した21番のソナタからは近寄り難いほどの孤独を感じた。アプローチはあくまでも穏やかで全体が沈黙の静けさで支配される。多層的なフレーズがそれぞれ独自のテクスチャーで奏でられ、静かに共鳴しあう。フォルティッシモでも音量は抑制されつつ一つ一つの音は研ぎ澄まされ、それが底知れない孤独感を一層際立たせていった。優しくロマンチックな調べが現れても、それはまた深い闇に埋もれて行き、希望の光の儚さを感じずにはいられなくなる。何ひとつ穢れのない孤高の世界が静かに支配し、そこに畏怖の念さえ覚えた。
大勢がスタンディングオベーションでピリスを称えるなか演奏されたアラベスクは、その前の孤独の緊迫感を解きほぐすような柔らかで温かな演奏だった。「ベルガマスク組曲」では、起伏やアクセントを抑制したアプローチが何を意図するのかがよくわからなかったが、アンコールのドビュッシーは、このタイミングで演奏されるに相応しい必然が感じられた。ピリスは今後、ドビュッシーにも力を注いで行くのだろうか。正直なところ、やっぱりシューベルト、モーツァルト、ベートーヴェン、バッハが聴きたいな。
先週のN響定期では感染対策の呼びかけアナウンスがなくなって快適になったと書いたばかりだったサントリーホールでの今夜のリサイタルではマスクのこと、ブラボー禁止のことなどをうんざりするほど何度も聞かされた。そんななか、大喝采のなかでブラボーが何度か聞こえたのがせめてもの光だった。
マリア・ジョアン・ピリス ピアノリサイタル ~2018.4.17 サントリーホール~
マリア・ジョアン・ピリス ピアノリサイタル ~2014.3.7 サントリーホール~
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