facciamo la musica! & Studium in Deutschland

足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

マリア・ジョアン・ピリス ピアノリサイタル

2022年12月02日 | pocknのコンサート感想録2022
11月29日(火)マリア・ジョアン・ピリス(Pf)
サントリーホール

【曲目】
1.シューベルト/ピアノ・ソナタ第13番イ長調 Op.120 D664
2.ドビュッシー/ベルガマスク組曲
3. シューベルト/ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調 D960
【アンコール】
♪ ドビュッシー/アラベスク第1番

5年前の引退表明の後、2018年に聴いた「ラストコンサート」が余りに素晴らしく、もうピリスのピアノが聴けないことが本当に残念でならなかった。そのピリスが、サントリーホールに戻って来てくれた!4年以上オフィシャルな演奏活動をしていなかったはずのピリスだが、今夜のリサイタルではそんなブランクは微塵も感じさせることなく、またもや飛び切り極上の世界へ連れて行ってくれた。

シューベルトのイ長調のソナタは、磨き抜かれたピュアな美音が散りばめられ、天上で優美に舞っているよう。決して有頂天になるのではなく、この上なく清澄で静謐な空気を保ちながら。全てのフレーズ、全ての音が降って湧いてきたように自然の摂理に則って発せられ、こんなにも柔軟な演奏でありながら、そこには常にピリスの揺るぎない自信と信念が感じられた。

憧れにも似た表情を湛えた13番のソナタに対して、後半に演奏した21番のソナタからは近寄り難いほどの孤独を感じた。アプローチはあくまでも穏やかで全体が沈黙の静けさで支配される。多層的なフレーズがそれぞれ独自のテクスチャーで奏でられ、静かに共鳴しあう。フォルティッシモでも音量は抑制されつつ一つ一つの音は研ぎ澄まされ、それが底知れない孤独感を一層際立たせていった。優しくロマンチックな調べが現れても、それはまた深い闇に埋もれて行き、希望の光の儚さを感じずにはいられなくなる。何ひとつ穢れのない孤高の世界が静かに支配し、そこに畏怖の念さえ覚えた。

大勢がスタンディングオベーションでピリスを称えるなか演奏されたアラベスクは、その前の孤独の緊迫感を解きほぐすような柔らかで温かな演奏だった。「ベルガマスク組曲」では、起伏やアクセントを抑制したアプローチが何を意図するのかがよくわからなかったが、アンコールのドビュッシーは、このタイミングで演奏されるに相応しい必然が感じられた。ピリスは今後、ドビュッシーにも力を注いで行くのだろうか。正直なところ、やっぱりシューベルト、モーツァルト、ベートーヴェン、バッハが聴きたいな。

先週のN響定期では感染対策の呼びかけアナウンスがなくなって快適になったと書いたばかりだったサントリーホールでの今夜のリサイタルではマスクのこと、ブラボー禁止のことなどをうんざりするほど何度も聞かされた。そんななか、大喝采のなかでブラボーが何度か聞こえたのがせめてもの光だった。

マリア・ジョアン・ピリス ピアノリサイタル ~2018.4.17 サントリーホール~
マリア・ジョアン・ピリス ピアノリサイタル ~2014.3.7 サントリーホール~
♪ブログ管理人の作曲のYouTubeチャンネル♪
最新アップロード:「村の英雄」(詩:西條八十)

~限定公開中動画~
「マーチくん、ラストラン ~33年乗った日産マーチとのお別れシーン~」

拡散希望記事!やめよう!エスカレーターの片側空け

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「お薦めの場所&お店」メニュー | トップ | 「ドイツ留学相談室」について »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

pocknのコンサート感想録2022」カテゴリの最新記事