10月16日(日)おと と おと と Vol.1 ![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_warai.gif)
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やなか音楽ホール
【曲目】
1. シューマン/窓辺で
2. シューマン/歌曲集「リーダークライス」Op.39
♪ ♪ ♪
3. シューマン/恋する者のセレナーデ
4. ウォルフ/「メーリケの詩による歌曲」~
春だ/春に/祈り/それを考えよ、おお魂よ/隠遁/庭師/狩人/明け方に/炎の騎士/さようなら/あばよ
【アンコール】
シューマン/愛の庭
【演奏】
MS:小泉詠子(1,2,3,アンコール)/Bar:初鹿野 剛(1,3,4,アンコール)/Pf:朴令鈴
シューマンの作品39のリーダークライスは、学生時代にドイツ語の勉強を始めた頃、ドイツ語の歌詞を対訳を頼りに吟味して読み、歌の旋律やビアノ伴奏のハーモニーと言葉がなんと見事に呼応しているかを知り、歌曲を鑑賞するのに歌詞がわかっていなければ作品の魅力の半分も味わうことはできない、という、今思えば当たり前のことに気づかせてくれた大切な存在。そのリーダークライスを生演奏で聴くのは、もう昔に聴いたフィッシャー=ディスカウのリサイタル以来かも知れない。10年は軽く経っていると思って記録を調べたら、それはもう四半世紀も前の1986年のことだった…
久々にこの作品を生で聴かせてくれたメゾの小泉さんとピアノの朴さんの演奏はとても素晴らしかった。小泉さんの歌はキリッと締まりがあり、アイヒェンドルフの夢と現実の間をさまようような夢想する世界を、夢の中から目覚めさせるように格調高く物語った。ロマンチックな雰囲気のなかに溶けてしまうのではなく、一点を澄んだ眼差しで見据える役者の冷静な目がある。
例えば第1曲「異郷にて」からは「静かな時」が自分に近づいていることをはっきり悟る、一種の覚悟が感じられた。名曲「月の夜」からも月に照らされ、闇夜にくっきりと浮かび上がる情景と、魂の覚醒が伝わる。小泉さんの語りの巧さも絶品。深い母音の響きで言葉を滑らかに連ね、詩の情景と心情を立体的に表現する。第3曲「森のかたらい」での主人公の感情の起伏と、ローレライの妖艶で底知れぬ魔的な魅力の対話の対比も見事。終曲「春の夜」ではウキウキワクワクした瑞々しい感性が伝わってきた。それぞれの歌の特徴が、大げさになることなく、格調高く浮かび上がってきた。
この演奏会を企画した(多分…)ピアニストの朴さんが、自ら手がけた訳詩を朗読し、聴き手のイマジネーションを膨らませたが、そのピアノは、一つ一つの音の粒が美しく響き合い、歌の影のようにぴたりと寄り添っていた。
演奏会の後半でウォルフを歌った初鹿野さんの歌を聴くのは初めてだったが、「語り」が要求されるウォルフの歌曲を、とてもリアルに、ドラマチックに聴かせてくれる名バリトン。聴く者の心のひだに分け入って来るような近しさ、空中分解しそうなウォルフ独特のスリル感や焦燥感などを、初鹿野さんの歌は確実に捉えて表現していた。
ドイツ語の発音がとても聞き取り易く、更に発音の勢いや深さが、言葉や場面によって微妙にコントロールされて、歌詞対訳を持っていなかったが、ストーリーを追うことができるほどだった。もちろん、ピアノの朴さんが、それぞれの曲の解説をしてくれたおかげもあったが。
朴さんのピアノはここでは更に大活躍。ねっとりとまとわりつくようなウォルフ的な湿感が、短い音にもたっぷりと込められて、ひたひたと迫ってきた。「狩人」や「炎の騎士」での狂気的な心の揺さぶりの勢いにも圧倒される。これで初鹿野さんの歌唱がますます燃え上がった。終曲「あばよ」でのワルツのエンディングも圧巻!
小泉さんと初鹿野さんが、それぞれの「真剣勝負」のメインのソロ曲の前後と中間で披露したシューマンの恋人たちを歌ったデュオは、歌も巧いし、やり取りも絶妙でとても微笑ましく、こじんまりとしてアットホームな会場になごやかな空気を運んだのも良かった。
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やなか音楽ホール
【曲目】
1. シューマン/窓辺で
2. シューマン/歌曲集「リーダークライス」Op.39
3. シューマン/恋する者のセレナーデ
4. ウォルフ/「メーリケの詩による歌曲」~
春だ/春に/祈り/それを考えよ、おお魂よ/隠遁/庭師/狩人/明け方に/炎の騎士/さようなら/あばよ
【アンコール】
シューマン/愛の庭
【演奏】
MS:小泉詠子(1,2,3,アンコール)/Bar:初鹿野 剛(1,3,4,アンコール)/Pf:朴令鈴
シューマンの作品39のリーダークライスは、学生時代にドイツ語の勉強を始めた頃、ドイツ語の歌詞を対訳を頼りに吟味して読み、歌の旋律やビアノ伴奏のハーモニーと言葉がなんと見事に呼応しているかを知り、歌曲を鑑賞するのに歌詞がわかっていなければ作品の魅力の半分も味わうことはできない、という、今思えば当たり前のことに気づかせてくれた大切な存在。そのリーダークライスを生演奏で聴くのは、もう昔に聴いたフィッシャー=ディスカウのリサイタル以来かも知れない。10年は軽く経っていると思って記録を調べたら、それはもう四半世紀も前の1986年のことだった…
久々にこの作品を生で聴かせてくれたメゾの小泉さんとピアノの朴さんの演奏はとても素晴らしかった。小泉さんの歌はキリッと締まりがあり、アイヒェンドルフの夢と現実の間をさまようような夢想する世界を、夢の中から目覚めさせるように格調高く物語った。ロマンチックな雰囲気のなかに溶けてしまうのではなく、一点を澄んだ眼差しで見据える役者の冷静な目がある。
例えば第1曲「異郷にて」からは「静かな時」が自分に近づいていることをはっきり悟る、一種の覚悟が感じられた。名曲「月の夜」からも月に照らされ、闇夜にくっきりと浮かび上がる情景と、魂の覚醒が伝わる。小泉さんの語りの巧さも絶品。深い母音の響きで言葉を滑らかに連ね、詩の情景と心情を立体的に表現する。第3曲「森のかたらい」での主人公の感情の起伏と、ローレライの妖艶で底知れぬ魔的な魅力の対話の対比も見事。終曲「春の夜」ではウキウキワクワクした瑞々しい感性が伝わってきた。それぞれの歌の特徴が、大げさになることなく、格調高く浮かび上がってきた。
この演奏会を企画した(多分…)ピアニストの朴さんが、自ら手がけた訳詩を朗読し、聴き手のイマジネーションを膨らませたが、そのピアノは、一つ一つの音の粒が美しく響き合い、歌の影のようにぴたりと寄り添っていた。
演奏会の後半でウォルフを歌った初鹿野さんの歌を聴くのは初めてだったが、「語り」が要求されるウォルフの歌曲を、とてもリアルに、ドラマチックに聴かせてくれる名バリトン。聴く者の心のひだに分け入って来るような近しさ、空中分解しそうなウォルフ独特のスリル感や焦燥感などを、初鹿野さんの歌は確実に捉えて表現していた。
ドイツ語の発音がとても聞き取り易く、更に発音の勢いや深さが、言葉や場面によって微妙にコントロールされて、歌詞対訳を持っていなかったが、ストーリーを追うことができるほどだった。もちろん、ピアノの朴さんが、それぞれの曲の解説をしてくれたおかげもあったが。
朴さんのピアノはここでは更に大活躍。ねっとりとまとわりつくようなウォルフ的な湿感が、短い音にもたっぷりと込められて、ひたひたと迫ってきた。「狩人」や「炎の騎士」での狂気的な心の揺さぶりの勢いにも圧倒される。これで初鹿野さんの歌唱がますます燃え上がった。終曲「あばよ」でのワルツのエンディングも圧巻!
小泉さんと初鹿野さんが、それぞれの「真剣勝負」のメインのソロ曲の前後と中間で披露したシューマンの恋人たちを歌ったデュオは、歌も巧いし、やり取りも絶妙でとても微笑ましく、こじんまりとしてアットホームな会場になごやかな空気を運んだのも良かった。