facciamo la musica! & Studium in Deutschland

足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

9月B定期(タン・ドゥン指揮)

2008年09月24日 | N響公演の感想(~2016)
9月24日(水)タン・ドゥン指揮 NHK交響楽団
《9月Bプロ》 サントリーホール

【曲目】
1.バルトーク/舞踊組曲BB86a(Sz.77)
2.タン・ドゥン/マルコ・ポーロの4つのシークレットロード
-オーケストラと12のチェロのための(2007年版)[日本初演]
3.タン・ドゥン/ピアノ協奏曲「ファイア」(2008)[日本初演]
Pf:小菅 優

N響の新シーズン最初に聴いた定期はタン・ドゥンの自作自演という刺激的なプログラム。

これまでに何度かタン・ドゥン指揮N響は聴いているが、自作では素晴らしい演奏を聴かせてくれる半面、他の曲を振るとどうも響きが散漫になる印象があったが、今夜の1曲目のバルトークは良かった。燃焼度・集中力共に万全で、音が自らの意思ではっきりと向かうべきところに向かっている。この曲はあまり聴き慣れていなかったが「中国の不思議な役人」のような張りつめた、内側から燃えるような音楽は曲としての完成度も高いと思った。それだけでなく、ゆったりふくよかに歌う場面も良かった。

そしてタン・ドゥンの指揮と言えばやっぱり自作曲への期待が大きい。演奏の前にタン・ドゥン自らの曲の解説を聞けて益々期待が高まる。

12人のチェロとオーケストラの音楽はチェロのソロ(木越さん)による緩やかなグリッサンドの往復が徐々に速くなるというタン・ドゥン独特の語法で始まった。非常に耽美的であり、エキサイティングであり、オリジナリティを感じる音楽だ。響きやリズムは、譜面上ではかなり複雑なことが書かれているのかも知れないが、聴いていると明快でいて斬新さを感じる。

金管楽器のマウスピースをバコバコ叩いて出す音や、リード楽器の先っちょの歌口を抜いてピーピー言わせる音なんて、遊びでやるのを聞くことはあっても楽曲で使うというアイディアにはただ恐れ入る。もしかして他の作曲家もやっているかも知れないが、その効果がタン・ドゥンの場合は抜群。指板の上に左手を滑らせてグリッサンドの往復をするそのしぐさだけで視覚的に訴えるアイディア、掛け声や足踏み、息の音など、どれもが曲にぴったりと合っているように感じさせてしまう「力」を持っている。現代曲でよく感じる「無駄」なものが一切なく、どんなに複雑であっても底がはっきりと見えるような透明度が、心にストレートに訴えてくるのかも知れない。

この曲ではN響の12人のチェロ奏者達が大活躍。「12人を干支の十二支に見立ててそれぞれに性格的な音楽を与えた」と作曲者が説明していたが、一人一人のエモーショナルでモノローグ的なソロ(藤森さんは殆どトランス状態!!)は迫真もの。最初から最後まで引きつけられる演奏と音楽だった。

小菅優を迎えてのピアノ協奏曲も素晴らしかった。これまで小菅さんの演奏を何度か聴いて、とにかく豊かで濃い表情や自然な躍動感、みなぎる生命力にいつも感銘を受けていたが、今夜は現代ものでも並々ならぬ実力を見せつけてくれた。

この大規模で複雑怪奇な音楽を(と言っても聴いた印象は相変わらず明快!)どんな場面、どんな状況においても的確に捉え、最大限の効果を引き出す。ラフマニノフ張りの叙情的な部分の溢れるような情感も素晴らしいし、プロコフィエフ張りの打楽器的な音楽では弦が切れるのではと思うほどの果敢な気迫で圧倒する。タン・ドゥンがこの音楽に込めたという「火と水のイメージ」を小菅は変幻自在のピアノで余すところなく発揮したと言っていい。

この曲は、上に書いた他にもいろんな作曲家の音楽が浮かびはするが、結局はまぎれもないタン・ドゥンのオリジナリティーがある。陳腐な民謡調のメロディーが出てきても、タン・ドゥンが料理すればそれはある時は魂の叫びになり、またある時は神聖なほどに洗練された調べになってしまうから不思議だ。これは近年の名ピアノ協奏曲に加えてもいいかも知れない。

コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 清里の貸別荘「野わけ」ライ... | トップ | MAROワールドVol.10 \"ヴィヴ... »
最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (匿名)
2008-09-25 18:40:37
私はタン・ドゥンの曲の中では紙楽器の協奏曲が
好きです。タン・ドゥンはユニークな曲を
沢山書いていますね。
返信する
紙楽器 (pockn)
2008-09-26 00:04:41
オペラシティでやった紙楽器の協奏曲、僕も聴きました。あれもすごくインパクトがあり、また聴いてみたい曲の1つです。「紙」といえばオペラ「TEA」で弦楽器奏者が楽譜をバサバサめくっていたのも思い出します。タン・ドゥンの音楽はいつも冴えてますね!
返信する
タン・トゥン (一静庵)
2008-09-26 01:34:42
私も聴きました。
タン・ドゥンの曲はなんだか気持ちが高揚します。

>藤森さんは殆どトランス状態!!
でしたね
返信する
Re: タン・トゥン (pockn)
2008-09-26 12:12:43
一静庵さん、こんにちは。
あれほど気合いの入った熱演でしたが、お客の反応は温かい拍手ではあったもののもっとストレートな反応が欲しかったですねー 現代ものを一番お客の反応の鈍いBプロでやるのは考えものです。サントリーにももっと学生席を設けたほうがいいんじゃないでしょうか。
返信する
Unknown (IANIS)
2008-09-29 00:30:25
FMで聴いていました。途中から聴き出したので、誰だろう?現代?プロコフィエフみたいだしラフマニノフにも似ている、でも弦楽器の響きは東洋だしなあ・・・と思っていたらタン・ドゥン。納得しました。10月にBSでオンエアされますので、今から楽しみです。
返信する
弾いても楽しい音楽・・・ (pockn)
2008-09-29 17:28:21
IANISさん、こんにちは。タン・ドゥンの曲は「おもしろいけどもういいや」と思う現代曲が多い中「また聴きたい」と思える音楽ですね。オーケストラにしても奏者が塊の中のただのパーツでしかない曲と比べると演奏のし甲斐があるのではと思います。これからも目が離せませんね!
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

N響公演の感想(~2016)」カテゴリの最新記事