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タカーチ弦楽四重奏団

2006年06月20日 | pocknのコンサート感想録2006
6月20日(火)タカーチ弦楽四重奏団
紀尾井ホール

【曲目】
1.モーツァルト/弦楽四重奏曲第22番変ロ長調 K589
2. モーツァルト/弦楽四重奏曲第19番ハ長調K.465「不協和音」
3.シューベルト/弦楽四重奏曲第14番ニ短調D.810「死と乙女」
【アンコール】
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第3番ニ長調Op.18-3

【演 奏】
タカーチ弦楽四重奏団(Vn:エドワード・ドゥシンベル、カーロイ・シュランツ/Vla:ジェラルディン・ウォルサー/Vc:アンドラーシュ・フェイェール


弦王国ハンガリーの名高いタカーチカルテットがモーツァルトとシューベルトをやるという期待大のコンサート。実際はメンバーが入れ替わっていて「ハンガリーの」とは言えないかも知れないが… 

まずモーツァルトの第一声での印象は「やわらかさ」。色っぽい柔らかさではなく、奥ゆかしさと深みを感じる。
しかし、聴き進むうちにいまいちハーモニーの音程が良くないのと、第1ヴァイオリンのドゥシンベルが弱くて響きの中に埋もれてしまうのが気になってきた。ハーモニーだけじゃなくて各プレイヤーの音程の悪さも時々気になる。2曲目では多少持ち直しはしたが、でも「これが名高いカルテット?」というのが前半の印象。

そんなパッとしない印象が一度に吹き飛んだのは「死と乙女」の2楽章が始まってから。今まで聞いたことがないような深く静かな響き。レガートの極みのような息の長さでひたりひたりと歩みを進めて行く。4人のプレイヤーの線がくもの糸のように細くて、しかししなやかで美しいひとつの作品を形作って行く姿を聴くと、これこそがカルテットの醍醐味という気がした。一人のスタープレーヤーがアンサンブルをリードするのではなく、4人が全く対等に響きを作り出す。静かで気高く、奥深い第2楽章だった。

こうなると、それまでとは聴きかたが変わり、アンサンブルの妙を心行くまで味わい尽くした。3楽章のトリオの柔らかさも絶品だし、フィナーレの執拗な付点のリズムがスウィングしているのが聞こえる。自然な呼吸でやはり4人が対等に和して、或いは競い合ってすばらしい頂点を築いた。アンコールのベートーヴェンも何とも味わい深く、躍動感にも溢れた名演。「これがタカーチか!」前半のイメージとここまで変わるコンサートも珍しい。

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