名テノール歌手として一時代を築いたペーター・シュライアーが長い闘病生活の末、昨年(2019年)の12月25日に84歳で亡くなった。シュライアーは、バリトンのフィッシャー=ディースカウ、ヘルマン・プライと並び、僕にとって特にドイツリートの世界で長年最も大切な歌い手として、何度もリサイタルに出かけたアーティスト。
ブログにシュライアーの演奏会の感想をアーカイブとして載せようと思っていてなかなか手を付けられなかったが、新型コロナのせいで演奏会が全くなくなってしまい時間ができたので、38年前のリサイタルの感想を紹介する。
シュライアーの「美しき水車屋の娘」を聴いた思い出として真っ先に浮かぶのは、学生時代の1980年に東京文化会館で聴いたラゴスニックのギターとの共演によるリサイタルだ(下のチラシ)。ギター版ということもあって広い東京文化会館がプライベート空間のように感じられ、シュライアーが心に語りかけてきた感動が鮮明に記憶に残っている。同時に「しぼめる花」が終わった直後に一人の聴衆がけたたましく拍手を始めてしまって怒り心頭気分になったことも忘れられない。
このときの感想も書いているのだが、いつもの感想ノートには「素晴らしいの一言。Müllerの詩が生き生きとしていた。詳細は別ノート参照。」と書いてあるだけ。この「別ノート」とはプライベートな思いを当時綴っていたもので、その後読めないように完全封印してあるので、その2年後に同じ東京文化会館でオルベルツとの共演で聴いた「水車屋の娘」の感想を挙げる。これも文句なしの感動ものだったようで、手書きの感想を打ち込んでいたらその時の気持ちが蘇ってきた。
ラゴスニックとのリサイタルの後にもらったシュライアーのサイン
シュライアー、それに最初に挙げたフィッシャー=ディースカウとプライ亡きあと、ドイツリートの演奏の世界の魅力は、僕にとってかなり色褪せてしまった。バリトンのクリスティアン・ゲルハーヘルはフィッシャー=ディースカウの再来かと思うほど感動して聴いていた時期があったが、その後は自分の思いとはちょっと違う路線に進んでしまったように感じ、そもそも来日が少なくて聞く機会がない。そのなかでボストリッジは独特の歌唱で頑張っていると思うが…
(2020.4.29)
フィッシャー=ディースカウの「冬の旅」
フィッシャー=ディースカウ「シューマンの夕べ」
ヘルマン・プライの「白鳥の歌」
♪ブログ管理人の作曲♪
「金魚のお墓」~金子のみすゞの詩による歌~
(S:田村茜)
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シュライアーの「美しき水車屋の娘」を聴いた思い出として真っ先に浮かぶのは、学生時代の1980年に東京文化会館で聴いたラゴスニックのギターとの共演によるリサイタルだ(下のチラシ)。ギター版ということもあって広い東京文化会館がプライベート空間のように感じられ、シュライアーが心に語りかけてきた感動が鮮明に記憶に残っている。同時に「しぼめる花」が終わった直後に一人の聴衆がけたたましく拍手を始めてしまって怒り心頭気分になったことも忘れられない。
このときの感想も書いているのだが、いつもの感想ノートには「素晴らしいの一言。Müllerの詩が生き生きとしていた。詳細は別ノート参照。」と書いてあるだけ。この「別ノート」とはプライベートな思いを当時綴っていたもので、その後読めないように完全封印してあるので、その2年後に同じ東京文化会館でオルベルツとの共演で聴いた「水車屋の娘」の感想を挙げる。これも文句なしの感動ものだったようで、手書きの感想を打ち込んでいたらその時の気持ちが蘇ってきた。
pocknのコンサート感想録アーカイブス ~ブログ開設以前の心に残った公演~ 1982年 5月1日(土) ペーター・シュライアー(T)/ヴァルター・オルベルツ(Pf) 東京文化会館 ◎ シューベルト/歌曲集「美しき水車屋の娘」 ㊝ (アンコール) 1.シューベルト/野ばら ㊝ 2.シューベルト/ミューズの子 ㊝ 3.シューベルト/旅人の夜の歌 ㊝ ほんとうによかった。なんとすばらしいシューベルトだったか!やわらかく包み込むようなシュライアーの美声。とってもきれいなドイツ語(ドイツ語のすばらしさを再認識した)、生き生きした豊かな表情、それも過度なものではなくほんとうにしゃべるように、自然に詩を朗読するように歌った。 ppがまたすばらしい。おそろし説得力を持っているのだ。語りかけのうまさ。この「水車屋の娘」を聴いていると情景が浮かんでくる。春のおぼろな空気の中で一面の緑といきいきと流れる小川と水車屋の姿と娘が。それから狩人も。最後の子守歌のピアノがまどろむように消えていった。じわーっと感激が湧いてきてとりはだがたった。これはフィッシャー=ディースカウのときのとりはだとは全く異質のものだ。あのときはまさに寒気だった。今日はあついものがこみあげてきた。 アンコールをやってくれるとは思わなかった。「野ばら」に今日ほど感激したことはなかった。「ミューズの子」は歌詞が全くわからなかったが良かった。そして「旅人の夜の歌」のピアノの深い静かな和音が響いたときは思わずため息をもらしてしまった。これを歌ってくれるとは!深くそしてとっても暖かく”Warte nur...”が響いた。 オルベルツのピアノはシュライアーの声の質ととてもよく溶け合う音で、とても詩的なあたたかい伴奏をずっとしてくれた。帰りにオルベルツさんが車に乗るとき”Gute Reise, bitte!”と言ったら、振り返って”Danke!”と言ってくれた。 ほんとうにすばらしい夕べだった。今度くるときも必ず聴きに行く。 |
ラゴスニックとのリサイタルの後にもらったシュライアーのサイン
シュライアー、それに最初に挙げたフィッシャー=ディースカウとプライ亡きあと、ドイツリートの演奏の世界の魅力は、僕にとってかなり色褪せてしまった。バリトンのクリスティアン・ゲルハーヘルはフィッシャー=ディースカウの再来かと思うほど感動して聴いていた時期があったが、その後は自分の思いとはちょっと違う路線に進んでしまったように感じ、そもそも来日が少なくて聞く機会がない。そのなかでボストリッジは独特の歌唱で頑張っていると思うが…
(2020.4.29)
フィッシャー=ディースカウの「冬の旅」
フィッシャー=ディースカウ「シューマンの夕べ」
ヘルマン・プライの「白鳥の歌」
♪ブログ管理人の作曲♪
「金魚のお墓」~金子のみすゞの詩による歌~
(S:田村茜)
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