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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

イザベル・ファウスト&アレクサンドル・メルニコフ

2014年06月30日 | pocknのコンサート感想録2014
6月28日(土)イザベル・ファウスト(Vn)/アレクサンドル・メルニコフ(Pf)
~ブラームス・ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会~
王子ホール

【曲目】
1.シューマン&ディートリヒ&ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ「F.A.E.ソナタ」
2. ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調 Op.78 「雨の歌」
3. ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ第2番イ長調 Op.100
4. ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ第3番ニ短調 Op.108
【アンコール】
シューマン/3つのロマンスOp.94~第2曲

イザベル・ファウストは、ショートヘアでキリッとした顔立ちと、スラリとした容姿にとても似合ったヴァイオリンを奏でる。F.A.E.ソナタも含め、ブラームスの全てのヴァイオリン・ソナタがプログラミングされた今日のリサイタル、ファウストはブラームスの音楽にイメージしがちな濃厚な歌やたっぷりとした溜め、重量感などとは対照的な、スリムで研ぎ澄まされた、明晰なブラームス像を作り上げた。

ファウストのヴァイオリンの音色は、ムンムンとした色香を振り撒くのではなく、純度が高い澄みきった美音。それが隅々にまで行き渡り、明晰なブラームス像に磨きをかける。「溜め」を極力排し、節ばった凹凸を取り払い、慌てず・騒がず、落ち着き払って、淀みのない清澄なラインを描いて行く。そこには力みから解放された力強さがあり、自然なダイナミズムに溢れている。オリンピックの体操競技で、指の先端まで神経が行き届き、美しい姿勢で次々と決める高い難易度の大技を見ている感じ。静謐の中にみなぎるエネルギー。

全体に穏やかなイメージが漂う第1番は、伸びやかに深呼吸するように大らかな音づくりでまとめ上げ、最後はしっとりとした余韻を残し、「歌」が凝縮された第2番は、その歌のエッセンスが空間に解き放たれ、自由に楽しげに飛び回っているようだった。そして、焦燥感と熱気に満ちた第3番では、熱くて深い雄弁な語り口で、ダイナミズムを炸裂させた。どの曲でも、音楽がどこから始まり、どこへ向かって行くかという動きや方向性が明確に示され、聴き手をワクワクする旅へナビゲートしてくれる。その旅は曲ごとに異なるが、どの旅でも、最後は大きな充実感で満たしてくれる。

ファウストの相方、ビアノのメルニコフは、このリサイタルでファウストと全く互角と言っていい存在感と役割を演じた。伸びやかで颯爽としたダイナミズムは、ファウストが求める表現にピタリとフィットし、二人はアイスダンスのペアのように、一体となった演技を次々と完遂して行った。

目の前に鮮やかな映像が浮かび、それが心に焼きつき、強いインパクトを残してくれたリサイタル、ファウストとメルニコフの大きな存在を感じた。

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