ふるあめに いでてもぬれぬ わがそでの かげにゐながら ひちまさるかな
降る雨に 出でてもぬれぬ わが袖の 陰にゐながら ひちまさるかな
降る雨の中でもあまり濡れない私の袖が、雨のかからない物陰にいながら、涙でますます濡れてくるのであるよ。
女性の立場で詠んだ恋歌ですね。第四句「陰にゐながら」は、雨に濡れない物陰ということに加えて、男性の庇護の元にある(にもかかわらず恋心ゆえの涙を禁じ得ない)わが身を暗示してもるでしょうか。
この歌は、拾遺和歌集(巻第十五「恋五」 第958番)に入集しています。