ちょっと前…具体的には2010年代前半の時点で売れていた方々。
気まぐれで、整理してみたくなりました。(「ちょっと前」だけでなく「かなり前から」も含まれます。)
大きく影響力が続いている勢と続いてない勢に分けられ、前者はさらに3つに分けられます。
ただ、あくまでチャート上の数字で考察しているだけなので、ライブシーンやSNSなどの影響力は考えていません。
つまり、正確性に限界がある個人の勝手な議論です。
1. 最近のチャート上で影響力を維持しているラッパーは、①スタイルを変えて人気を維持or再注目、②人気の若手アーティストとコラボして人気を維持、③特に何もしていない の3つに分けられると思います。それぞれ詳しく見ていくと、
①スタイルを変えて人気を維持or再注目
カニエ・ウェストはゴスペル、ブラック・アイド・ピーズはラテン、ネリーはカントリーにスタイルを変えて成功しました。ブラック・アイド・ピーズのラテン進出はラテン音楽の人気が急上昇している今、時代にうまく乗ったチェンジだと思いますし、ネリーのカントリー音楽へのチャレンジも、ちょうどリルナズやケイン・ブラウンがカントリーの敷居を低くしてきたところでのことなので、時代読みに成功した例だと思います。ただ、カニエに関してはゴスペルは主流ではありませんし、彼がゴスペルを流行らせたというわけでもないので、③とも重なりゴスペル進出で彼の人気を維持しているという感じではないですね。…あ、忘れてましたがマシン・ガン・ケリーもそうでしたね。彼の場合は主流ではないにも関わらずロックにアプローチして成功するという偉業を生み出しています。これらを軽くまとめると、主流で栄えているジャンルにチェンジして上手くいった例もあれば、そうでないジャンルへのチェンジで成功した人もいる、という感じでしょうか。まあ、もちろんスタイルを変えれば絶対うまくいくというわけではなく、そこも元々売れていたラッパーたちの機転の利きの良さと適応力という才能が深く関わっているのでしょう。
②人気の若手アーティストとコラボして人気を維持
これはまずDJキャレドという個人名が出てきますね。他には単発的ではありましたがタイガやグッチ・メインも挙げられます。DJキャレドは2010年代後半にメジャーデビューしてから数えきれないほどのアーティストとコラボしてきている有名人ですが、アルバムのゲストはほとんどがその時栄えていたアーティストで、旬のラッパーやR&Bシンガーは残らず参加させているようなアルバムです。これは深く考えずとも人気を維持できる理由がよく分かりますよね。DJキャレドの気さくさ、寛大さが大いに役立っている成功例です。一方、タイガとグッチ・メインはどちらも2017年にブームを巻き起こしたヒップホップトリオのミーゴスとのコラボで成功しました。ミーゴス、今や勢いがかなり無くなってしまいましたが…(残念)。なお、グッチ・メインはその後も Wake Up In The Sky (2018)でブルーノ・マーズ、コダック・ブラックという若手2人とコラボし成功しました。
③特に何もしていない
つまり、実力で人気を維持できている大物です。アメリカ人なら誰もが知る「現役のベテラン」と、シングル・アルバムの両チャートで影響力の強い中堅ラッパーを指し、前者はエミネム、カニエ・ウェスト、リル・ウェインくらいですが、後者はドレイク、ケンドリック・ラマ―、フューチャー、J.コール、ニッキー・ミナージュがいます。ニッキー・ミナージュは突出したシングル・ヒットが出ていませんが、ゲスト参加の影響力やアルバム・チャートの成績を加味すると人気は続いているといえるでしょう。彼らの共通点は何でしょうか?単刀直入に言うと分かりません。ただ、イメージですが彼らは全員他のアーティストととの共作も多く、コラボレーションに積極的な人だと思います。コラボが主要因で人気が続いているわけではないですが、器の大きさがある程度ものをいっていると考えられるわけです。…まあ、そもそもヒップホップはコラボが多いジャンルなのですが。
こんな感じにまとめられました。最後に、単発的にヒットした例外を…
Wale(ワーレイ) / On Chill feat. ジェレマイ
これ、すごいんです。最近も取り上げましたが、ちょっと前のR&B感満載の曲で、それなのに2019年に大ヒットしたんです。ちょっと前のR&Bって今のR&Bとは全然違って、詳しくはうまく言えませんが、とにかくメインストリームからかなり浮いている音楽なんです。今年シルク・ソニックの Leave The Door Open が大ヒットしましたが、あれはもっと前のソウル・ミュージックへのオマージュで、昔っぽい曲がかえって売れるのは(デュア・リパの成功もあり)なんとなく分かるのですが、On Chill は昔というより00年代あたりのちょっと前の音楽。ワーレイは2011年、ジェレマイは2008年あたりでデビューしたアーティストで、決して若手が自分たちの世代の前の音楽をやってみたという曲ではありません。二人とも00年代のR&Bド直球の人です。それなのに、メインストリームでヒットしていてすごく違和感がありました。曲自体は個人的に好きで、聴きやすいのでヒットはただそれだけの理由だったのかもしれません。
2.ちょっと前に売れていたラッパーで影響力が続かなかった人ですが、シングル・アルバム両チャートでの成績をもとに判断しています。また、続かなかったというより、けっこう続いていたけど今はもう影響力がなくなったという人も含めます。思い出したいので列挙することにしました。2チェインズ、ウィズ・カリファ、ルーペ・フィアスコ、50セント、エイザップ・ロッキー、リュダクリス、T.I.、フロー・ライダー、B.o.B.、ヤング・ジージー(ジージー)。…懐かしい名前もありますね。自分が分かるのはこれくらいですが、詳しく調べればもっといるはずです。いやはや、ラッパーのアーティスト人生は厳しいものですね…。こんなにも多くのラッパーがチャート上で影響力を失った。ところで、マックルモア&ライアン・ルイスはどうとらえればいいのでしょうか…?2012~13年に大ブレイクしたヒップホップユニットですが、そもそも新曲のリリースがないのでどうとも言えません。今年ダフト・パンクが解散してしまいましたが、彼らも新曲のリリースがないままひっそりと解散を宣言してしまいそうで気がかりです。特にマックルモアがラッパーとして好きなんですが…。