オコジョ、チャート・レビュー

洋楽チャートの感想や予想を長々と述べます。速報性はありません。

クリスマス・フィーバー、5年間の記録で比較検証

2022-01-09 | チャート解析

 

クリスマス・フィーバーとは、私が作った造語です。

チャートにおけるクリスマスの多大な影響を表したもので、

特に価値のない、やや批判的な匂いのする造語です。

ただし、データは客観的なもので、それをもとに個人的に気になったこと中心の価値の低い分析を行います。

あ、チャート・レビューは来週からで…

 


 

 テーマ 

①クリスマス・フィーバーの実態

②ピークのクリスマス・ウィークでは、毎年全体で何曲ランクインしてるの?

③「新曲」クリスマス・ソングのチャート・アクション

 

※米シングル・チャートでの分析です!

 

①クリスマス・フィーバーの実態

 クリスマス・フィーバーと呼べる現象がチャートに起こるのは、大抵その年の後ろから6週、つまり第47、48、49、50、51、52週です。第47週は実際の日付でだいたい11月の第3週あたりですね。また、チャートの年の境の決め方は今回だったら「2021年の日と2022年の日どちらが多いか」によるのですが、その結果最後の週(第52週)にクリスマス以前の日が含まれたり含まれなかったりするので、年によって第52週のチャートにクリスマス・ソングが残ったり残らなかったりします。ちょっとややこしいですが、例えば今年は年境の週の集計日が 12/31 ~ 1/6 なので、この週は2022年度の第1週になります(よって2021年度の第52週は 12/24 ~ 12/30)。

 以下、2017~2021年の第47~52週のチャートにおける、Top10内のクリスマス・ソング数です。1st week が第47週にあたります。

 

 

 横軸で週ごとに見ていくと見やすいです。11月後半の第47週(1週目、と呼ぶことに)ではどれもゼロですが、2週目で一気に分かれます。とはいってもすごく分かりやすいことに、2017年は0曲、2018年は1曲、2019年は2曲…と1年ごとに1曲ずつ多くなっているので、年々激しくなるクリスマス・フィーバーの実態をまずここで捉えることができるでしょう。そして3週目、2018 - 2019 と 2019 - 2020 で間が空いており、これはクリスマス・フィーバー現象の急加速と捉えることができます(※主観)。4週目にもなるとさすがに2017年も1曲入るわけですが、すでに2020、2021年の数と大きく差があり、ピークの5週目に入るともはや比べ物になりません。特筆すべきは5週目の 2020 - 2021 以外で、すべての年のグラフがすべての週で昨年を上回っている、もしくは同数になっているということでしょう。2020年のピークは、流石に狂ってた…。

 Top20に拡大すると、こんな感じです。

 

 

 

 差に注目してまた週ごとに見ると、すでに1週目で2021年度が突出しています。だいたい1週目はマライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」が先行してTop20入りする感じだったのですが、今年はそれを含め一気に3曲入って来たので、またフィーバーが加速した…とすぐに察しました。…すぐに察したはずなのですが、さすがに2週目でTop20の半数以上を占められるとは思っておらず、これはグラフで見ても異常だということがよく分かります。前年と5曲も差がありますね。その急上昇の反動もあってか3週目では1曲減りましたが、結局水準は高いまま。3週目をよく見ると2018年と2020年の前年比の急上昇が顕著で、それは4~5週目も同じです。Top10のグラフでは少し分かりづらかったことですが、年ごとのグラフに注目すると、2018年と2020年は前年からの変化が大きい、「変化の年」だったといえるでしょう。なお、2017, 2020, 2021年度は第52週(6週目)の集計期間にクリスマス以前の日が含まれているのでTop20にクリスマス・ソングが残っていますが、2021年度は12/24、12/25 のみでTop20を半分占有しているので恐ろしいものです。

 最後に、ちょっと言いたいこと。

 

  1st 2nd 3rd 4th 5th 6th
2017 0 0 1 1 1 1
2018 1 2 4 6 8 0
2019 1 3 5 6 9 0
2020 1 6 10 11 18 4
2021 3 11 10 12 16 10

 

 グラフを表にしたものですが、ところどころで「前年の1週分先」というのを見つけることができます。例えば2019年の3週目はほぼ2018年の4週目で、2020年の2週目は2019年の3週目だったりします。つまり、2018年・4週目レベルのクリスマス・フィーバーが毎年1週ずつ早く達成されているのです。他にも2019年ピークの5週目レベルが2020年の3週目(2週分先行!!)で早くも達成されていたり、その2020年・3週目レベルが2021年の2週目で満たされるなど、クリスマス・フィーバーの年々上がっていく過熱度がここからよく読みとれます。

 …で、はっきり言わせてもらうと、気が早すぎ!!!

 クリスマス・フィーバーを冷静に考えると、その発端はクリスマス・グッズの売り手。彼らが店内に早くからクリスマス・ソングをかけたりクリスマス・グッズを並べることで、消費者に「あの楽しいクリスマスはもうすぐ!」とクリスマスへの期待感を高めるとともに、楽しいクリスマスへの準備としてクリスマス・グッズへの購買意欲をかき立てることができるわけですが、問題は前者です。期待感を高めたせいで消費者は早くからクリスマス・ソングを聴くようになり、消費者の音楽への距離を縮めたストリーミングがその行動を促進します(例えばCDやカセットテープしかない時代だったら、クリスマス・ソングを聴きたいと思っても買いに行くのが面倒なのでやめるかもしれません)。また、店内で曲を流す際もそれがダウンロードされたプレイリストではなく、ストリーミング・サービス上のプレイリストだった場合はそれを流し続けることで大量のストリーミング・ポイントがそれらの曲に加算され、チャートに反映されます。正直そのようなことはあまり想像できませんが、可能性としてあるかもしれません。予算の関係でU-SEN等と契約を結ばず、低費用で店舗BGMをどうにかするとき、など…。

 とにかく、そのような理由で米国人は早くからクリスマス・ソングを聴くようになってしまった(と思う)のですが、これは文化によるものだとも言い切れない!日本のチャートは今でもほとんどクリスマス・フィーバーが起こらないもので、今年も結局ピークでTop10に1曲入った程度だったのですが、2017年時点でアメリカも同じような感じだったことからこの現象は文化の違いだとは思えません。ストリーミング普及率の差があるとはいえ、日本の売り手も同じ経営戦略をとっています。つまり何が言いたいかというと、米国人、気が早い!!!(再) ....ということです。

 

②ピークのクリスマス・ウィークでは、毎年全体で何曲ランクインしてるの?

 クリスマス・ウィークとは、明確な定義はありませんが、だいたい集計対象の7日間すべてがクリスマス以前の日(~12/25)の週で、その中でもっともクリスマスに近い週のことです。なので、必ずしもクリスマス・ウィークはクリスマス・デーを含みません。このような意味でのクリスマス・ウィークでは、チャートにおける盛り上がりが最高潮に達します。このとき、実際に全体で何曲クリスマス・ソングがランクインしているかというと、

 2017 → 8曲、 2018 → 23曲、 2019 → 25曲、 2020 → 39曲、 2021 → 37曲

という感じです。2017 → 2018 の数字の変化から、2018年にクリスマス・フィーバーが本格的に始まったことが分かりますね。そして 2019 → 2020!!2019年時点でもうチャート全体の4分の1を占めていたのに、ここにきてさらに急騰!全体の3分の1以上を占めるようになってしまいました。要因を考えてみると、やはりロック・ダウンやステイホーム・ムードによる巣ごもり需要とかが関係あるのかなあと思います。今回 ( 2021 ) で全体数の上昇は終わり、一旦下がりましたが、2曲減ったからどうということはないです。近い将来、さらに全体数が伸びてチャート全体の2分の1くらいまで行きそうな気がしてきますね。やれやれ…。

 

③「新曲」クリスマス・ソングのチャート・アクション

 クリスマス・フィーバーでチャート上位を賑わせるのはほとんど昔の定番曲ですが、新曲も毎年いくつかランクインします。面白いのは、有名なアーティストが新たにリリースしたクリスマス・ソングが必ずしもチャート・インするとは限らないということで、去年マライア・キャリーが新たにリリースしたクリスマス・ソングは結局チャート・インしませんでした。クリスマス・ソングの新曲も、消費者によって厳選されるということですね。

 ところで、クリスマス・ソングにおける「昔」の定義をだいたいリリースから10年くらいたったものとすると、「昔」のクリスマス・ソングはチャート上のルールにより51位以下にはランクインできません。50位以上にランクインできるほどのポイントを得て初めて、50位以上にランクインできるのです。一方新曲はそのルールが適用されないので、51位以下にもランクインできます。この違いが、チャート・インしているクリスマス・ソングが新曲か否かを判断するうえですごく役立つのです。…どうでもいいか。

 以下、過去にランクインした「新曲」クリスマス・ソングとその最高位です。

 

  artist title peak
2018 Katy Perry Cozy Little Christmas 53
  Lauren Daigle The Christmas Song 55
       
2019 Jonas Brothers Like It's Christmas 44
  Taylor Swift Christmas Tree Farm 59
  John Legend Happy Xmas ( War Is Over ) 69
       
2020 Dan + Shay Take Me Home For Christmas 48
  Carrie Underwood & John Legend Hallelujah 54
  Justin Bieber Rockin' Around The Christmas Tree 61
  Carrie Underwood  Favorite Time Of The Year 62
  Kelly Clarkson & Brett Eldredge Under The Mistletoe 55
  Mariah Carey, Ariana Grande, Jennifer Hudson Oh Santa! 76
  Gabby Barrett The First Noel 78
  Carrie Underwood Silent Night 94
       
2021 Elton John & Ed Sheeran Merry Christmas 55
  Taylor Swift Christmas Tree Farm ( Old Timey Version ) 62
  Dan + Shay Pick Out A Christmas Tree 63
  Camila Cabello I'll Be Home For Christmas 71
  Kelly Clarkson Christmas Isn't Canceled ( Just You ) 79
  V Christmas Tree 79

 

 まず、年々新曲のランクインが増えていることが分かりますね。2017年はゼロでしたが、2020年は8曲でした。そもそも2018年にクリスマス・フィーバーがチャート上で確認されたから、その波に乗ろうとアーティストたちが新曲を出すようになったという因果関係もあるので、それを考えるとこの上昇は自然なものだともいえます。ちなみに2020年はキャリー・アンダーウッドの初クリスマス・アルバム『マイ・ギフト』がリリースされ、シングルとともにアルバム自体も大ヒットしていました。

 最高位を見てみると、全体的にあまり高くない印象を受けます。Top40入りしている曲はひとつもありませんね。これは、やはり新曲より昔の定番曲の方が人気で、新曲のチャート・アクションがピークを迎えるクリスマス・ウィークでもそれらはなかなか上位の定番曲を抜かせないことに起因します。また、クリスマス・ウィークでは当然定番曲の方もピークを迎えるので、上位にさらに多くの定番曲がランクインします。このため、いくら豪華なコラボ新曲でもなかなかTop40入りは難しいのです。

 

 サマリー 

①・・・年々熱が高まっている!!

②・・・全体の3分の1を占有!!そして安定の増加率!!

③・・・ランクインする全体数は増えてるけど、まだまだ定番には敵わず!!



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