カナダのシンガー兼ラッパー、トーリー・レインズ。
過去5作に比べ反響が限りなく小さかった6thアルバム『Alone At Prom』(2021) から、
収録曲 "The Color Violet" がチャートを上昇中。
"taLK tO Me with リッチ・ザ・キッド" (2018)、"Jerry Sprunger with Tペイン" (2019) を聴いたことがあるけど、
曲単体のヒットは約4年振りになる。
投稿が遅くなりましたが、1月にイギリスの2022年の年間チャートが発表されました。
本当にひっそりと公開された感じなので、紹介する意図も含めてレビューをしていきます。
<Top10>
タイトル | アーティスト | ジャンル | |
1 | As It Was | Harry Styles | ポップ |
2 | Bad Habits | Ed Sheeran | ポップ |
3 | Peru ( Remix ) | Fireboy DML, Ed Sheeran | アフロビート |
4 | Go | Cat Burns | R&B |
5 | Shivers | Ed Sheeran | ポップ |
6 | Running Up That Hill ( A Deal With God ) | Kate Bush | ロック |
7 | Heat Waves | Glass Animals | ロック |
8 | Where Are You Now | Lost Frequencies, Calum Scott | EDM |
9 | Afraid To Feel | LF System | EDM |
10 | Seventeen Going Under | Sam Fender | ロック |
(コメント)
> ハリー・スタイルズの "As It Was" が堂々の1位でした!アメリカ版年間チャートでは後述の "Heat Waves" に敗れ2位でしたが、出身のイギリスでは1位がとれましたね!ハリー・スタイルズの英年間チャートTop10入りは、2020年の "Watermelon Suger" 10位以来2度目で、もちろん1位は初めてです。このチャートをもとに、"As It Was" が2022年にイギリスで最も売れた曲と紹介されても、誰も不平を言わないような圧勝だったのではないでしょうか。コングラッチュレーション!!!🏅
> 前年の英年間チャート制覇曲、"Bad Habits" が2位につけたのはちょっと驚きました。単純に自分がしっかりUKチャートを見てなかっただけかもしれませんが、そんなに上位にいる期間、長かったっけ?と不思議な気持ちです。確かに同曲がリリースされた2021年はUKチャートのTop5には常に居座っているほど強かった印象で、それもあって2021年の英年間チャートは "Bad Habits" の圧勝だったのですが、2022年はもはやTop10にすらいなかったような気がします(イギリスは変遷が速い)。なので、2年連続の好記録は不思議でした。😮
> "Peru" は強かった!!1年中チャートで見ていた大ヒット曲!イギリスにおいて、バーナ・ボーイが広めたアフロビート・ミュージックをさらに広めたような大ヒットでしたね、自分はこの曲でジャンルの特徴が少しつかめました。サビの繰り返しがもっとあった方がいいように感じてしまうのですが、とはいえエド・シーランが加わったことで曲はかなりキャッチーになっていますね。🌴
> 4位のキャット・バーンズさんはポップ寄りのR&B歌手、といったところでしょうか。しっとりした歌声が聴き心地のいい人で、"Go" は恋愛関連の楽曲みたいです。サム・スミスがリミックスで参加したということもあってか、UKチャートではTop5に11週、Top10には17週チャートイン。変遷の速いUKチャートで、超ロング・ヒットしました。しっとりした歌声のまま、サビの最後で「あなたのうざったらしい荷物全部まとめて、出ていって」ときたのはインパクトがありましたね...。🚪
> エド・シーラン "Shivers" が5位!こっちは納得です。アメリカ版年間チャートでは "Bad Habits" > "Shivers" となるだろうと予想していたところ逆で(しかも差がけっこうあった)、イギリス版では "Shivers" > "Bad Habits" が普通だろうと考えていたらこっちも逆でした。年間チャートの集計って、けっこう単純だった気がしたのですが、もしかしたら色々変わってきているのかもしれません。とはいえ、これで今回もエド・シーランが年間Top10入り、しかも2曲!
> グラス・アニマルズの "Heat Waves" は、2021年の英年間チャートでも8位を記録していて既にTop10入りを果たしていましたが、意外にも2年連続のTop10入り、しかも7位なので前年超えです。異常なレベルのロング・ヒットが功を奏した感じですかね。メディアで「オルタナティヴ・ロックとヒップホップの融合」みたいな紹介文を見るとちょっとよく分からなかったのですが、バックのビートのことでしょうか、何となく分かってきた気がします。
> "Afraid To Feel" が9位に滑り込んでくれたのが一番嬉しかった!!後半期のヒット曲で、集計期間の都合上年間チャートではどうしても不利になってしまう可能性が高かったのですが、なんとかTop10入りできた!同曲はUKチャートで8週連続1位を記録したモンスター・ヒットで、個人的に上の10曲の中では一番好きです。本当によかった...。
> サム・フェンダーさんもギリギリTop10入り!2021年末から2022年夏ごろまで大ヒットした "Seventeen Going Under" で、自身初の英年間チャートTop10ランクインです。1曲の中にたくさんの主張が詰まっているような力強い、純粋なロック・ソング!ストリーミング向きの音楽だとは思えませんが、それでもよくこんなに大ヒットしたな...って感じですね。UKロックはヤングブラッドが新勢力の頭みたいに扱われることがあるように感じるのですが、サム・フェンダーさんもまったく負けていないと思います。
> ケイト・ブッシュの「神秘の丘(ア・ディール・ウィズ・ゴッド)」を含めて、ロックがなんと3曲も!!当然過去5年間では最多になります。その3曲が並外れていたといえばそれもそうなのですが、どのみち良い兆候!2023年も盛り上がってほしいですね。アフロビートもおそらく史上初の年間Top10入り、他方でヒップホップは久しぶりにゼロでした。
<#11~#20>
タイトル | アーティスト | ジャンル | |
11 | We Don't Talk About Bruno | Encanto Cast | サントラ |
12 | Make Me Feel Good | Belters Only, Jazzy | EDM |
13 | Cold Heart ( PNAU Remix ) | Elton John, Dua Lipa | ポップ |
14 | Starlight | Dave | ヒップホップ |
15 | Green Green Glass | George Ezra | ポップ |
16 | Where Did You Go | Jax Jones, MNEK | EDM |
17 | abcdefu | Gayle | ポップ |
18 | Baby | Aitch, Ashanti | ヒップホップ |
19 | About Damn Time | Lizzo | ヒップホップ |
20 | I Ain't Worried | Onerepublic | サントラ |
(コメント)
> "We Don't Talk About Bruno" は邦題「秘密のブルーノ」。去年の前半期にUKチャート7週連続1位を記録したものの、年間チャートでは11位とTop10入りを逃してしまったのは、ピークを過ぎてからの下降スピードの速さが主要因として挙げられます。確かにミラベル(エンカント)のサントラは前半期にブームになっていましたが、1年を通して、という感じではありませんでした。🎦
> 12位、13位とEDM系の音楽が連続。"Cold Heart" はエルトン・ジョンとデュア・リパはどちらもポップ歌手ですが、リミックス・アーティストのプナウがダンス・ミュージック系の人で、リミックスによって曲はダンス・ミュージックの色合いが濃くなっています。ただ、明らかに、って感じではないので、定義は実際のところちょっと微妙かもしれません。
> 英ラッパー、デイヴの "Starlight" が14位について、ここで初めてヒップホップがランクイン。チャートでの成績は頗る良いのにもかかわらず、彼は意外にも英年間チャートTop10入りの経験がありません。"Starlight" は出だしこそ良かったものの、ロング・ヒット性がいまいちでしたね。
> 15位のジョージ・エズラ "Green Green Glass"、MVが大好きでした。強盗コンビが主役の、やや混沌とした逃走劇みたいな感じだったのですが、最後にどんでん返しがありましたね。二人は強盗をはたらいた店から車で逃げ、人里離れた草地にやってきてそこに車を停め、穴を掘って奪った札束を埋めて帰っていくのですが、帰った後に、これまで二人の様子をずっとそばで客観視していたジョージ・エズラがにんまりと笑って、二人が埋めた穴を堂々と掘り返していったというオチです。結局主役はジョージ・エズラだった、という。💶
> イギリスでは2022年に1週間だけ1位を記録したことがあるゲイル "abcdefu"、前の年に日本でも同じように怒りがあらわなマッド・ソングが流行ったよなあ...と思いながら同曲のチャート・アクションを追っていました。共感性だけではなく、キャッチーな音楽や多種のリミックス・バージョン配信も大ヒットに貢献したと思っています。なんの偶然か、アメリカ版でも17位でした。🦴
> 18位、19位はヒップホップが連続。まあ、後者はチャート的にはR&Bかポップですが...。英ラッパーの Aitch さんは2019年頃から売れてる人で、この "Baby feat. アシャンティ" はアシャンティの2000年代前半、デビュー期の大ヒット曲 "Baby" をリミックスしたものですね。アシャンティはアメリカの女性R&Bシンガーで、自分はその頃の "Foolish" という別の曲しか聴いたことがなかったのですが、一時代を築いた方らしいです。..."Foolish" は、普通に好き。
> "About Damn Time" もいい曲!古き良きディスコ・ミュージックへのリスペクトが感じられるリゾさんの音楽は、現代ポップ・ミュージックにすんなりとそういうギラギラした要素を入れることに成功したかのようなイメージで、MVでもディスコ・ミュージックの「フィーバー」感が100%再現されていました。...とはいえ、自分がリゾさんのそういう音楽性を言葉で知って理解したのはつい最近で、メジャー・デビュー期の2019年は正直まったく分かっていませんでしたね...。
> 結果、Top20で一番多かったジャンルはポップ(6)で、次がEDM(4)、その次がロックとヒップホップ(3)でした。ロック以外は、自分がUKチャートに対して持っているイメージとほとんど同じでしたね。しかしながら、真に注目すべきはそこではないような気もしていて、ジャンルの多様性が今回は重要かもしれません。アーティストのメイン所属ジャンルで判断することをやめ、曲の音楽性で判断するようにすれば、大枠でも10近く今回のTop20内にジャンルが存在しているような気がします。ただ、まあやっぱりその方法だとジャンル融合的な曲は特に定義があいまいになっちゃうし、そもそも自分ははっきり一つ一つをジャンル分けして覚えたい性格なので、融合的な音楽が主流になっていくなかジャンル分けは時代遅れで語弊を生んでしまうかもしれませんが、ご容赦ください。🍀