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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

児童虐待相談・通報件数過去最高 いじめ・虐待対策は地域ぐるみで子どもを育てること 子ども未来通信24 

2012年07月26日 | 子ども未来法律事務所通信

 

 児童虐待が社会問題として認識されるようになり、2000年に「児童虐待防止法」が制定されましたが、相談件数は増加する一方で、対応が困難なケースも多くなっています。

 2012年7月26日、全国の児童相談所(児相)が2011年度に、児童虐待の相談・通報を受けて対応した件数は、前年度より3478件多い5万9862件(速報値)で、過去最多を更新したことが、厚生労働省のまとめでわかりました。厚生労働省が1990年度に調査を始めて以降、21年連続!の増加です。

 さらに、児童虐待を検証する厚生労働省の専門委員会の分析によると、2010年度に心中(未遂を含む)による虐待死は37件47人、心中以外の虐待によって子供が死亡した事例は45件51人であったこともわかりました。年齢は3歳以下が43人と8割を超え、最多は0歳の23人です。

 しかも、2010年度に虐待で死亡した児童のうち、痛ましいことに3歳以下の割合が84・3%に上り、過去最高となりました。いわゆる「望まない妊娠」も一つの原因なのでしょう。

 私が、これまでやってきた少年事件でも、幼い時から酷いいじめや虐待を受けてきた非行少年がいかに多かったか。いじめや虐待は少年少女たちの心を確実に傷つけ、その子の一生に影響を与え続ける場合が多いのです。

 学校での体罰を含め、いかに子どもへ暴力が幼い心を傷つけるのか、我々は心しなければならないと思います。


 ところで、児童虐待というと、そのような殴る・蹴るといった身体的な虐待を思い浮かべがちですが、病気になっても病院に連れて行かない、食事を与えないなどの「ネグレクト」、 子どもを無視する、拒否する、暴言を吐くなどの心理的虐待、性的な虐待など、子どもの心身の成長や人格形成に悪影響を与えるものすべてを含むのが児童虐待です。

 マザー・テレサがおっしゃったように、「愛の反対語は無関心」なんですね。

愛の反対語は憎しみ?それとも虐待?? 子ども未来法律事務所通信6


 このように複雑な児童虐待ですが、児童福祉司の中には100件以上の対応児童を抱え、過労とストレスの極限状態で働き続ける人も多いのです。彼らは別に虐待だけを相手にしているわけでなく、この虐待対応の増加は現場に重くのしかかっています。

 こども未来財団(東京都)の調査では、虐待対応のストレスが原因で配置転換や休職した職員がいる児相は全国で3分の1に上っています。多くの児相では一般職員が2~3年で異動です。ところが2000年から2010年度までの11年間で、相談件数は4.7倍以上に膨らんでいます。

 児相の職員は、困難な状況にある子どもを救うという、専門性が高い、非常に難しい仕事です。しかも、虐待を疑われたと親に暴言を吐かれ、子どもの生き死にがかかっていると家庭の状態を見極めようと緊張する毎日です。それで、児童相談所の相談員が自らのことを相談する事態になっているわけです。

 また、全国に206ある児相のうち128カ所にある一時保護所は、児相のある69自治体の45%が10年、定員を超えて児童を受け入れています。児童虐待を含む、困難な状況にある子どもたちに対する対策は、人的にも物的にもまるで足りていないのです。


 そして、相談・通報件数は、大阪府が8900件と最も多く、神奈川県7296件、東京都4559件が続いています。大阪は人口が東京の半分なのに相談件数が倍、つまり人口比で4倍近いという事態になっています。

 これは、東京都の相談件数が少なすぎるともいえますが、専門家の間では虐待の要因には貧困や社会的孤立、親の未熟性などがあり、大阪では貧困層が広がっているため、相談件数も増えているのではないかといわれています。石原東京都知事や松井大阪府知事、橋下大阪市長には、子どもたちの未来のために、この児童虐待問題に力を入れてほしいものです。

 また、公務員を減らす議論ばかりしている今の世相ですが、この児童相談所の職員たちのように、まるで足りない人数で精神的に追い込まれながら、国民の幸福のために必要不可欠な仕事をしている人たちがたくさんいることを、我々国民も理解しなければいけないと思います。減らせばいい、叩けばいいというものではありません。

 児童虐待防止法では、虐待を発見したり、疑われる場合は、通告を義務づけています(通告したケースで実際には虐待がないことが確認された場合でも罰せられることはありませんから安心してください)。

 家の外から大きな怒鳴り声や物音が聞こえる、だとか、子どもの体に外からでも見える虐待の跡があるという場合も多いのですが、たとえば子どもの虫歯や耳垢が目立つ場合に、ネグレクトが多いという報告もあります。

 そこまで行く前に。

 はじめから虐待をしようと言う保護者はいないのです。たとえば、子どもをどうしても愛せないと悩むとき、そのことを率直に相談できる相手がいれば、理想の親や愛情などこの世にはないことを知って、安心し、虐待がだんだんと減ることもあります。子育て家庭を温かく見守る地域のなにげないサポートや声かけが、虐待予防に繋がります。

 孤立が一番よくありません。人の心を開かせるのは、周りの関心。愛とは関心を持つことです。

 いじめも虐待も、一人の親、一つの家族には手に余るものです。自分と他人の無力を知り、そのうえで他人の子供でも口を出す。地域ぐるみで子どもたちを育てる意識が何より大切だと考えます。

児童虐待を止められない親御さんに あなたはやめられる  子ども未来法律事務所通信8

 

 

好きで我が子を虐待する親はいない。

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毎日新聞 2012年07月26日 13時07分(最終更新 07月26日 13時22分)

児童相談所での児童虐待相談対応件数
児童相談所での児童虐待相談対応件数

 厚生労働省は26日、全国の206児童相談所(児相)が11年度に対応した児童虐待(18歳未満)の件数が前年度比5.7%増の5万9862件(速報値)となり、過去最多を更新したと発表した。増加率が速報値ベースで28.1%に達した前年度に比べると増え方は鈍化、同省は「警察との連携が奏功した自治体もある」と分析している。

 都道府県と政令指定都市・中核市別では、大阪府(大阪市、堺市除く)が5711件で最多。東京都が 4559件で続いた。前年度からの増加率が高かったのは▽新潟市(1.52倍、563件)▽相模原市(1.37倍、778件)▽名古屋市(1.36倍、 1129件)など。東日本大震災と福島第1原発事故の影響で、前年度は集計から除かれた福島県は259件だった。

 虐待する恐れのある家庭への児相の強制立ち入り調査は11年度は1件、対象児童2人(10年度は2件2 人)だけ。親がきょうだいの登校を長期間禁止し、学校や児相が繰り返し訪問しても接触できなかったケースだった。強制立ち入りに先立つ「出頭要求」は26 件35人と前年度(50件72人)から半減した。

 

「背景に望まない妊娠」 児童虐待死亡例が微増 平成22年度、45件51人 3歳以下が8割超

2012.7.26 14:39 産経新聞

 平成22年度に心中以外の虐待によって子供が死亡した事例は45件51人で、21年度(47件49人)から人数でわずかに増加したことが26日、 児童虐待を検証する厚生労働省の専門委員会(座長・才村純関西学院大教授)の分析で分かった。年齢は3歳以下が43人と8割を超え、最多は0歳の23人。 児童相談所が事前に関わっていたケースは7件あった。心中(未遂を含む)による虐待死は37件47人だった。

 0歳児を中心に低年齢の死亡 事例が多いことについて、才村教授は「10代の妊娠をはじめとした“望まない妊娠”が背景にある」と説明。専門委は、望まない妊娠を相談できる体制の充実 ▽養育支援を必要とする家庭への支援促進▽地域の関係機関が連携を図り児童虐待などへの対応を行う「要保護児童対策地域協議会」の活用-などを提言してい る。

 心中以外の虐待の種類は、身体的虐待が32人でネグレクト(育児放棄)が14人。主な加害者は実母が30人と最も多く、次いで実父が 7人、実母の交際相手が4人だった。実父母以外の加害者が虐待をした動機としては「泣き止まないことにいらだった」「しつけのつもり」などがあった。

 

毎日新聞 2012年07月26日 13時10分(最終更新 07月26日 13時20分)

 11年度6万件に迫っていたことが分かった児童相談所(児相)への虐待相談件数。増加は厚生労働省が 90年度に調査を始めて以降21年連続で、一時保護施設はパンク状態、人員不足も慢性化している。児童福祉司の中には100件以上の対応児童を抱え、過労 とストレスの極限状態で働き続ける人も。虐待対応の増加は現場に重くのしかかっている。

 全国206の児相のうち128カ所にある一時保護所。厚生労働省によると、児相のある69自治体の45%が10年、定員を超えて児童を受け入れていた。

 定員いっぱいの40人前後を受け入れている九州地方の児相はピーク時の2年前には52人を保護してい た。「日中は小学生から高校生まで、非行も不登校の子供も同じ大部屋。虐待を受け感情を抑えきれない子供も多いので、ストレスもリスクも増える」。入所し ている男子中学生に胸倉をつかまれ「はよ出さんかい」とすごまれた経験もある担当課長はこう話す。

 西日本の40代の元児童福祉司の男性は、自ら希望した児相勤務の5年目でうつ状態に陥った。多くのケースを抱え、次第に遅くなる帰宅。子供を保護すべきだと訴えても及び腰の上司。職場を移った今も「懸命な職員ほど燃え尽きがちだ」と感じている。

 福岡市こども総合相談センターでは、元係長が、虐待を受けた子供の施設入所の更新手続きを怠り、家庭裁 判所の審判書類を偽造していたことが発覚。今年3月、福岡地裁で執行猶予付き判決を受けた。判決は「結果は軽視できないが、繁忙な職務の末、犯行に及んだ 経緯には同情の余地がある」と指摘。深刻な虐待を中心に元係長は166件ものケースを担当していたという。

 こども未来財団(東京都)の調査では、虐待対応のストレスが原因で配置転換や休職した職員がいる児相は 全国で3分の1に上る。親に暴言を吐かれ、家庭の状態を見極めようと緊張する毎日。専門性の高い仕事なのに、多くの児相では一般職員が2~3年で異動す る。児相の人員が2倍に増えた10年度までの11年間で、相談件数は4.7倍以上に膨らんでいる。【野倉恵、遠藤孝康】


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