こういちが康一でコウイチ

パロロワ書き手の康一君の、なんか、そんな感じの。

指芋一週間

2018年01月21日 | 日記
今週は指芋一週間であった。

などと言ったところで、指芋とはなんだと思われることだろう。
説明をすると、左足の小指がサツマイモになったという意味である。
さらに説明をすると、足を思い切り自転車に轢かれて、しばらくして確認したらサツマイモ色に変色をしていた、という意味である。

轢かれた時点では、まさか指芋になるなんて思ってもいなかった。
水曜日の朝、いつものように駐輪場で自転車を普通に手押ししながら借りているスペースまで歩いていたところ、横から立ち漕ぎで突っ込んできた自転車に轢かれたのである。
轢かれた瞬間、思わずキレてしまった。
左足に走った予期せぬ鋭い痛みに思わず「いってえな!!!」と叫び――
(省略されました)
どう考えても俺は悪くなくてあちらが悪いのだが、お互い急いでいるし、問題なく歩けるみたいだし、こっちも咄嗟にキレてしまったりしたので、その場はなあなあで済ませて終わらせた。

問題はその後である。
痛みが引かない。一向に引かない。むしろ増していく。
歩けているので大丈夫だろうと思っていたが、どうも大丈夫ではないらしい。
タイミングを見計らって靴下を脱いで確認をしてみると、足の小指の裏面が第一関節を中心としてじわじわとサツマイモ色に変色していた。
普通に駅に向かって電車なんか乗ってる場合じゃなかったし、連絡先を確認しときゃあよかった! ていうかもっとキレておくべきだった! なあなあで済ませるんじゃなかった!
どんなに後悔しても、もう同じ時間に例の彼が駐輪場に来ることはないだろうし、会うのは難しいだろう。悔しい。
俺は水曜日の昼前ごろ、左足の小指をサツマイモにしながら悔しがっていた。

その日はずっと痛かった。
昼休みは痛みで上手いこと歩けず、夕方まではずっと絶対に病院に行こうと思っていた。
ずっと思っていたが、薬局で買った痛み止めを飲んでいざ夜を迎えてみると問題なく歩けたし、小指を動かすと痛いだけで動くことは動くのでどうも折れていないようだった。
明日さらに悪くなっていたらヒビを疑って病院に行こう。
そう決めた俺はジムに向かい、スクワット系の運動がある筋トレをせずに、足の指に負担がかからないエアロバイクを選択をした。賢い。
運動を終えて服を脱いでみると、小指の変色は裏面だけで止まらず全面に浸食しており、色はもはやサツマイモを越えてナスになっていた。
なんてこった。病院に行けばよかった。運動をするのは絶対に間違っていた。なにがエアロバイクは賢い選択だ。悔しい。
俺は水曜日の夜、左足の小指をナスにしながら悔しがっていた。

しかし病院に行かなくてよかった。
寝て起きてみれば、足の色はナスから煮込んだニンジンに変化していた。
赤黒いよりも赤いほうがよほど健康そうだ。歩いてみれば、振動で響く痛みが昨日より少ない気がする。
よかった。正しかった。昨日の後悔は間違っていた。今日振り返れば、間違いなく正しい選択であった。朝ご飯がおいしい。
木曜日の朝、左足の小指を煮込んだニンジンにしながら小躍りしたい気分だった。

そして、日曜の夜だ。
歩くと多少痛むので歩き続ける休日を過ごすことはできなかったが、でも間違いなく回復してきている気がする。
一昨日辺りまでは日野菜漬け色だったが、いまとなっては少し腫れた小指である。誰がどう見ても小指と言うだろう。
指芋一週間を経て、一週間前と同じ人間の小指を取り返したのだ。
俺は日曜日の夜、左足の小指を人間のものに戻しながら、もう二度と指芋一週間が来ないことを祈っている。