【写真】ナイロビのハイレ・セラシエ通りを走る公共ミニバス「ンガニャ」 撮影:KANEREKANEREゲストライター アレックス・イケンビ
新型コロナウィルスの対策には成功と失敗の両側面がある。
2020年2月28日に発令されたケニア共和国大統領令2に伴い、国家緊急対策委員会が設立され、国の新型コロナウイルス対応策の強化と調整が行われることになった。委員会の任務には感染拡大防止戦略の実施とその効果の評価が含まれている。数ヶ月後、KANEREはナイロビの公共交通でコロナ対策がどのように実行されているかを検証した。
公共交通は新型コロナウイルス感染拡大のコントロールが特に難しいとされている部門だ。道路公共事業省の首席秘書官であり委員会のメンバーであるチャールズ・ヒンガ氏は、公共交通機関における一連の感染拡大防止策を講じた。
対策として、すべての公共交通機関に運行ごとの消毒と乗客全員のマスク着用、手指の消毒を求め、乗客を定員の6割とすることが定められた。また、乗車賃の支払いに加えて乗客の追跡調査を可能にするために、モバイルマネーによる運賃の支払いを義務付けた。
町とオンガタロガイ間の混雑した路線でマタトゥ業を営んでいるジェニファー・ムシアキースさんによると、道路公共事業省が導入した防止策発令後わずか1ヶ月で、運転手たちはこの防止策の実施の難しさを実感した。
実施が難しいのは、乗客が意図的もしくは経済的事情によって規則に従わないためだという。
「問題は、規則が乗客にとって何の意味もなさない場合があることです。通常は乗客に指定された座席にのみ座るように言いますが、同じ場所から来たので一緒に座りたいと主張してそれを拒む人もいます。また、たとえば4人の子どもを連れた女性が、子供のための追加料金を買うお金がないと訴えることもあります。そのような場合でも私たちは彼らを乗せざるを得ないのです」
ジェニファーは、大勢の子供を抱えている人や経済的に困窮している客の乗車を拒否することは不条理だと言う。女性としての彼女の優先事項は、夜間外出禁止令が始まる夕暮れ前に母親とその子供たちが家に帰れるようにすることだ。
「母親として、私もそうした状況によく見舞われます。時に、私たちは人間らしくあるために敢えて法を犯します。その人は4人の子どもと荷物を抱え、必要な座席分の乗車賃を払う余裕のない母親ですよ。私はどうすれば良いのです? 母親が乗車賃を払えないからといって、子どもを置き去りにすべきだと思いますか?」
一方で、彼女は全乗客に義務付けられているマスクの着用拒否は許すべきでないと断言した。
発令後数週間は、公共交通車両の運行毎の防疫と消毒に関する首席秘書官からの命令は遵守され、ほとんどのマタトゥが中央駅のバスターミナルに集められ、消毒されていた。しかし、14人乗りのロンガマタトゥの運転手、デイヴィッドによると、無秩序に行われる消毒のために運転手は50ケニアシリングを払わなくてはならなかった。デイヴィッドは、運転手の日給が日々減っていく中で、これは持続可能な感染対策ではないと言う。また、消毒することによって車両が汚染されているのではとの恐れを乗客に抱かせることに気づいた運転手は、消毒をやめたことも明かした。
「当初私たちは、ターミナルに来ている消毒作業者に運行の都度50ケニアシリングを支払って消毒させていましたが、金がない上に通常より乗客を減らして運行している者にとって、これは高い出費です。また乗客はマタトゥが消毒されているのを見ると、その車両がウィルスに汚染されたのではないかと考えて乗車することを恐れるんです。車両が消毒を受けているとき、感染者が出たと思い込んだ乗客が逃げたこともありました。こういうことには、もううんざりです」
KANEREの取材によると、停留所間または短距離のマタトゥでは、道路交通事業省の命令に従って乗客の消毒を行っている運転手はあまりいないことが判明した。彼らの大半は、命令は現実的ではないとみなして乗客を消毒せずに乗降させていた。タウン南C路線を運行している運転手のひとり、ニクソン・モガカは次の様に述べている。
「ナイロビでは、停留所間の距離が短く100mしかない場所もある。特にラッシュアワーは、時間の制約もあり乗客の消毒が難しい。夜間外出制限が始まる時刻になっても、我々の賃金どころかマタトゥの売り上げ目標さえも達成できていない。そのような状況で消毒する時間をどこで取ったら良いのか? 売り上げ目標を達成するためには感染防止ガイドラインを無視してリスクを負わざるを得ない。繰り返しになるが、このルートの乗客は皆急いで乗り降りする。乗車してから5分後には下車するような乗客をいちいち消毒するのは難しい。消毒が高くつく事がわかり、過去3週間は消毒をしていない」
公共交通部門における広範囲の感染防止策は、現在の経済情勢から運転手と乗客の双方にさまざまな反応を引き起こしている。たとえば、ほとんどの公共車両の所有者の収益は運行に依っており、彼らはその売り上げから運転手の給料やメンテナンス費用を工面している。一方で運転手は、自分の給料から燃料や交通警察官への賄賂、ターミナル利用税を支払わなくてはならない。デイヴィッドによると、乗客が指数関数的に減少し車両の運搬能力がほぼ半減したことを考えると、日々の売り上げ目標を達成することは非常に難しくなっているという。
「この法令に圧迫されているせいで、我々の日々の努力は無駄になっています。現在、14人の乗客定員のうち8人しか乗せておらず、1回の運行での売り上げは400ケニアシリングにしかなりません。以前は燃料を補給するまでに3000から3500ケニアシリングほど稼いでいて、夕方には運転手と私は少なくとも1000ケニアシリングを家に持ち帰っていましたが、今は売り上げが1000から1500ケニアシリングで燃料を補給しなければなりません。我々は午前4時に起き午後9時まで働いていますが、稼ぎが500ケニアシリングに満たない日もあります。家族がいて家賃を払わなくてはならないというのに」
同様の不満は、一部の乗客にも明らかに見て取れた。カワングワレに通勤しているパトリックは、ケンコムの停留所で、利益を上げるために乗客の命を危険にさらしていると、マタトゥの運転手を非難していた。
「座席の配置を変更するか補助席を取り払うべきです。今は、マタトゥに乗ると隣に別の客が座るので安心できません。乗客は満席の車両には乗るべきではありません。政府が現在の法令を取り下げて代わりに補償を支払わない限り、交通部門の安全策は機能しないと思います」
ナイロビの公共交通部門では、いまだ広く新型コロナウイルスの感染予防措置が実施されているが、乗客は現在も続いている問題の長期的な解決策を求めている。
新型コロナウィルスの対策には成功と失敗の両側面がある。
2020年2月28日に発令されたケニア共和国大統領令2に伴い、国家緊急対策委員会が設立され、国の新型コロナウイルス対応策の強化と調整が行われることになった。委員会の任務には感染拡大防止戦略の実施とその効果の評価が含まれている。数ヶ月後、KANEREはナイロビの公共交通でコロナ対策がどのように実行されているかを検証した。
公共交通は新型コロナウイルス感染拡大のコントロールが特に難しいとされている部門だ。道路公共事業省の首席秘書官であり委員会のメンバーであるチャールズ・ヒンガ氏は、公共交通機関における一連の感染拡大防止策を講じた。
対策として、すべての公共交通機関に運行ごとの消毒と乗客全員のマスク着用、手指の消毒を求め、乗客を定員の6割とすることが定められた。また、乗車賃の支払いに加えて乗客の追跡調査を可能にするために、モバイルマネーによる運賃の支払いを義務付けた。
町とオンガタロガイ間の混雑した路線でマタトゥ業を営んでいるジェニファー・ムシアキースさんによると、道路公共事業省が導入した防止策発令後わずか1ヶ月で、運転手たちはこの防止策の実施の難しさを実感した。
実施が難しいのは、乗客が意図的もしくは経済的事情によって規則に従わないためだという。
「問題は、規則が乗客にとって何の意味もなさない場合があることです。通常は乗客に指定された座席にのみ座るように言いますが、同じ場所から来たので一緒に座りたいと主張してそれを拒む人もいます。また、たとえば4人の子どもを連れた女性が、子供のための追加料金を買うお金がないと訴えることもあります。そのような場合でも私たちは彼らを乗せざるを得ないのです」
ジェニファーは、大勢の子供を抱えている人や経済的に困窮している客の乗車を拒否することは不条理だと言う。女性としての彼女の優先事項は、夜間外出禁止令が始まる夕暮れ前に母親とその子供たちが家に帰れるようにすることだ。
「母親として、私もそうした状況によく見舞われます。時に、私たちは人間らしくあるために敢えて法を犯します。その人は4人の子どもと荷物を抱え、必要な座席分の乗車賃を払う余裕のない母親ですよ。私はどうすれば良いのです? 母親が乗車賃を払えないからといって、子どもを置き去りにすべきだと思いますか?」
一方で、彼女は全乗客に義務付けられているマスクの着用拒否は許すべきでないと断言した。
発令後数週間は、公共交通車両の運行毎の防疫と消毒に関する首席秘書官からの命令は遵守され、ほとんどのマタトゥが中央駅のバスターミナルに集められ、消毒されていた。しかし、14人乗りのロンガマタトゥの運転手、デイヴィッドによると、無秩序に行われる消毒のために運転手は50ケニアシリングを払わなくてはならなかった。デイヴィッドは、運転手の日給が日々減っていく中で、これは持続可能な感染対策ではないと言う。また、消毒することによって車両が汚染されているのではとの恐れを乗客に抱かせることに気づいた運転手は、消毒をやめたことも明かした。
「当初私たちは、ターミナルに来ている消毒作業者に運行の都度50ケニアシリングを支払って消毒させていましたが、金がない上に通常より乗客を減らして運行している者にとって、これは高い出費です。また乗客はマタトゥが消毒されているのを見ると、その車両がウィルスに汚染されたのではないかと考えて乗車することを恐れるんです。車両が消毒を受けているとき、感染者が出たと思い込んだ乗客が逃げたこともありました。こういうことには、もううんざりです」
KANEREの取材によると、停留所間または短距離のマタトゥでは、道路交通事業省の命令に従って乗客の消毒を行っている運転手はあまりいないことが判明した。彼らの大半は、命令は現実的ではないとみなして乗客を消毒せずに乗降させていた。タウン南C路線を運行している運転手のひとり、ニクソン・モガカは次の様に述べている。
「ナイロビでは、停留所間の距離が短く100mしかない場所もある。特にラッシュアワーは、時間の制約もあり乗客の消毒が難しい。夜間外出制限が始まる時刻になっても、我々の賃金どころかマタトゥの売り上げ目標さえも達成できていない。そのような状況で消毒する時間をどこで取ったら良いのか? 売り上げ目標を達成するためには感染防止ガイドラインを無視してリスクを負わざるを得ない。繰り返しになるが、このルートの乗客は皆急いで乗り降りする。乗車してから5分後には下車するような乗客をいちいち消毒するのは難しい。消毒が高くつく事がわかり、過去3週間は消毒をしていない」
公共交通部門における広範囲の感染防止策は、現在の経済情勢から運転手と乗客の双方にさまざまな反応を引き起こしている。たとえば、ほとんどの公共車両の所有者の収益は運行に依っており、彼らはその売り上げから運転手の給料やメンテナンス費用を工面している。一方で運転手は、自分の給料から燃料や交通警察官への賄賂、ターミナル利用税を支払わなくてはならない。デイヴィッドによると、乗客が指数関数的に減少し車両の運搬能力がほぼ半減したことを考えると、日々の売り上げ目標を達成することは非常に難しくなっているという。
「この法令に圧迫されているせいで、我々の日々の努力は無駄になっています。現在、14人の乗客定員のうち8人しか乗せておらず、1回の運行での売り上げは400ケニアシリングにしかなりません。以前は燃料を補給するまでに3000から3500ケニアシリングほど稼いでいて、夕方には運転手と私は少なくとも1000ケニアシリングを家に持ち帰っていましたが、今は売り上げが1000から1500ケニアシリングで燃料を補給しなければなりません。我々は午前4時に起き午後9時まで働いていますが、稼ぎが500ケニアシリングに満たない日もあります。家族がいて家賃を払わなくてはならないというのに」
同様の不満は、一部の乗客にも明らかに見て取れた。カワングワレに通勤しているパトリックは、ケンコムの停留所で、利益を上げるために乗客の命を危険にさらしていると、マタトゥの運転手を非難していた。
「座席の配置を変更するか補助席を取り払うべきです。今は、マタトゥに乗ると隣に別の客が座るので安心できません。乗客は満席の車両には乗るべきではありません。政府が現在の法令を取り下げて代わりに補償を支払わない限り、交通部門の安全策は機能しないと思います」
ナイロビの公共交通部門では、いまだ広く新型コロナウイルスの感染予防措置が実施されているが、乗客は現在も続いている問題の長期的な解決策を求めている。
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