@telier OWLのブログ(アトリエ アウルのぶろぐ)

くつと修理とその周辺…日々の記録です。

スタック巻革交換

2018-12-07 01:56:55 | 過去のブログ2021年10月まで
この前カカトを交換したばかりなのに
ヒールを擦ってしまい、中のプラスチックが見えてしまったとこのと。
巻革ヒールは…なりますね。
↓修理前

こういう、層が見えるタイプの革を『スタック』といいます。
修理方法の提案としては
①黒インク着色のみ→凹凸はそのまま
②部分革埋め&磨いて着色
→修理跡はうっすら見える
③ヒールを取り外して新しい革を巻く
=スタック巻革交換(両足)

③が最もきちんと修理する方法で、代金も上がります。今回お客様は③を選択されました。

↓使用するスタック革です。



巻革交換は、中敷きをきれいにはがすところからが勝負です。
そしてヒールの固定方法によって
楽に取り外せるか
予想外の労力を要するのか
…開けてみないとわからないのです。
固定方法はメーカーにより本当にいろいろなやり方がしてあります。今回の靴は真ん中の大ネジ(座=お皿みたいなワッシャーもついて強固)&釘5本で固定。
しっかり取り付けられているのは素晴らしいことですが…
しかし、ネジ山がないからドライバーではずせない!
(なんで?)



手動では無理ですので
道具を使い、外しました。
くい込んだ釘も抜きます


スタック革とプラスチックヒールに接着剤を塗布。


これでスタックヒールになりました。
ここから磨きます。


過去にも書いてますが
スタック巻革はとにかく磨くのが肝心です。艶有りで仕上げたい場合中途半端な磨きではインクを塗った時にざらつくので。
どこまで磨くか
どこでやめるか
いろいろなやり方を試して今に至ります。未だに研究中でもあります。

あとは、磨いて黒インクを塗って靴に取り付けます。取り付けには座付きネジを使います。ところが何故かネジを回しても入っていかないのです。プラスチックヒールのネジを取り付けたい中央の位置に鉄の棒があったのです。
(だから、なんで?)
どうやらピンヒールの金属芯のようです。元のネジはきっちり嵌まるものを無理矢理ねじ込んであったらしい。
通常この位置まで金属芯はないのですが、こういう構造ではは真ん中にネジは打てないわけです。
いろんな靴を修理していても
このように"すんなりいかない"ことがあります。初めて見る構造・資材。
特に直すことを前提に作られていない場合は苦戦します。
どうやったらうまくできるか…
こちらも常に研究中です。




↓修理後