@telier OWLのブログ(アトリエ アウルのぶろぐ)

くつと修理とその周辺…日々の記録です。

紳士靴のバックル交換

2021-11-19 12:46:41 | くつ修理
■靴の金具交換
靴に使われている金具
バックル
ホック・美錠付きホック
引っかけバックル
…などです。
金具が壊れた場合の修理は類似の金具への交換となります。まったく同じ金具で、というのは難しいです。ブランドオリジナルの金具などはもちろんですが、形状や色まで変わらず同じものは入手できません。靴の場合左右で対なので片足だけ金具が変わるのは目立ちます。両足揃えての交換を希望されることが多いです。

裏側に貫通して取り付けてあるホック以外はほとんど縫って取り付けてあるので縫いほどきが必須です。靴は分解するといっても限度があります。構造によっては元どおりの仕上げは難しいです。
※今回のバックル交換では修理後は縫い直しの縫い目は裏側に出ています。修理前にご説明しています。


破損ではありませんがゴールド色のバックルを黒のバックルに変えてほしいというご依頼です。
↓修理前


元の金具に革を巻くことも考えましたが、穴を通すピンの部分には巻けません。ピンだけゴールドも変かなと思い
黒メッキのバックルを取り寄せました。お客様は金具が変わるのは良いけれどメッキがはがれることを気にされていましたので黒革を巻いてから取り付けました。


↓革を巻きました。



↓修理後









紳士靴のヒールカット

2021-11-16 11:02:56 | くつ修理
■ヒールカット=ヒールの高い靴は足が疲れます。ヒールが高くて履きづらい靴を少しでも低くして履きやすくする修理です。
カカトゴムを取り外し、ヒールを削り、新しいカカトを取り付けます。
カカト交換とセットになります。
どのくらい低くできるかは靴によります。あまり低くし過ぎるとつま先が上がってかえって履きづらくなってしまいます。だいたい1.0~1.5㎝がカットできる限度です。靴によっては0.5㎝も切れないものもあります。たとえわずかでも足はかなり楽になると思います。
靴は木型の段階から高さが決められています。本来の設定を変えてしまうことはあまりおすすめできることではないのかもしれませんが、履くのがつらい靴が少しでも楽に履けるように最小限のリペアをします。
削っては平面に置いて何度もつま先や接地面を確認しながら作業しています。


以前すべり革の修理を依頼して頂いたお客様の蛇革の紳士靴ですが、ヒールが高くて結局その後もあまり履かれていないということでした。高さは5㎝強。確かに紳士靴では高めのほうだと思います。削れるだけ削ってほしいというご依頼を頂きました。

加工前



片足削りました。
2㎝弱カット…かなり低くなっています。




両足同じ高さに削り新しいカカトをつけました。これで完成です。






紳士靴は面積が大きいので2㎝カットできましたが、削り過ぎてはだめなので、慎重な作業です。

ガレージの整理(2012年夏)

2021-11-13 13:34:36 | @telier OWL(アトリエ・アウル)について
ひとりでくつを修理することにして、長年物置きとなっていたガレージを作業場とすることにしました。

ガレージには昔の農機具やリヤカーやたぶん50年以上前からのガラクタが詰まっていました。まずここをある程度空っぽにしないといけません。

夜は仕事に行って昼と休日はせっせと片付け作業をしていました。途中から通院の必要まで出てきました。ずっと痛いし気になるしで、テンションは下がりましたがやめようとは思えませんでした。

くつを直すために必要な機械(くつ底等を削る機械=グラインダー)について調べました。新品か中古かで悩みました。

機械を置くため電気工事や雨漏りや傷んでいる部分の修理をリフォーム業者さんにお願いしました。

資材の仕入れ業者さんと契約しました。

工具や道具を揃えました

作業机用に長い天板を買ってきて安いカラーボックスに取り付けました。

その他いろいろ、リサイクルショップやホームセンターや100均で買い揃えました。

2012年11月、グラインダー設置。
小さくもなく重たい機械です。設置場所の不便(道が狭いので大きな車が入りにくい)は伝えていましたが、購入先のオーナーさんが1人で約250kgある機械を手動リフトを押しながら運んで来られたのには驚きました。


これで「自分ひとりでくつ修理ができる場所を作る」という目標を達成しました。
とても嬉しかったのを覚えています。

最初っからお客さんが来ないことはわかっていました。私は自分ひとりでくつが修理できれば良かったのでそんなことは問題ではありませんでした。

こうして誰も知らないくつ修理屋(自称)を始めました。

明日になったら巣を作ろう

2021-11-07 16:41:55 | @telier OWL(アトリエ・アウル)について
【くつ修理をはじめるまでの話】

私にはずっとやりたいことがあって、
でも生活のために働かなければならず不器用な私はそれだけでいつもいっぱいいっぱいになってしまいます。

夜勤の仕事をしていたのは、昼空いた時間でそのやりたいことができると思ったからですが、夜通し働けば昼間は眠く現実は何も進められないのでした。
昼働こうが夜働こうが、他にどんな不利な条件があろうがやる人は寝る間も惜しんで目標に向かうはずです。
何年経ってもそれができない私にはきっとこれから先もできないのです。
私の夢はたぶん叶わない。
30歳を目前にそう思いました。

しかしこのまま向いてないと思っている仕事を続けるのはつらい。子供の頃から手先だけは器用だからそういう自分の特性を活かせる一生続けられる仕事を見つけたいと思いました。そこから革製品の修理の仕事に行き着くわけです。

もう若くもないし、未知な仕事に飛び込むのは一大決心です(泳げない人が足のつかないプールに飛び込む感じです。比喩ではなくほんとうに私は泳げません)。いままでは向いてない仕事ばかりしてきたけど、今度こそ好きになれる仕事をと思ってドキドキしながら修理店の面接に行きました。


くつを直すことはとても楽しかったのですが、数年後私は自滅してしまい修理の仕事を辞めました。
またしても『いっぱいいっぱい』になってしまいました。

時間を忘れて没頭して楽しいと思える仕事に出会えて天職にしようと思って
人生最大打ち込んで一生懸命やったのにだめだった…私は大きな挫折感と共に、もう二度とくつを直すことはないだろうと思いました。
ところが辞める日が近づいてくるとなぜかボロボロ泣けてきて、涙が止まりませんでした。私は自分が思っていた以上にくつ修理が好きみたいでしたしかし私自身は心身ともにもう限界で私生活がむちゃくちゃになっていたので、あのまま辞めずに続けていたら病んでいたかもしれません。

くつのカカトだけじゃなく自分自身も削ってしまうようではだめなのです。


それで結局私は元いた職場の夜勤に出戻りました。夕方出勤し、夜通し働いて朝帰って寝る生活です。向いてないし肉体的にもきついから転職したのに、戻ったら夜勤のほうが人間らしく暮らせるという‥。

生活が落ち着いて数年経った頃、あんなに辛い思いをしたというのにやっぱりくつが直したくなりました。
私はくつ修理が好きなのです。


いろいろあって2012年の夏頃には
自分ひとりでくつを修理する場所を作ろうと決めて、自宅ガレージを片付けて修理に必要な機械や工具を買おうとしていました。

場所はわかりにくい上に車も入ってきにくい。おそらくこんなところがお店だと言っても、お客さんは来ないだろう。
けれど、お店を持つ資金はないから自分が可能な条件でやる。
誰も来なくても、自分のくつを直すためだけにでも自宅にその環境を作るのだと強く思いました。

夜は仕事なので昼間にずっとそのことを考えていました。夜になると寝ないでそのまま職場に行きました。
理想の作業場を作ることを考えるのは楽しかったです。寝なくても全然平気でした。そんな生活を数ヶ月ほどしていたら体調を崩してしまいしばらく通院する羽目になりました。人間寝ないと免疫が下がって病気になるのです。その後しばらくはちょっと無理をしたら病気がぶり返してしまって大変不自由でした。でも計画を諦めたりはしなかったです。

悔しい出来事が続いて意地になっていたいたこともありますが、
元々抱いていた夢では発動しない
異常なエネルギーが(くつ)修理にはあったようです。



というわけで準備をしつつ
名称も決まったので
ふくろうに関してで何かキャッチフレーズになるようなよい言葉はないだろうかといろいろ調べました。 

『梟の宵だくみ』
ということわざを見つけました。
夜行性の梟が「明日から昼間に起きて巣を作ろう」と決心するが、そもそも夜型の梟は朝になったら寝てしまう=実行できない計画を立てること=なまけものの意
なのだそうです。 
なんだか自分にぴったりです。

愚かな行動を例えたことわざかもしれませんが、「明日になったら」と思うことは、たとえそれが叶わなくても生きる理由にはなるはず。

「明日になったら巣を作ろう」


アトリエ・アウルのロゴには
英語でこの言葉をいれています。
それは私にとっての希望の言葉でした。



名称

2021-11-04 01:35:00 | @telier OWL(アトリエ・アウル)について
@telier OWL(アトリエ・アウル)という名称について


店舗のスタッフではなく個人でくつ修理を始めたいと思った時、作業場をどうしようとか機械や道具や資材をどうしようとかいう問題と同時にどういう名前で活動するかということも考えました。

アトリエ(atelier)ってあちこちでよく聞くと思いますけど、フランス語で工房という意味です。主に芸術に関係する仕事場に対して使われているイメージです。

atelierの『a』には『@(アットマーク)』をあてています。アットマークは日本語で単価記号とも言うそうです(りんご1個100円はりんご@100と表せる)。

なぜすんなり読んでもらえないかもしれないのにわざわざ面倒なアットマークにしたかというと、そのときの自分がいろいろ行き詰まっていて単独で独立した何かになりたかったからだと思います。

そのときの私には意地でもひとりでくつ修理をやってやるという動機がありました。単価記号に別に独立した何かとかの意味あいはないのですけど、
@には、私のそんな勝手な思いがはいっています。

OWLは英語で梟という意味です。
オウルではなく、正確にはアウルだそうです。私は梟は姿かたちや生態や言い伝え・ことわざなんかも含めて昔から結構好きです。一時期ふくろうグッズ(小さい置物とか)を買い集めていました。その中のいくつかは現在の仕事場に並べたりしています。加えて、当時私は靴修理とは別で夜勤専属の仕事をしていました。むしろ修理は副業で夜勤がメインの仕事でした。夕方出勤して仮眠時間はあるものの夜通し働いて朝帰宅します。辞めたり出戻ったりでしたがトータルすると10年くらい夜勤生活を続けていました。 
(そのせいなのか夜勤の仕事を辞めても
私は現在も継続して夜型の生活です。)


アトリエってよく使われているしカッコいいけどOWLが英語なら工房も英語で統一した方が良いのだろうかと思って調べてみると英語で工房はスタジオというようでした。
スタジオ・アウル…?
だいぶいろいろ考え込んだのですがそれはなんかちょっと違うのでした。

「やはりアトリエ・アウルが良いし、atelierのaには@をあてるのが良い」

それで@tlier OWLになりました。

ネットでは@が表示できないのか、たまに『telier OWL』となっていることがありますが、後悔はなしです。