映画を観てやっと、
零戦の設計者・堀越二郎と、私の青春の初めの書でもある堀辰雄の「風立ちぬ」が
なぜシンクロしているかがわかった。
主人公二郎は、類稀な才能と戦争に突き進んでいく時代とに押され、
稀代の戦闘機零銭を生み出す。
しかしそれは、裏を返せば戦争への戻ることのできない大きな一歩を踏み出す要因ともなり、
夥しい犠牲者をうみだす原因ともなった。
「ただ美しい飛行機を作りたい」という純粋な言葉が、その免罪符になりえるかは
各人の判断がなされよう。
その重苦しさを救うのが菜穂子の存在である。
ここで、堀辰雄と堀越二郎をMIXしたんだね。
彼女の健気な姿は涙を誘う。
誰もが、この映画を観て、「戦争は二度と繰り返してはならない。」
と思うであろう。
凄惨な場面や戦闘の場面はなく、ただ描かれる日常だけでも、
それは静かに、が力強くメッセージを送っている。
「(零銭が)一機も帰らなかった。」 二郎のつぶやく言葉。
その漆黒の闇。
だが、どんなに辛く閉ざされた時でも
「生きねば」
宮崎駿の考えの原点ともいうべき
あの「ナウシカ」の全7巻のエンディングが交差する。