「傾国のラヴァーズ」

ボディーガードの翔真は訳有の美青年社長・聖名(せな)の警護をすることに…(閲覧者様の性別不問) 更新情報はX🐦にて

★小説「傾国のラヴァーズ」その57・軽い風邪

2023-06-02 10:04:00 | 傾国のラヴァーズその51~60
 聖名の体調は、結局次の日の土曜になっても直らなかったが、幸いにも、というべきか、相手の都合で商談は流れ、しかし月曜になった商談は金額が 折り合わず、保留になってしまった。

 聖名は会社に戻って 作戦のすり合わせを部下とすることにしたらしい。

 しかし、聖名は 高橋さんにきつく言われて、その日の午後は休み 行きつけの内科に行くことになってしまった。

 もちろん俺は付き添って行った。

 先生の見立てでは、疲れと軽い風邪とのことで、薬を出してもらってそのまま聖名は自宅に帰った。

 その次の日には…聖名が席を外している間に、高橋さんに…



◆小説「傾国のラヴァーズ」その56・聖名の体温、聖名の匂い

2023-06-01 21:47:00 | 傾国のラヴァーズその51~60
 さらにはこの人が 世襲議員ということがわかって、ますます がっかりしてしまった。
 
 それもよく読むと 三代目だという。

 初代である彼の祖父は自憲党を与党にするために先頭に立ったが、
実現直前で病に倒れた。
 そうでなければ 初代総裁、総理大臣になれたはずという。
 
 そして2代目である父は政局の混乱のため 2度目の総裁選を辞退するはめになり…

 それでこの伸一郎という人が、今度こそと周囲の期待を背負っているらしい。

 まあ俺の目には、庶民の暮らしも苦労も知らない坊ちゃん育ちのエリート おじさん。そんな風に見えた。

 金絡みより女性絡みのスキャンダルに引っかかりそうな脇の甘さがどうしてか感じられた。
 …まあこんな時代に生きている若者としては、政治家にはいい仕事をしてもらわなければ困るのだ。

 …聖名のお祖父さんのように。


 …隣で 聖名がもぞもぞ と動く。

「センパイ、 肩貸してもらっていい? 寂しいけどやっぱりベッドで寝る」


 俺は言われるがままに聖名に肩を貸して、ベッドまで連れて行った。

 聖名の体温。
 聖名の匂い。
 
 それを感じた時…その時俺の中で、何かが変わった。


 でもそれは自分でも認められない。目をそらすしかない。

でも、この聖名の案件が終わったら、転職はしようかと思い始めていた…



■小説「傾国のラヴァーズ」その55・気になる男

2023-05-24 18:41:15 | 傾国のラヴァーズその51~60
 案の定、 聖名はぐったりと ソファーにもたれかかって座っていた。
「俺がやるから休んでろよ。カフェオレの方がよくないか?」
「あ、そうかも。お願いします」

 カフェオレをひと口飲むと聖名は、

「矢野会長がとうとう 上京してくるんだって。俺を説得するために」

「え? いつ?」

 俺は覚悟していたはずなのに、 言われると驚いた声をあげてしまった。

「2週間後…ごめん、 詳しいことは後で話すよ」
 そこまで言うと、すぐに聖名はその場で目をつぶって眠り始めた。

 俺は聖名の部屋から厚手の毛布を持ってきてかけてやった。

 一人で寝るのが嫌だったように見えたからだ。

 それで俺は彼のそばに座っていることにした

 新聞を広げるのもうるさいだろうと俺は、スマホでニュースをチェックすることにした。

 色々見ていくうちに、「与党のプリンス」とか「総理大臣候補」と書かれた、どこかで見た男性の写真とインタビューが出てきた。

(あ、さっきのニュースで見た人か…)

 瀧川伸一郎。53才。

 聖名と同じ某一流私大を卒業して…農林水産大臣…外務副大臣…最近ではLGBT問題に取り組む…など経歴は華々しい。

(でも、何か頼りなさそうに見えるなあ…)




●小説「傾国のラヴァーズ」その54・聖名はフリー?

2023-05-23 16:03:31 | 傾国のラヴァーズその51~60
「俺がいるからこの1ヶ月 は遊びに来ないんだろうな って思ってた」
「でもさ、オレに付き合ってる人間がいたら、最初から一緒に先輩に守ってもらうと思わない?」
「そういやそうだな」
と何気なく返事をしてから、俺ははっとした。

「でもびっくりした。聖名が フリーだなんて…」

「うーん、大学に入って2年くらいから、起業の準備を始めたら付き合う暇なんてなくなって自然消滅…って、やっぱり縁がないってことだよね」
「そうだな…」

 俺が 次の話に困っているとテーブルの上の聖名の携帯が鳴った。
「あれ? 横浜のおじさんだ。もしもし…」
 聖名の育ての父の矢野氏なのだろう。

 聖名は動くのが辛いだろうと、俺はコーヒーカップと携帯を持って自分の部屋へいったん引き上げた。

 …部屋の中で 俺は身構えていた。

 聖名に用事を言われたらいつも以上に早く動きたかったからだ。

 それにしてもこんな時間に電話なんて 矢野会長 絡みの話としか思えない。

 電話は長かった。

〈ごめん。コーヒー入れなおすよ〉
と、聖名からLINEが来たので、俺は急いで部屋を出た。




★小説「傾国のラヴァーズ」その53・運命の相手が欲しい

2023-05-22 10:27:23 | 傾国のラヴァーズその51~60
 聖名は、

「そうか…運命の出会いか…」

と言うとグラノーラを口に運んで黙り込んだ。

 俺の口は勝手に質問していた

「聖名はどうなの?」

しまった、と思って俺は慌てて謝った。

聖名は前を向いて一瞬困っていたようだったが、

「いやセンパイが話してくれたから いいんだけど、そうだな 、そう言われれば、告白されたからなんとなく付き合っただけだったな…」

 そしてうつむくと、

「確かに運命の相手は 欲しいね」

そこで俺はまた何を思ったか

「えっ? 今いないの?」

と尋ねてしまった。

「いないよ 付き合ってる相手なんて。気がつかなかった?」