「傾国のラヴァーズ」

ボディーガードの翔真は訳有の美青年社長・聖名(せな)の警護をすることに…(閲覧者様の性別不問) 更新情報はX🐦にて

◆小説「傾国のラヴァーズ」その52・白紙の恋愛経験

2023-05-21 21:03:13 | 傾国のラヴァーズその51~60
「とにかく大丈夫だよ。俺はやり方知らないから」

 すると 聖名は目を丸くして、それから なぜか気を取り直したように、
「それじゃあオレが女の子だったら危なかったの?」

そう言いながらも 実は グラノーラの方に夢中 のようだ。

「いやそれも無理。その俺は女の子の扱いも経験ないから分からないし」

 わざわざ言うのも 変なものだが。

 しかし 聖名 はびっくりして、

「えっ? どういうこと?」

さっきも言ったろ 俺はそういうの 興味ないって

「うーん…」

聖名は 何だか困っていた

「それって先輩は全く恋愛に興味ないってこと? それとも 運命の出会いみたいなのがあったら付き合いたいってこと?」

と言ってから、 立ち入ったことを訊いてごめんと真剣に謝ってきた。

「いや いいよ。あまり考えたことなかったけど カップルとか見ても他人事なんだよな。こんな俺でも告白されたことは何回かあったけど、そういえば、そうだ。 この人じゃない気がするって思って断ったんだ」

 そして、男性に告白された時もそうだった、と口走ってしまった

 あ…男性の話は NG だ…と思ったが、 聖名は、

「俺も、男からも 告られるタイプだから気にしないで」

と言ってくれた。それでなんだか安心してしまって

「だから俺、後者 なんだよ。ただ一人の人を待ってるんだろうな」




■小説「傾国のラヴァーズ」その51・センパイならいいかも

2023-05-19 21:52:44 | 傾国のラヴァーズその51~60
 聖名が無表情なのが怖かった。
 でも俺はどうにか、

「あ、グラノーラな。今用意するよ」
 すると、聖名はわずかな笑みをたたえて、
「先輩も一緒に食べない? 朝飯まだでしょ?」

 聖名の気遣いに甘えて、 俺も相伴することになった。しかし、いつもと違い 俺の横に聖名は座ったので 表情は横からしか見えない。

 聖名はそのまま正面を向いたままで、

「先輩 ごめんね。とっさのことで 先輩ってわからなくて。わかってたらあんなに騒がなかったんだけど」

そして 重い口を開き始めた。

「…実は大学生の頃 襲われかけた経験があって」

予想が当たって俺は黙り込むしかなかった。

 友達の知り合いの家で飲んで、酔ったみんなは潰れた聖名のことを忘れて帰ってしまい、その家の主と二人きりになったところを襲われたという。

「まあ、抵抗しきれるかなとは思ったんだけど、友達が偶然忘れ物を取りに来て、助けてくれて…」
 
 すると聖名はうつむいて、

「だからセンパイがずっといてくれる ここ最近がすごくありがたくて…」

 そう言われて俺は本当に嬉しかったが…

「でも センパイにならオレ、襲われてもいいかなぁ…」
 目をそらしてではあったけど、冗談にしてくれてよかった。
「そうだな、俺が心霊に変身できるようになったらな」
「何だよそれ~」
 ようやく聖名は俺の目を見て笑ってくれた。