家に着いても、俺はス一ツのままでいた。
聖名、ではなく、鈴崎社長にしっかり話をしたいと思ったからだ。
聖名のスマホの電源は入らない。
結局、言っていた通り、二時間ほどして聖名は帰ってきた。
「ただいまー…」
玄関のドアが開き、聖名の声がした。
意外にも聖名はしらふだった。
「ごめんね。断れなくて…あれ? 着替えないの? 」
声は軽かったが、聖名は顔色が悪かった。
しかし、俺は立ち上がり、
「鈴崎社長、お話しがあります」
すると聖名は驚いたように、
「ちょっとごめんね。シャワー浴びてから聞かせて 」
何とも軽い言い方に、俺はますます怒りを覚えてしまった。
ふっ、と聖名のものではないような香りがした。
それにも俺はどうしてか怒りを覚え、固まった一瞬の隙に、聖名は着替えに自分の部屋に向かってしまい、更には俺の方を見ず、さっさと浴室に向かってしまった。