でも俺はどうにか、
「誰にも言いませんが、もし、僕ができることがあったらいつでも連絡してください。今みたいに話を聞いてほしい、っていうのでもかまいません」
夜中でも大丈夫ですから、とまで言うと、彼の横顔が少しほころんだように見えた。
大変なことに巻き込まれたら面倒だな、とは思ったが、夜中に彼の声を聞けたら嬉しいかもしれない、などとおかしなことが頭をよぎる。
「それじゃあよろしく頼みます」
と、彼はものすごく神妙な顔で俺に頭を下げると、駐車場へと降り立った。
「…社長、皮膚科に行った方がいいですよ。畑に行った時とか、外来種の虫でも連れてきたんじゃないですか?」
社長室で高橋専務に言われると、彼は、
「僕もそう思うんだよ」
と、さっきとは打って変わって落ち着いた様子で答えていた…