リビングでは薄いブルーのソファだけは、昼寝にでも使うのか、大きくて立派なものだった。
「ごめんね、殺風景な部屋で」
と彼は苦笑していた。
引っ越しの時、手伝ってくれた高橋専務や経理の鈴木常務にも指摘されて、三人で笑ってしまったそうだ。
「えっと、こっちが寝室…」
ベッドやクローゼットや本棚が机がある普通の部屋で、派手さはない。彼自身の芯に持つ上品さや穏やかさが何となく感じられるような部屋…だがいつまでも見ているようではばかられた…彼には別に何も言われなかったが。
もう一つの部屋にはダンベルやトレーニングチューブなんかが置いてあって、筋トレ用の部屋のようだった。
更にもう一つの部屋は、一番広いのだが、積み上げられた本の山が三つほどあるだけだった。
「こっちの部屋、本当は寝室兼書斎の予定だったんだけど、入れたい本棚が大きくて、地震が怖くてやめたんだ。今はあっちの寝室で読むのはタブレットで電子書籍だなぁ」
と言う訳で、彼にふさわしいすっきりとした住まいは、警報装置もあるし、不審者が入ってきても対処しやすいだろう。
「まあ、こんな感じです。でも、海原くんに守ってもらうことがあったら本当に大変だよね」
彼は身震いしながらアイランドキッチンに向かっていった。