そして、画面の中では、丑三つ時、廃村の中にあるという廃校に二人が入っていき…
ーリュウ君、何かねえ、すぐの教室の前に女の人が見えるの…
ー女の子?
ーううん、違うの。大人の女の人。
ー大人?
隣の聖名を見ると、いつしかクッションは捨てていて、怯えた表情でもう腰が引けている。
すると動画の中では、霊の声が…音とテロップで…
〈…あそんでいって…〉
「!!!」
聖名が俺の腕にしがみついてきた。
霊よりも、聖名がしがみついてきたことの方に俺はびっくりした。
ー音声アプリ使ってみようか…こんばんは。リュウといいます。今日はみなさんとお話し出来ないかと…
〈死ね〉〈帰れ〉〈やめてください〉
アプリの音声が暗い画面の中で赤い文字でも表示される。
「アプリ使ってるけど、機械の声だけど、霊の言葉なの! 怖い~」
聖名はしがみついたまま、俺の胸に顔を埋めてくる。
俺も画面にはびっくりで凝視してしまったが…
〈私は殺されました〉〈痛い〉〈憎い〉
「凄いけど、怖い~!」
と聖名の力はますます強くなる。
「怖いなら別の動画にしろよ~」
そう言いながらも、無意識のうちに俺の右腕は彼を包み込むようにまわり、手は彼をなだめるように動いていた。
「でも好きなんだもん」
と言ってから、今度は聖名がびっくりしたようにあわてて体を離した。
「ごめん」
俺も我に返ったが、言葉が出ない…
そしてまた画面を見てわーだのぎゃーだの…
おかげで20分くらいの内容が全く頭に入らなかった。