佐賀大学病院放射線科アンオフィシャルブログ ~さがの読影室から~

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b factorとADC値

2010年10月25日 21時42分54秒 | 抄読会
最近、遊んでばかりの記事だったので反省。
雑な文章で申し訳ないのですが、拡散強調画像についての論文アブストラクト訳です。

Quantitative Diffusion Weighted Imaging for Differentiation of Benign and Malignant Breast Lesions: The Influence of the Choice of b-values.
Nicky H.G.M. Peters et al.
JMRI 2010; 31: 1100-1105
<Abstract>
◎目的
 乳腺病変のDWIの診断およびADC値に与えるb値の選択および組み合わせの影響を調査する。
◎方法
 73名90病変を3T-MRIで撮像。b値は0,150,499,1500 s/mm2
 ADC値を計算するためのb値の組み合わせは5通りであり、それぞれ潅流や拡散の影響を受ける。良性病変、非浸潤性病変、浸潤癌のADC値の中央値を比較した。
◎結果
 88例を解析(良性37例、非浸潤性病変13例、浸潤癌38例)。いずれの方法でも、もっともADC値が高かったのが良性病変で、中間は非浸潤性病変、もっとも低いのが浸潤癌であった。もっとも低い2つのb値から計算されたADC値がもっとも高く、もっとも高い2つのb値から計算されたADC値がもっとも低かった。ただし、全ての方法でROC解析によって得られるAUCは同程度であった。
◎結論
 乳腺病変のADC値が異なったb値の選択により変化しうるということは、良悪性を鑑別する閾値を設定する場合に注意すべきであることを示す。しかし、異なったb値の選択によっても定量的なDWIの診断能には変わりがない。

 よく知らなかったのですが、古い文献Radiology 1988;168:497-505(古すぎるせいか、フリーではないのです…)を読み直してみると、拡散強調画像は初めの頃はIVIM (Intravoxel incoherent motion)imagingと呼ばれていて、ADC値を計測することで潅流を評価しようという手法だったようです。
 いつの間にか、細胞密度(や細胞性浮腫)を反映する方法として良悪性の鑑別や腫瘍の悪性度を評価するための方法として普及してきましたが、オーバーラップがあるにも関わらず、結構な正診率を有するカットオフ値が示されるなど、その定量性がちょっと一人歩きしているのかな…?という気もしていました。
 結果は理論通りなのだと思うのですが、改めてシーケンスの組み方や読影の仕方、そしてスタディの組み方を注意しなければいけないなと思いました。

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