久々?の抄読会です。当日に出席できるのかわからないので、先に載せておきます。
論文はぼちぼち読んでいたのですが、趣味のネタ作りのナナメ読みのメモで「あんまりだなぁ」というようなシロモノだったので…
今回もそれほど大したまとめではありませんが。例によって長いです。
診断未確定の右室肥大の原因としての、静脈洞欠損症および部分肺静脈還流異常に対する心臓MRIと肺動脈MRA
Cardiac MRI and Pulmonary MR Angiography of Sinus Venosus Defect and Partial Anomoluos Pulmonary Venous Connection in Cause of Right Undiagnosed Ventricular Enlargement
Kafka and Mohiaddin
AJR2009; 192:259-266
○目的
経胸壁超音波検査にて、原因のはっきりしない右心室拡張は、心臓評価の対象患者となる。心臓MRIは、冠静脈洞欠損や部分肺静脈還流異常(PAPVC)を検出することで、これらの患者管理に役立つ。今回の研究では、診断未確定の右室拡大患者でどのくらいの頻度で冠静脈洞欠損やPAPVCが存在するかを検討する。
○背景
心臓MRIは心内あるいは心外シャントをよく検出できるとされるが(6-11)、冠静脈洞欠損の検出能などに関する系統的な検討はされていない。
○方法
・評価対象
2002-2006年に心臓MRIが施行された症例のうち、心臓MRI前に診断が未確定であった37症例。診断は、以下のテキストによるクライテリアおよび手術所見に基づく。
・心臓MRI
装置 Sonata 1.5T, Avanto 1.5T Siemens
シーケンス:表2
心臓の形態(各3断面)はマルチスライスHASTEを使用
血液プールと組織のコントラストを明瞭にするためにSSFPを追加
静脈洞欠損の辺縁を明確に描出するために、Turbo Spin-echoを併用
心室容積、重量、収縮能は心電図同期シネMRI短軸像から計算
●シネPC(phase-contrast)velocity flow mapsを作成(文献12)
肺-体血流比Qp/Qsを計算 (図1,表1)
造影MRAを施行する症例もあり;吸気状態で息どめ。マグネビスト使用。上行大動脈に造影剤が到達したタイミングでスキャン開始。 造影剤の投与量、速度などは不明…
●冠静脈洞欠損を描出するための技術
冠静脈洞欠損の詳細(文献1,2)から断面を決定
SVCと左心房の境界に対して垂直な横断像と矢状断像を撮像(図2)
シネPC velocity flow mapsは、冠静脈洞欠損の部位とサイズを強調する(図3 オンラインではAVIシネ画像あり)。
●PAPVCを描出するための技術
横断像が最も適している(図4)肺静脈から右心房に流入する血流はシネPC velocity flow mapsで描出される。
○結果
・冠静脈洞欠損について
19例がMRIで冠静脈洞欠損と診断
Qp/Qsは1.5~4
18例(95%)でPAPVCを合併。30の肺静脈還流異常が同定された(1患者平均1.6本)全症例右側に発生。今回は左側PAPVCやscimitar veinはなかった。11例が手術でも欠損が確認された。全ての症例で、MRI前のTTEで欠損を同定できなかった。4例はTEEで欠損あり、あるいは疑いだったが確定のためおよび、PAPVC検索のためにMRIを施行された。
TTE,TEEで6例にASDが疑われたが、MRIで1例のみにASDが見られた。
・PAPVCについて
36例、60本の肺静脈還流異常あり。
右側27例(75%)、左側7例(19.4%)、両側2例(5.6%)
本数、部位の検討
36例中、20例で造影MRAを施行。描出は良好であるが、非造影MRAと診断能は変わらない。
○考察
・冠静脈洞欠損症について
TTEでは12%程度の診断能。文献15では、小児においてTTE,TEE、カテーテルを用いて1/16確定、7/16疑い、8/16無さそう、であったのがシネMRIで全例描出された。冠静脈洞欠損は長期的には血行動態に影響を及ぼすが、早期に発見し手術をすることで良好な予後が得られる。心臓CTで冠静脈洞欠損を検出することもできるが(17)、機能と血流の評価はできない。
・部分肺静脈還流異常について
TEE:43例の検討でPAPVCの診断に有用(5)
CT:29例の検討で、左側型が79%という結果→右の異常な上肺静脈が細く、CTで過小評価した?MDCTの報告では、良好な成績。
MRI:心外のシャントを良好に検出。冠静脈洞欠損の合併検出が可能。カテーテル検査を行わずにQp/Qsが分かる。FOVが広いために、TEEに比較して、検出率が高い。
造影MRAは病変を検出し、検査時間を短縮するのに有用であるが(9-11)、今回の検討では2Dのみで同等の診断が可能であった。
・Limitation
選択バイアスの問題
結論:心臓MRIを用いることで、右室拡張の原因疾患として冠静脈洞欠損とPAPVCの形態診断、質的診断を行うことができた。特発性肺高血圧症や、右室心筋症の診断を下す前に心臓MRI検査を行うことは有用である。
読んでいただいた方、お疲れ様でした。内容に誤解があればコメントいただけると幸いです。Phase Contrast法にも手を出してみようかなぁ…と思えた論文でした。
論文はぼちぼち読んでいたのですが、趣味のネタ作りのナナメ読みのメモで「あんまりだなぁ」というようなシロモノだったので…
今回もそれほど大したまとめではありませんが。例によって長いです。
診断未確定の右室肥大の原因としての、静脈洞欠損症および部分肺静脈還流異常に対する心臓MRIと肺動脈MRA
Cardiac MRI and Pulmonary MR Angiography of Sinus Venosus Defect and Partial Anomoluos Pulmonary Venous Connection in Cause of Right Undiagnosed Ventricular Enlargement
Kafka and Mohiaddin
AJR2009; 192:259-266
○目的
経胸壁超音波検査にて、原因のはっきりしない右心室拡張は、心臓評価の対象患者となる。心臓MRIは、冠静脈洞欠損や部分肺静脈還流異常(PAPVC)を検出することで、これらの患者管理に役立つ。今回の研究では、診断未確定の右室拡大患者でどのくらいの頻度で冠静脈洞欠損やPAPVCが存在するかを検討する。
○背景
心臓MRIは心内あるいは心外シャントをよく検出できるとされるが(6-11)、冠静脈洞欠損の検出能などに関する系統的な検討はされていない。
○方法
・評価対象
2002-2006年に心臓MRIが施行された症例のうち、心臓MRI前に診断が未確定であった37症例。診断は、以下のテキストによるクライテリアおよび手術所見に基づく。
・心臓MRI
装置 Sonata 1.5T, Avanto 1.5T Siemens
シーケンス:表2
心臓の形態(各3断面)はマルチスライスHASTEを使用
血液プールと組織のコントラストを明瞭にするためにSSFPを追加
静脈洞欠損の辺縁を明確に描出するために、Turbo Spin-echoを併用
心室容積、重量、収縮能は心電図同期シネMRI短軸像から計算
●シネPC(phase-contrast)velocity flow mapsを作成(文献12)
肺-体血流比Qp/Qsを計算 (図1,表1)
造影MRAを施行する症例もあり;吸気状態で息どめ。マグネビスト使用。上行大動脈に造影剤が到達したタイミングでスキャン開始。 造影剤の投与量、速度などは不明…
●冠静脈洞欠損を描出するための技術
冠静脈洞欠損の詳細(文献1,2)から断面を決定
SVCと左心房の境界に対して垂直な横断像と矢状断像を撮像(図2)
シネPC velocity flow mapsは、冠静脈洞欠損の部位とサイズを強調する(図3 オンラインではAVIシネ画像あり)。
●PAPVCを描出するための技術
横断像が最も適している(図4)肺静脈から右心房に流入する血流はシネPC velocity flow mapsで描出される。
○結果
・冠静脈洞欠損について
19例がMRIで冠静脈洞欠損と診断
Qp/Qsは1.5~4
18例(95%)でPAPVCを合併。30の肺静脈還流異常が同定された(1患者平均1.6本)全症例右側に発生。今回は左側PAPVCやscimitar veinはなかった。11例が手術でも欠損が確認された。全ての症例で、MRI前のTTEで欠損を同定できなかった。4例はTEEで欠損あり、あるいは疑いだったが確定のためおよび、PAPVC検索のためにMRIを施行された。
TTE,TEEで6例にASDが疑われたが、MRIで1例のみにASDが見られた。
・PAPVCについて
36例、60本の肺静脈還流異常あり。
右側27例(75%)、左側7例(19.4%)、両側2例(5.6%)
本数、部位の検討
36例中、20例で造影MRAを施行。描出は良好であるが、非造影MRAと診断能は変わらない。
○考察
・冠静脈洞欠損症について
TTEでは12%程度の診断能。文献15では、小児においてTTE,TEE、カテーテルを用いて1/16確定、7/16疑い、8/16無さそう、であったのがシネMRIで全例描出された。冠静脈洞欠損は長期的には血行動態に影響を及ぼすが、早期に発見し手術をすることで良好な予後が得られる。心臓CTで冠静脈洞欠損を検出することもできるが(17)、機能と血流の評価はできない。
・部分肺静脈還流異常について
TEE:43例の検討でPAPVCの診断に有用(5)
CT:29例の検討で、左側型が79%という結果→右の異常な上肺静脈が細く、CTで過小評価した?MDCTの報告では、良好な成績。
MRI:心外のシャントを良好に検出。冠静脈洞欠損の合併検出が可能。カテーテル検査を行わずにQp/Qsが分かる。FOVが広いために、TEEに比較して、検出率が高い。
造影MRAは病変を検出し、検査時間を短縮するのに有用であるが(9-11)、今回の検討では2Dのみで同等の診断が可能であった。
・Limitation
選択バイアスの問題
結論:心臓MRIを用いることで、右室拡張の原因疾患として冠静脈洞欠損とPAPVCの形態診断、質的診断を行うことができた。特発性肺高血圧症や、右室心筋症の診断を下す前に心臓MRI検査を行うことは有用である。
読んでいただいた方、お疲れ様でした。内容に誤解があればコメントいただけると幸いです。Phase Contrast法にも手を出してみようかなぁ…と思えた論文でした。
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