佐賀大学病院放射線科アンオフィシャルブログ ~さがの読影室から~

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2010.03月抄読会 その2

2010年03月26日 18時23分09秒 | 抄読会
 とりあえず、もう1本の論文です。
 4月からはフィリップスユーザーになるので…こんなアプリケーションがあるのかはわかりませんが。

 最近、抄読会のまとめというよりは、単なる訳になってしまっています。どんどん長くなるばかり。でも、読んでいるとどれも大事に思えてきてしまって…もっと慣れたらエッセンスを抽出できるようになると思うのですが。

 他でも役に立つかな?と思ったのは、パラレルイメージングでのSNRの計り方です。詳しい方法をご存じに方いらっしゃいましたら、こっそりメールをお願いします。

Radiology2008:249:493-500
Sven Plein et al.
k-Space and Time Sensitivity Encoding-accelerated Myocardial Perfusion MR Imaging at 3.0 T: Comparison with 1.5T
○背景
心臓MRIのアプリケーションにおいて、心筋パフュージョンのようにSNRにより制限されるような方法は、高磁場の利点が得られると考えられる[1-9]。過去の報告でも、3Tと1.5Tを比較して、SNRや増強効果、診断能が改善したとされている[1,2,5]。
ファーストパス灌流MRIの挑戦は、モーションアーチファクトを減らすためにデータ取得時間を短くすること、カバーする心臓の範囲を広げることにある。SENSEのような、特別なアンダーサンプリング技術はデータ取得の速度を上げるが、SNRを犠牲にする。この現象は2D撮像法においては2倍のアクセラレーションで著明に増加するとされる[10,11]。
k-t SENSEのように空間と時間の相関を利用したアンダーサンプリング技術は、更にデータ取得時間を短縮することが出来うる[12-15]。k-t SENSEは、対象物からのトレーニングデータにより再構成時の時間的なバンド幅を適正化することによりSENSEと比べ、SNRがよいとされている(?)。
高磁場はある程度SNRの損失を補うことが出来るので、空間的、空間時間的なアンダーサンプリング技術を3T MRIの灌流MRIに用いることは魅力的である。
本研究では、3Tでのk-t SENSEを用いた高時間空間分解能心筋灌流MRIおよび通常分解能MRIを1.5T装置での前者撮像法を比較する。
○方法
・被験者
2006年1月~12月にプロスペクティブに集められた51例
14例:健常ボランティア
33例:患者のうち、検査が完遂できたもの
●パルスシーケンス
k-t SENSEはsaturation-recovery gradient echo pulse sequenceと組み合わせて使用。パラメータは[14]に準ずる。傾斜磁場の差および、取得ウィンドウを一定にするために1.5Tと3Tではin-plane空間分解能が異なるように設定されている(1.5×1.5 vs
1.3×1.3mm)。
通常分解能(2.5×2.5mm)の灌流MRも同様に撮られているが、2倍の(twofold)SENSE accelerationを用いている。
●灌流MRI
装置:1.5T、3Tともにフィリップス社製Achievaでコイルはそれぞれ5エレメント、6エレメントを使用。
撮像断面は、左室短軸を4スライス。
造影剤はガドビストを0.1mmol/kg、パワーインジェクターで5ml/sec、20ml生理食塩水で後押し。
・ボランティア撮像
安静時の画像を1.5と3T別の日に撮像。また3Tでの安静時灌流twofold SENSEを撮像。
SNRを計測するために、ノイズマップを作成(方法よくわからない…0フリップ角での無信号画像?)。
SNRは平均の絶対信号強度と、心筋においたROIでのそのチャンネルのノイズSDの比?
更に、ボクセイルサイズも合わせて機種間で比較した。
・患者群撮像
表1
それぞれの装置でアデノシン負荷灌流MRIが撮像された(順不同)。それぞれの撮像は冠動脈造影から14日以内に行われた。
・データ解析
1名の放射線科医(7年の潅流MRIの経験)が臨床情報を伏せて読影。
画質評価は、(0 = nondiagnostic, 1 = poor, 2 = moderate, 3 = good, 4 = excellent)で評価。
アーチファクト:k-t reconstructionによるもの、呼吸運動、心電図ゲート、endocardiac dark rim artifact(?)の存在→(0 = none, 1 = minor, 2 = moderate, 3 = severe, 4 = images nondiagnostic)で評価。endocardiac dark rim artifactに関しては、心筋壁に対する幅を計測。
ボランティアデータから、MASSを使って心筋の信号強度曲線を作成。
●ROIの置き方
CER=(P - SIb)/SIb
CER:増強効果の比
P:ピーク SIb:ベースの信号強度
信号強度の測定は、収縮期の心室中部レベルで行った。

患者データでは、2名の放射線科医が読影。
AHAの16セグメントモデルを使用。欠損は(0 = normal, 1 = probably normal, 2 = probably abnormal, 3 = abnormal)で評価。異常の判定は、離れた部位から遅延して増強されること、壁内での信号強度勾配があること。潅流スコアは、全セグメントの合計で表す(0-48点)。
・冠動脈造影
MRIから14日以内にスタンダードな冠動脈造影を施行。
・統計解析
連続データは平均±SDで表示。2群間の比較は、two-tailed paired t testを使用。
不連続データはパーセンテージで表示。
カテゴリーデータはカイ2乗検定で比較し、P<.05を使用。
SNRは統計学的に解析をしていない(4例のみのため)
正診率:2mm以上の径の血管で50%以上の狭窄というクライテリアを用いてROC解析を行った(Analyze-it)。
0-48で示される潅流スコアを解析の基準として用いた。
○結果
・ボランティアでの1.5Tと3Tの比較
3Tのk-t SENSEでは、画質が良いが(表2、図1)、画質及びアーチファクトスコアは1.5Tと有意差はなかった(表2、図2)。
Endocardiac dark rim artifactは小さかった(高分解能データの差に一致)。
SNR:3T:1.5T k-t SENSE 11.6±1.5:5.6±0.6(ピーク値での比較)
CER:3Tで有意に低かった
・3Tでの5倍k-tと2倍SENSEの比較
 5倍ではより高画質でより薄いendocardial rim artifact(表2、図2)。CERはほぼ同程度であった。
・患者群での検討
 各装置で撮像時に心拍数、血圧などの差はなかった。
・画質評価
画質スコア:3:1.5T=3.7:3.3 (P=0.4)図4
アーチファクトスコア:3:1.5T=0.7:0.8 (P=0.56)
 最も多いアーチファクトは呼吸運動によるもの
 Endocardiac dark rim artifactは双方で半数にあり、拡張期のデータのみで見られた。
・正診率
ROC解析:3:1.5T=0.89:0.80 (P=0.21)図5-7
○考察
3Tによるk-t SENSEは十分使用可能な検査法である。1.5Tと比較してSNRは向上している(少数なので統計学的に検討できていない)。3TではCERが低かった。2倍SENSEよりは空間分解能、画質ともに優れていた。
 1.5Tでのk-t SENSEによる潅流MRIの有用性は示されている[14]。今回の検討では、3Tでも高速で平面内の高空間分解能を取得できることが示された。Gebkerら[15]は、派生技術であるk-t BLASTを採用しているが、空間分解能は2.6×2.6mmである。k-t accelerationの自由度は本法の特徴である。
 3TにおけるSNRの向上(通常のGREシーケンス)は過去の2つの文献で示されている[1,5]。過去の報告と異なり、今回はノイズをゼロフリップ角によるノイズマップを用いている。理由としてはパラレルイメージングでは、場所に応じたノイズの増幅によりコンベンショナルなノイズの推定ができないためである。Difference methodでは心拍あるいは呼吸運動により一連のフレームでSNRが信頼できないことが示された。
 3TでCERが低かった理由としては、磁場強度が上がりrelaxation rateが下がるためである[16]。また、静磁場の不均一性による影響もある[17]。Adiadaptic or multipulse saturationが3Tでは必要と思われる。過去の報告では、3TでCERが増加したという、対立する結果もある[1,5]が、造影剤の差が関係しているかもしれない。
 ROC解析による、正診率は1.5と3Tで差がなかった。Chengら[1]は、3Tで優れていたと報告している。
 1.5Tでの報告と同様に、2倍SENSEと比較してk-t SENSEは空間時間分解に優れ、dark rim artifactを軽減することができた。厚みは1.6mmで、診断の妨げにはならなかった。良好な画質が得られ、過去の視覚的あるいは定量的な潅流MRIの報告[6-9]より有望であった。
 近年、定状状態パルスシーケンスを用いた潅流MRIによりGRE法よりもSNRを得られるという報告もされている。3Tではbalancedシーケンスはアーチファクトが起こりがちであり、現在は非balancedシーケンスが用いられている。K-t SENSEとBalanced SSFPの組み合わせが出てきており、将来評価されるべきである。
Limitation
 傾斜勾配磁場の差により、それぞれの静磁場強度で空間分解能が異なっている。ただし、SNRの計算では補正されており、ほとんどその他の計測でも問題はないと思われる。

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