とはずがたり

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フランスにおけるCOVID-19のまとめ

2020-05-17 19:49:03 | 新型コロナウイルス(疫学他)
COVID-19の津波はヨーロッパではひとまずの山場を越えて今後の第2波、第3波に向けてデータの検証が行われています。フランスにおけるCOVID-19のこれまでのまとめのような論文が発表されました。5月7日時点で95,210人が入院し、16,386人が亡くなりました。入院患者の平均年齢は68歳で、死亡した方の平均は79歳でした。70歳超の入院が50%で死亡の81.6%がこの年代から発生しています。また入院患者の56.2%、死亡の60.3%が男性です。
軽症例を含めた感染者の実数はわかりませんが、全例が検査されたDiamond Princess号のデータをフランスの病院における積極的サーベイランスと組み合わせてモデルを作成して感染者数などを算出した結果、
①感染者の3.6% (95% CI; 2.1-5.6)が入院になりました。最も低いのは20歳未満の女性で0.2% (95% CI; 0.1-0.2)、最も高いのは80歳超の男性で45.9% (95% CI; 27.2-70.9)でした。
②入院患者の19.0% (95% CI; 18.7-19.4)がICUに入室し、全体で入院患者の18.1% (95% CI; 17.8-18.4)が死亡しました。感染者全体の中での死亡率は0.7% (95% CI; 0.4-1.0)と算出されました。20歳未満では0.001%であるのに対して80歳超では10.1% (95% CI; 6.0-15.6)であり、これは中国からの報告(0.5%, 0.7%)とほぼ同じでした。
③すべての年代で男性は入院リスク (RR 1.25, 95% CI 1.22-1.29)、ICUに入るリスク(RR 1.61, 95% CI; 1.56-1.67)、死亡リスク(RR 1.47, 95% CI; 1.42-1.53)が高いことがわかりました。
④死亡例には入院してすぐに亡くなる方と(平均0.67日、全体の15%)、しばらく入院後に亡くなる方(平均13.2日、全体の85%)の2つのパターンがあり、前者の割合はすべての年代でほぼ一定でした。この理由としては医療機関へのアクセスや併存症などが関係していると考えられました。
⑤ロックダウン前のR0は2.90 (95% CI; 2.80-2.99)だったのが、ロックダウン後には0.67 (95% CI; 0.65-0.68)まで低下しました。
⑥彼らのモデルによると5月11日の時点でフランス人口全体の4.4% (2.8-7.2)が感染したと考えられました。これは献血を用いた抗体検査の3.0%とほぼ一致する結果です。R0を3.0と考えると集団免疫を獲得するには65%のヒトが感染する必要があるので、それには遠く及ばない数字で、今後の第2波、第3波に対する警戒が必要としています。
この数字にはケアハウスのようなところで亡くなった方は含まれていないので、死亡などが過小評価になっている可能性があります。
この研究からロックダウンによる感染予防効果が高かったことが明らかになりました。また彼らのモデルは今後のサーベイランスデータを解釈するうえ、また日本の出口戦略を考える上でも有用と考えられます。


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