山梨大学からの報告です。骨肉腫は原発性骨軟部悪性腫瘍の中では最多のものですが、その予後を決定するのは肺転移の有無です。著者らは骨肉腫肺転移における血小板の役割に注目しました。 まずヒト骨肉腫株細胞を用いて、in vitroで骨肉腫細胞が血小板を活性化させる作用を有することを明らかにしました。転移性の腫瘍株の移植実験により、抗GPIbα抗体によって血小板を90%のぞいたマウスでは肺における腫瘍細胞のコロニー形成が劇的に減少しており、血小板の産生する何らかの分泌因子が、骨肉腫細胞の肺でのコロニー形成に関与していると考えられました。C-type lectin-like receptor-2 (CLEC-2)は血小板に発現し、血小板の恒常性や血栓形成に関与するとともに、癌の転移にも関係することが知られていますが、著者らは以前にCLEC-2がpodoplanin(Aggrus)のリガンドであることを報告しています(Suzuki-Inoue K et al., J Biol Chem. 2007;282:25993–6001)。今回の研究において、著者らは肺転移巣では原発巣と比較して骨肉腫細胞におけるpodoplanin発現が亢進しており、cell-cell interactionで血小板のCLEC-2と結合することで血小板を活性化することが示されました。また抗CLEC-2抗体の投与は、骨肉腫細胞の肺転移を抑制することも明らかになりました。 実際の臨床標本においても、原発巣と比較して転移巣の細胞ではpodoplaninが増加していることも確認されました。これらの結果は、骨肉腫肺転移において血小板が重要な役割を果たすこと、また分子標的療法としてCLEC-2阻害療法の可能性を示すものとして期待されます。
Ichikawa J et al., "Role of Platelet C-Type Lectin-Like Receptor 2 in Promoting Lung Metastasis in Osteosarcoma" J Bone Miner Res. 2020 Jun 1. doi: 10.1002/jbmr.4045.
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