この論文で著者らは、SARS-CoV-2を感染させたVero E6細胞(アフリカグリーン猿腎由来細胞)においてウイルスおよび細胞由来のリン酸化タンパクを網羅的に解析し、タンパク―タンパク相互作用やウイルスによって活性化されている(であろう)キナーゼを同定しました。その結果casein kinase II (CK2)およびp38 MAP kinaseの活性化がサイトカイン産生および細胞周期阻害に関与していること、ウイルス感染によってCK2を含むfilopodia形成が促進され、ウイルス粒子のbuddingに関与している可能性が示されました。またウイルスによって活性化される様々なキナーゼ阻害薬がCOVID-19治療薬として有望であるとしています。
Phosphoprotein mappingを様々な時間軸で細かく行い(0, 2, 4, 8, 12, 24時間という6 points)、タンパク―タンパク相互作用を解明したり、治療標的となるキナーゼを同定したりというのは大変な作業だったとは思うのですが、コントロールに用いた"mock infection"というのは一体何なのか?これが他のコロナウイルスとは異なるSARS-CoV-2の特徴なのか?サルではなく人の細胞ではどうなのか?腎ではなく肺の細胞ではどうなのか?など、多くの疑問符を残す研究です。もちろん「文句を言うならお前がやってみろ」と言われてもできませんけど・・
ウイルス感染によってAPOH, CD9, TSPAN14, AHSG, SERPINA1, A2Mなどの血小板制御、血栓、凝固抑制に関与するタンパク発現(リン酸化ではなく)が低下するというデータはCOVID-19による血栓形成と関連して興味深かったです。
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