とはずがたり

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整形外科手術再開をめぐる話題

2020-05-17 09:08:32 | 整形外科・手術
COVID-19の蔓延は病院の様々な機能に影響を与えていますが、手術に与えた影響も並々ならないものがあります。整形外科の予定手術は「不要」ではないにしても「不急」のものがほとんどであるため、当院でも整形外科手術は半分近くに絞るという状況が続いていました。もちろんいつまでもそのような状態を続けるわけにはいかないので、徐々にペースを戻していこうとしていますが、どのような手術をいつからどの程度、という判断には難しいものがあります。
 欧米ではロックダウン中は完全に予定手術を中止していた病院も少なくなく、手術再開の時期・方法は大きな課題になっています。University College London HospitalsのSam Oussedikらによるこの論文は、予定手術再開にあたっての条件や注意点を論じていますが、論文中で例として取り上げられている「武漢の病院にで術後早期にCOVID-19を発症した患者では死亡率が20%(整形外科手術以外も含まれます)」とか、「イタリアのGaleazzi Instituteで昨年は0.05%だった整形外科予定手術後の死亡率が今年は0.67%になった」というような事実には驚いてしまいます。手術再開にあたっては、患者のスクリーニング法、手術チームのリスク回避、麻酔の問題、患者入れ替え時間の倍増、病床の問題(多くの病床がCOVID-19専用になっている)、輸血の供給不足、画像検査にかかる時間増、そして何よりどのようにして患者に安心してもらうか、などが課題として挙げられており、問題は山積みで、大変厳しい状況が伝わってきます。今後の第2波、第3波を考えると日本でも十分な対策を練っておくべき事項だろうと思います。 
Bone Joint J. 2020 May 15:1-4. doi: 10.1302/0301-620X.102B7.BJJ-2020-0808.



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