各国で医療スタッフの新型コロナウイルス感染が問題になっていますが、英国のThe Newcastle Upon Tyne Hospitals NHS Foundation Trustでは3月10日から医療スタッフを対象にしたSARS-CoV-2感染スクリーニングを行いました。1st screeningとしてはスタッフに「持続する咳嗽あるいは熱発」などの症状があるかをemailで質問し、「あり」の人については24時間以内に熟練した看護師によるPCR検査が行われ、結果は24時間以内にemailで通知され、陽性の人は自宅待機となります。結果は、1654名のスタッフのうち症状が持続したため再検査した人も含めて14%が陽性でした。検査は3月10日から31日まで実施されましたが、10-11日に検査したスタッフで5%、3月30日ー31日に検査したスタッフでは20%と明らかな増加が見られました(ちなみに英国政府がsocial distancing戦略を実行したのは3月20日以降で、学校が休学になったのが3月20日、レストランやオフィスが閉鎖になったのが3月23日です)。医療スタッフを①患者に直接接する(看護師、医師など)、②直接患者には接しないがリスクは比較的高い(検査技師や清掃員など)、③臨床業務ではない(事務、秘書など)に分けて検討しましたが、それぞれの感染率は15%, 16%, 18%と差がありませんでした。つまり院内感染ではなく市中感染が広がっていると考えられました。感染したスタッフもウイルス陰性になった後は職場に復帰しているとのことです。ここまで徹底した感染管理ができるところは中々ないとは思いますが、「さすが英国!」という感じの内容の濃い研究だと感じました。
Hunter et al., First experience of COVID-19 screening of health-care workers in England. Lancet DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30970-3